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第3章 王都騒乱編

第6話 王都へ

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「うわぁぁぁぁぁぁー! さっきより早いいいぃぃぃ! 落ちるぅぅぅぅ!」

 俺は今、ジョージの絶叫と共に空を飛んでいる。確かに急いでるけど、ちょっと叫び過ぎじゃないかな?

 向かう先はもちろん王都。リーナさんから【念話】が届いたからだ。詳しくは聞けていないが、事件発生と言われたら戻らない訳にはいかない。

 1人で急いで王都に向かおうと思ったら、異邦人の所に行くと聞いたジョージが俺も連れて行って欲しいと言ってきたので、この状況である。

「ジョージ大丈夫だよ。落とす事はないから安心して! 多分(ボソッ)」

「今、多分って言ったぁぁぁ! 凄く小さな声で多分って言ったぁぁぁぁ!」

 あ、聞こえてたのか。凄く小さな声で言ったのに。

「分かった。分かった。絶対落とさないから安心して!」

「ほ、ホントか? 絶対だぞ! 絶対落とすなよ!?」

「え? それは芸人さんの振りみたいな?」

 懐かしいな。前世ではお笑い番組をいつも楽しくみていた。

「いやいやいやいや、振りじゃない! 振りじゃないから!」


 そんな感じで1時間前後飛ぶと、眼下に王都の街並みが一望できるところまで来た。

「リョーマ、俺たち今は透明なんだよな?」

「うん。人間が飛んでたら目立つでしょ? 某王女様みたいに二つ名を付けられてもたまらないし」

「な、なるほど。飛行姫とかイヤだしな。
 しかし透明で空を飛べるとか、お前ステルス戦闘機だな。
 空から魔法で空爆とかしたら、1人で王都を破壊できるんじゃないか?」

 え? 飛行姫ってカッコいいのに、ジョージは何を言ってるんだろう。

 けど、そう言われると確かに人間ステルス爆撃機とか、できなくはなさそうな気がする。

「いや、やらないよ」

「できない、じゃなくて、やらないなんだな・・・。リョーマ、恐ろしい子っ」

「なーんて、王城は結界が張られてるから無理だけどね。多分(ボソッ)」

 一般的に知られていないけど、王城には結界が張られている。俺は探知系スキルのレベルが高いので、たまたまその事に気付いたんだけどね。

 外部からの攻撃魔法を弾くタイプのもので。物理的な攻撃を防ぐものではなさそうだ。

「え? 王城って結界が張られてるのか? そしてまた多分って言ったか? もしかしたら結界も壊せるのか!?」

「まあ、そこはやってみないと分からないけど、やる訳にはいかないって事で。
 さて、このまま目的地の屋敷まで行っちゃうね。門で並んでたら入れるのいつになるか分からないし」

 ちなみに、ダイダの街も門を通らずに飛んで出て来た。まあ、事件発生だし仕方ないよね!

「そう言えば、ちゃんと聞いてなかったけどどこに向かってるんだ?」

 あれ、説明してなかったっけな?

「ゼムス神官長の屋敷だよ」

 リーナさんの屋敷に集まる訳にもいかないので、何かあった時はゼムスさんの屋敷に集まる事にしている。

「え? 神官長? 王都の神殿で一番偉い人?」

「そう、ゼムス神官長も異邦人なんだ」

 正確には神官長は巫女と同列に扱われる。当然、王都の神殿にも巫女様は居るのでどちらが偉いと言うのはない。

「そ、そうなのか・・・。今日は色々あり過ぎて頭がパンクしそうだぜ」

 そんな話をしながら、透明化を解きつつゼムスさんの屋敷の庭に着地する。

 高めの塀に囲まれているので、外から見られる事もない。

 着くとすぐに、俺の気配を察知したミルクが飛び出してきた。

「リョーマ! 待っていたのっ!」

「ミルク、大丈夫かい? 何か事件発生だって?」

「えっ! 妖精?」

 ミルクをみて咄嗟にジョージは身構える。そうだよね。一応妖精は魔物のカテゴリだった。

「大丈夫だよ。この子がさっきジョージの部屋で話をしていたダンジョンから出て来た従魔だよ」

「ミルクはミルクなの。よろしくなの。
 貴方の事は知ってるの。リョーマの友達のジョージなの」

 ミルクは自己紹介をして、かわいくお辞儀をする。

「あ、ああ。俺はジョージ。よろしく? けど、なんで俺の名前を知ってるんだ?」

「実はミルクは学園の寮に住んでるんだよ。たまに授業とかも覗いてるらしい。
 さっき使ってた透明化の魔法もミルクに教えて貰ったんだ」

「マジか・・・全く気付かなかったぜ」

 ジョージに気付かれるようなら、戦闘系の教師とかにも気付かれちゃうかもだからね。その辺りは抜かりないよ。

 屋敷の方を見ると、丁度リーナさんが、その後ろからゼムスさんが出てきた。

「もう、ミルク。さっさと出て行かないでっ!
 お疲れリョーマ。早かったのね」

「いえ、お待たせしました。事件と聞いて飛ばして来ました」

「それと、さっき【念話】で少し聞いたけど、そのジョージ君ね。・・・4人目」

「え、えっと、こうして挨拶をさせて頂くのは初めてになります。
 リョーマの友人をやっています、ジョージと申します! コードネームは暴食です」

 リーナさんを見たジョージが、普段見ないくらい真面目に挨拶を始めた。普段が普段だけに違和感半端ない。

「私は貴方がリョーマと一緒にいるところをよく見てたから、初めてって感じではないんだけどね。
 後、同じ異邦人なんだからそんなに畏まらなくていいわよ。リョーマと話をするような感じで話してくれて構わないわ」

「いやいや、それは無理です。年上ですし、せめてリョーマと同じくらいの丁寧語で話させて下さい」

「まあそれでいいわ。よろしくね。
 じゃあ、ジョージ君の話は後にして、さっそく本題に入りましょう」

「待て待て。こんなところで立ち話もなんじゃろう? 屋敷に入るといい」

 早速話を始めようとしたリーナさんをゼムスさんが止める。

 たまにみんなで集まって内密の話をする為に、ゼムスさんは屋敷の部屋を1つ提供してくれているので、今回もとりあえずその部屋に向かう。

「ゼムスさん、お邪魔します」

 そう言いながら屋敷に入ると、執事服に身を包んだ鈴木さんが出迎えてくれた。

「いらっしゃいリョーマ君。待ってたよ」

 実はこの1年、鈴木さんはゼムスさんの屋敷で執事として働いている。ゼムスさんは客人として持て成すと言っていたけど、鈴木さんがそれだと悪いからと働かせてもらう事にしたそうだ。

 いつもの部屋に入ると、手慣れた手つきで鈴木さんがお茶を入れてくれた後、同じテーブルに座る。

「さて、どんな事件が発生したのかな? ミルク教えてくれる?」

「もちろんなの! 多分みんなにも関係のある話なの!
 それじゃ話すの!」
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