上 下
114 / 159
第3章 王都騒乱編

第31話 竜馬(りゅうま)

しおりを挟む
 なんでレミが水戸のご老公を知ってるんだろう? いや、何となくは分かる。かなりの確率で転生者なんだろう。

 だけど、ここはツッコむべきか・・・。

「聖女様、私は先ほど神官長から紹介されましたジョージです。
 一つ聞いていいですか?」

 俺が悩んでいたら、ジョージがレミに質問を始めた。

「リョーマの友達のジョージさんだね。どうしたの?」

「間違っていたら本当にすみません。
 聖女様、もしかして転生者ですか?」

 おっと、俺が悩んでたのは何だったのか。ジョージ君ストレート。

「えっ・・・。あっ、水戸のご老公って言っちゃった!」

 レミは無意識だったらしい。そして転生者については否定もなし。

「と言うか、ジョージさんもそれを知っているって事は転生者? と言うか、鈴木さんと太郎さんは間違いなく転移者だよね・・・」

 あー。そうだよね。鈴木さんと太郎さんは見るからに日本人だからね。名前も見た目も。うん。もう全部説明しよう。

「えっと、僕が説明していいですか?」

「ああ、そうじゃな。リョーマ頼めるかの?」

 俺が説明を申し出ると、ゼムスさんが代表してそう答えてくれた。

「それでは。レミ、驚かないで欲しいのですが、ここに居るゼムスさん、リーナさん、ジョージ、それと僕は転生者です。鈴木さんと太郎さんはお察しの通り転移者です」

「えっ! リョーマも!? と言うか、そちら側全員!?」

 さすがにみんな転移者や転生者だとは思っていなかったらしく、かなり驚いた様子だ。シーラ様とソラも驚いている。

「それで、レミも転生者なんですよね?」

「・・・うん、そうだよ。私は先月記憶が戻ったばかりだけどね。
 それとさっきは国の危機を救う為に王都に来たって言ったけど、本当は嘘なの」

 本当は嘘とは中々に哲学だね。ポチの口癖なのだ。

「実は個人的な【神託】を頂いてね。前世の恩人が王都に居るって。だから探しに来たの」

 へぇ。転生者や転移者は結構珍しいらしいから、恩人はもしかしたらこの中に居るのかもね。年齢から考えたらゼムスさんか鈴木さんかな?

「そうだったんですね。
 えっと、とりあえず先にこちらの状況を説明しましょうか?」

「うん。お願い」

 その答えを聞き、俺は異邦人について自称神様の話も含めて説明する。


「なるほど。ここに居ない、勇者として召喚された2人を合わせて7人を異邦人って呼んでるんだね。
 そしてリョーマはそれとは関係ない転生者だと」

「はい、その通りです。僕は7年ほど前に転生しました。事故で死んでしまって、こちらの世界に転生する事になったんです」

「7年前・・・。事故・・・。リョーマ・・・。・・・竜馬さん?」

 え? 今レミはリョーマじゃなくて、竜馬りゅうまって言った?

「え? 聖女様なんでリョーマの前世の名前を?」

 そこでジョージがまたツッコむ。そう言えば、ジョージには女神様が俺の名前を間違えたって話して大笑いされたんだった。

「えっ! リョーマ、本当に竜馬さんなの? え? え?」

 何かレミが混乱している。

「レミ、どうしたんですか? 何で僕の前世の名前を知ってたんですか?」

「本当に竜馬さん? 女の子を助けてトラックにはねられてしんじゃった竜馬さん? ポチちゃんの飼い主の竜馬さん?」

 ポチまで知ってるなんて・・・。まさか?

