うちのポチ知りませんか? 〜異世界転生した愛犬を探して〜

双華

文字の大きさ
上 下
78 / 159
第3章 王都騒乱編

第1話 商業都市ダイダ

しおりを挟む
第3章始まります!
王都騒乱編とかいいつつ、しばらくはのんびりパートかも知れませんが、どうかお付き合い下さい。
(急に思いつきでストーリーが変わったりするので断言できません!)
───────────────────────────

 俺は今、王都から西に馬車で1日ほどの距離にある街に居る。学園での生活も1年が終わり冬休みに入ったので、実家に帰る前に友達ジョージの実家に寄る事になったんだ。

 この街は貿易が盛んな街だ。王国5大都市の1つであり、海路では南の街オーシャが、陸路ではこの街ダイダが貿易の要となっている。

 ちなみに、デグモ王国の5大都市とは王都デグモ、港町のオーシャ、商業都市のダイダ、俺の故郷であるエナン、そしてダンジョンが多くある迷宮都市ショウエの5つである。エナンの街は湖で魚介類、森で肉類、そして街の周りで沢山の農作物が採れ、デグモの台所として栄えている。

 今更だけど、この1年で学んだ事も含めて、王国の地理を説明しよう。

 王国はどちらかと言えば南北に長い楕円形のような領土になっていて、東側はほとんどが森林に覆われている。俺の実家の東も森が広がっていた。そして更にその先は大山脈だ。どこまでが王国の領土という明確な境界はなく、山脈までが王国という認識らしい。山脈の先は道が険しく、超えることができない。

 一方、西側が主な領土となる訳だが、王都があるのは東西で言えばほぼ中央、そして北から3分の1くらいのところだ。エナンがあるのは同じく東西で言えばほぼ中央で、北からは3分の2くらいのところ。オーシャの街は王都とエナンの直線上で最南端の場所となる。

 エナンの街の西には大きな湖があるが、その湖の反対側にあるのが迷宮都市ショウエだ。この街はその内行ってみたいと思っている。王都の北にもダンジョンが何個かあったけど、迷宮都市はその比じゃないくらい多くのダンジョンがあるらしいからね。

 そして王都から西に行った場所にあるのが、ここダイダの街だ。北から流れている少し大きな川を挟み、左右に街が広がっている。川には何本か橋が架けられている。

 西側の国々との貿易をする為に栄えた街で、領主の館並みに大きな建物が沢山建っている。それぞれが名の有る商会なんだそうだ。

 そして、数多の商会が日々しのぎを削り合っているこの街の中でも、上位に位置するワトソン商会。何を隠そう、これがジョージの実家である。


「それにしてもジョージ、君は本当に大きな商会の跡取りだったんだね」

 一際大きな商会の建物、その裏手にあるジョージの実家に俺は居た。俺の実家もそこそこ大きかったけど、ジョージの実家は更にデカい。

「何だよリョーマ! 信じてなかったのか!?」

 オーバーリアクションで両手を上げて仰け反り、驚いたような仕草でジョージが応える。

「冗談だよ。本当じゃなかったら一介の学生に俺の作ったお菓子を売り捌いたり、大量の材料を仕入れたりとかできる訳ないからね」

 この1年、俺はジョージの実家に【万物創造】で作るお菓子類を卸していた。最初はアメだけだったけど、最近ではクッキー、プリン、更にはケーキやホットケーキなどなど、この世界に有ったお菓子から、無かったお菓子まで様々なお菓子を作っている。

 元々この世界に有ったお菓子でも、味が段違いに良いとの事で売れに売れ、今では国中に販売されているそうだ。

「ホント、お前には感謝してるよ。この1年、商会の売り上げは伸びる一方だ。
 味については、真似をして追いついて来る店も出てきた。だけど、お前のお菓子の真骨頂は保存期間の長さだな」

 そう、俺が作ってるお菓子なんて、そもそも前世の世界にあった物の再現だ。味はいずれ研究して追いつかれる。将来的には追い抜かれるかもしれない。けど、俺はそこに1つ付加価値を追加していた。

 スキルで作る事により、雑菌の侵入を極力防ぎ(と言うか【収納】の中に生き物は入れないから無菌状態で生産可能)、更には出来上がったお菓子には【生活魔法】の応用で保存期間を長くする魔法を付与し、賞味期限を延ばした。その結果、前世の世界では想像もできない程の賞味期限を実現したのだ。

 何て言うか、もう少し自重した方が良かったかな? と思わなくもないけど、これで他の異邦人ストレンジャーが釣れるかも知れないからね。未だに、異邦人は7人中3人しか出会えていない。出会った順に、元師匠で王女のリーナさん。盗賊に捕らえられていたスズキさん。神官長のゼムスさんだ。