「そ、その通りですが・・・。なぜそこまで知ってるんですか?」

 何となく想定はしているものの、一応聞いてみる。

「私がその女の子だからだよ! 良かった! こんなに早く会えるなんて思っても無かったよ!!」

 レミはそう言うと、俺に体当たりしてくる。いや、体当たりじゃない。思いっきり抱き着いて来た。やっぱり、俺が助けた女の子だった。

「良かった! 良かった! ずっと、ずっと心残りだったの。
 事故で意識がないまま亡くなってしまった竜馬さんと、事故でそのまま死んでしまったポチちゃんにお礼が言えなくて。もちろん、墓前では何回もお礼を言ったよ。でもきっとそれは届いていない気がしてたの」

 あ、うん。まあ、死んですぐ転生したから、お墓の前でお礼を言われても届かないよね。

 いやいや、問題はそこじゃない。

「で、でも。それだとおかしくないですか? 記憶が戻ったのは最近でも、レミがこの世界に転生したのは僕より前ですよね?」

 どうみてもレミの方が歳上だ。時系列が合わない。

「それはね。竜馬さんとポチちゃんにお礼を言う為に、女神様に時間を戻してもらったからなの。私は貴方に助けられてから30歳くらいまで生きたみたいなんだけど、過労で死んじゃって・・・。
 あ、生きたみたいってのは前世の記憶が全部戻った訳じゃ無いからだよ。時間を戻した代償らしく、竜馬さんの事は覚えてるけど、他は結構曖昧なんだ」

 怒涛の勢いで語られるレミの事情。でも、どうしてお礼を言うのに時間を戻す必要があったんだろう?

「あー、何で時間を戻してもらったのか? ・・・なんでだっけ? その辺りも記憶が曖昧なんだよね」

 覚えてないのか。残念だ。

「とりあえずレミ。そろそろ離してもらっていいですか?」

 ずっとレミに抱き着かれたままだったけど、さすがにそろそろ苦しいので離してもらう。

「あっ、ごめんね。でも本当に会えて良かった。これできちんとお礼が言えるよ。
 竜馬さん。あの時は命を懸けて助けてくれて、本当にありがとう。お陰で、私は30歳まで生きる事ができました。折角助けてもらったのに30歳で死んじゃってなんか申し訳ないけどね」

「いえ、僕も助けた女の子がこんなところまでお礼に来てくれるなんて、思ってもいませんでした。嬉しいです。
 ポチも喜ぶと思いますよ」

「そうだ! ポチちゃんは? 一緒じゃないの?」

 そうそう、女の子を助けたのは俺と言うか、ポチだからね。ポチにもちゃんとお礼を言いたいんだろう。

「ポチは・・・封印されたダンジョンの奥です。僕もまだこの世界に来てからポチに会えていないんです」

「封印されたダンジョンって、さっきの話にあった異邦人が7人そろったら解放できるっていう、あのダンジョン?」

「ええ、そうよ。だから私たちは、残りの2人。勇者の2人を確保しないといけないの。
 さっきの話に戻すけど、姉たちの悪行を裁き、勇者を確保する。その為には聖女であるレミの力が必要よ」

「なるほど、そう言う事なら、尚更だね。私が神殿を代表してミーナ王女の悪事を暴く。任せて頂戴!」

 レミのやる気が更にアップしたみたいだ。

「まさか聖女殿まで転生者だったとは驚きじゃったが、やる事は変わらんな。続きを詰めようかの」

 そして、その日は遅くまで作戦会議が続くのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

魔力∞を魔力0と勘違いされて追放されました

紗南
ファンタジー
異世界に神の加護をもらって転生した。5歳で前世の記憶を取り戻して洗礼をしたら魔力が∞と記載されてた。異世界にはない記号のためか魔力0と判断され公爵家を追放される。 国2つ跨いだところで冒険者登録して成り上がっていくお話です 更新は1週間に1度くらいのペースになります。 何度か確認はしてますが誤字脱字があるかと思います。 自己満足作品ですので技量は全くありません。その辺り覚悟してお読みくださいm(*_ _)m

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結

お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)

いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。 --------- 掲載は不定期になります。 追記 「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。 お知らせ カクヨム様でも掲載中です。

【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断

Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。 23歳の公爵家当主ジークヴァルト。 年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。 ただの女友達だと彼は言う。 だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。 彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。 また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。 エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。 覆す事は出来ない。 溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。 そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。 二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。 これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。 エルネスティーネは限界だった。 一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。 初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。 だから愛する男の前で死を選ぶ。 永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。 矛盾した想いを抱え彼女は今――――。 長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。 センシティブな所へ触れるかもしれません。 これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

処理中です...