 リーナさん達に聞いたら、7人にはそれぞれ暗号のような物が自称神様から与えられているらしく、7つ揃った時に古のダンジョンの封印を解くことができるそうだ。禁則事項とかに引っかかって中々聞き出せなかったけど、何とか1年かけてそこまでは聞き出せた。

「お陰で僕も大金持ちだからね。ジョージの伝手には感謝してるよ」

 ぶっちゃけ、材料は商会が準備した物を【収納】の中で【万物創造】を使ってお菓子にするだけだ。消費するのは魔力だけ。それもすぐに回復する。それを週に数回やるだけで、一般人の年収以上の金額が転がり込んでくる。正直、従魔が200体を超えた頃から将来どうやって養おうかと頭を悩ませていたんだけど、そんな心配も一気に解消した。

「どうやって作ってるのかは聞かない約束だけど、気になって気になって夜も眠れないぞ」

「それはさすがに冗談でしょ? 昨日もぐっすり寝てたじゃないか」

 俺は昨日ここダイダの街に着き、一晩ジョージの家に泊めてもらった。そしてまだ子供だからだろう。客間ではなくジョージの部屋に案内されて一緒に寝たんだ。あ、もちろん布団は別だよ?

 ちなみに、異邦人の3人には俺のスキルは全て話ているけど、ジョージには話していない。友達とは言え一般人だからね。下手にスキルの話とかをして巻き込む訳にも行かない。

「ははっ。そうだな。気になるのは間違いないけど、夜は寝てるさ。
 でも、でもさ・・・、そろそろ聞いてみたかったんだよ」

 そこまで言うと、いつものおちゃらけた表情から一転して急に真面目な顔になるジョージ。

「どんなスキルかは分からないけど、レジェンドスキルで作ってるんだろ?」

 おっと、正解ですよジョージさん。どう言う事だろうと思っていると、ジョージは更に続ける。

だ。お前も持ってるんだろ? コードネーム」

 まさかのそのパターンでしたか! 目の前で異邦人が釣れました。
しおりを挟む
──【宣伝】─────────
 新作「神の魔力と紙防御〜転生で神の魔力をも貰ったけど、同時に貰ったのは紙の防御力になりました。これは祝福ですか? いいえ、呪いです〜」(リンクになっています)の連載を開始しました。

 思いつきで書き始めましたが、結構面白くできてると思うので(自画自賛)、良かったら読んでもらえば喜びます。よろしくお願いします。

 ポチは今まで通り更新しますので、ご心配なく!
感想 112

あなたにおすすめの小説

転生少女、運の良さだけで生き抜きます!

足助右禄
ファンタジー
【9月10日を持ちまして完結致しました。特別編執筆中です】 ある日、災害に巻き込まれて命を落とした少女ミナは異世界の女神に出会い、転生をさせてもらう事になった。 女神はミナの体を創造して問う。 「要望はありますか?」 ミナは「運だけ良くしてほしい」と望んだ。 迂闊で残念な少女ミナが剣と魔法のファンタジー世界で様々な人に出会い、成長していく物語。

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分

かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。 前世の分も幸せに暮らします! 平成30年3月26日完結しました。 番外編、書くかもです。 5月9日、番外編追加しました。 小説家になろう様でも公開してます。 エブリスタ様でも公開してます。

【本編完結】転生隠者はまったり怠惰に暮らしたい(仮)

ひらえす
ファンタジー
後にリッカと名乗る者は、それなりに生きて、たぶん一度死んだ。そして、その人生の苦難の8割程度が、神の不手際による物だと告げられる。  そんな前世の反動なのか、本人的には怠惰でマイペースな異世界ライフを満喫するはず……が、しかし。自分に素直になって暮らしていこうとする主人公のズレっぷり故に引き起こされたり掘り起こされたり巻き込まれていったり、時には外から眺めてみたり…の物語になりつつあります。 ※小説家になろう様、アルファポリス様、カクヨム様でほぼ同時投稿しています。 ※残酷描写は保険です。 ※誤字脱字多いと思います。教えてくださると助かります。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?

たまご
ファンタジー
 アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。  最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。  だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。  女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。  猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!! 「私はスローライフ希望なんですけど……」  この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。  表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜

青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ 孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。 そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。 これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。 小説家になろう様からの転載です!

【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う

たくみ
ファンタジー
 圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。  アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。  ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?                        それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。  自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。  このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。  それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。 ※小説家になろうさんで投稿始めました

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

処理中です...