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幕間(2)
幕間 飛行姫はミタ!
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私はリーナ・フォン・デグモ。王位継承権は低いが、歴とした王族である。
母親は正妻や側室ではなく、妾の子ではあるが、幸いにも魔法の力で父親が現王である事は証明されている。便利な世界だ。
そして母親は既にいない。と言うか、物心付いた頃にはいなかった。実は母の生死すら知らない。
しかし、小さい頃から腹違いの兄や姉に「お前は妾の子」「ここはお前のいていい場所じゃない」等と言われて育ったので、自分の出生は何となく理解していた。
いや、言われるだけでなく、物理的な嫌がらせをされる事もあった。こんな奴らが次代の王国を背負っていくかと思うと、ちょっと心配になる程だった。
そんな私を見かねてか、学園入学と同時に王──お父様は私にお屋敷を与えて下さった。
まあ、屋敷を貰っても学生になれば基本的に暮らすのは学園の寮だ。結局は毎日のように兄や姉とも顔を合わせる。でも帰省先が王城から屋敷に変わったのは精神的に救われたかも知れない。
途中で前世の記憶を取り戻してからは、私は力を付けて冒険者として名を上げたが、それでも兄弟たたちの対応がかわることはかなかった。
そして、ようやく兄と姉が学園を卒業して居なくなったのは私が5年生になった年だった。
私の下の兄弟はまだ学園に入っていないのも救いだ。
そして、5年生になったこの1年は色々とあった。
まずはリョーマが学園に入ってきた事。
リョーマの従魔ミルクとパートナー誓約をした事。
それにより、経験値と回復力が大変な事になった事。
今まで発見できなかった異邦人を2人も発見した事。
それ以外にも、この1年でリョーマと王都北のダンジョンに探索に行ったりもした。
前世も含めて、最高の1年だったと思う。前世はほとんど病院で過ごしてたからね。
最高の1年だったが、今日はその中でもダントツで最低の日だ。年末と言う事で王族会議が開かれるため、王城に召集されている。
間違いなく兄や姉に色々言われると思うと、今から憂鬱だ。
レベルも上がり、肉体的には強くなっているので物理的な攻撃は耐えられるが、精神的な攻撃は結構堪える。
学園は冬季休暇に入り、屋敷で過ごしていたのだが、朝から馬車が迎えに来た。
もう、こんな王位継承権の低い娘なんて、放って置いてくれたらいいのに、王家の慣わしだし、そうも行かないんだろう。お迎えまで来たら行かざるを得ない。
王城へ着き、王族会議の行われる部屋に入る。
部屋に入ると、既に何人かの兄弟は席に着いていた。私を見て、何やらヒソヒソ言っているがスルーする。
王族会議には王とその2親等以内の者が参加する。具体的には王、王弟が2人、王の正妻、側室が2人、そして子供たちが10人の計16人だ。王様の母親、つまり私の祖母も存命ではあるが体調が悪く参加はしない。
そして、もちろん妾の子である私に用意されるのは末席である。
少しすると徐々に参加者が集まり、兄弟と王弟が揃う。そして、王──お父様が3人の妻を連れて入ってきた。
久々に見た父は、とても疲れているように見える。顔色も悪く、今にも倒れそうだ。大丈夫かな? 何か上手く行ってないのかな?
☆
「以上で、今年の王族会議を終了する」
数時間経ち、やっと会議が終わった。私は特に発言する事もないし、やっぱり来る必要ないんじゃないかと思ってしまう。内容も特に興味はなく聞き流していた。
途中、あまりに暇でミルクと【念話】でおしゃべりしていた。寝てた兄弟よりマシだよね?
私は他のみんなが退席するのを待ってから、部屋を出る。先に出たらまた色々と言われそうだしね。
そして、帰るまでに絡まれるのもイヤなので、この1年で習得した【光魔法】で自らを透明にして、気配を消して、そっと移動する。
途中、兄弟の──私をいじめるのが大好きな姉の部屋の前を通りかかったとき、少し開いたドアから気になる話声が聞こえてきた。
「全く、リーナの奴、いい気になりやがって。
冒険者として成功してるから、もういびられないとでも思っているのかね」
「ホント、然も私は関係ありませんよーみたいな顔して座ってたけど、実は国家転覆とか狙ってるんじゃない?」
「アハハ! それは私たちの事でしょ?」
物凄く聞き捨てならない事が聞こえてしたので、隙間から中を覗き込む。
そこに居たのは、去年卒業した姉と兄、それと数年前に卒業した姉の3人だ。因みにこの2人の姉が、私を池に沈めて前世の記憶を取り戻すことになった。まあ、そのお陰で色々あったので、ある意味では感謝している。
圧倒的に恨みの方が大きいけどね。
「それで、お父様に盛っている薬の進捗はどうなの?」
「ああ、順調だ。もう少しでポックリあの世行きさ」
「なるほど、そうなるとあと邪魔になるのは残りの兄弟たちね」
悪だくみというレベルじゃない。本気でヤバい話をしているところを見てしまった。
「そっちは力で抑える予定だから問題ないわ」
「力と言っても、それこそリーナは既にAランク冒険者だぞ?
最近同じくAランクのガキと良くつるんでるって話だ。軍を使うわけにもいかないし、大丈夫なのか?」
「大丈夫、私を誰だと思ってるの? 宝物殿に忍び込んでコレ、バッチリ盗んできたわ」
コレ? ここからじゃ良く見えないな。何を盗んできたんだろう?
「おお、それか! それが古から伝わる王家の秘宝・・・」
王家の秘宝? 確か、噂では聞いたことがある。その古代の秘宝の効果は・・・
「そうよ。勇者召喚の書よ。消耗品で勿体ないけど勇者を召喚して従えたら私たちに敵はないわ。これでこの国を手に入れましょう」
この場で止めようとも思ったけど、王族にもなるとかなり高度な防御用魔道具を持っている。防がれている間に兵士たちが来てしまうと、私の方が悪者にされるのは目に見えてるので、うかつに手も出せない。
リョーマやゼムス神官長とも相談してから動いた方が良い案件だ。いくらこいつらでも、すぐに勇者召喚を実行したりはしないだろう。
そんな淡い希望とは裏腹に、この日以降、王都はかつてない混乱の渦に飲み込まれて行くのだった・・・。
母親は正妻や側室ではなく、妾の子ではあるが、幸いにも魔法の力で父親が現王である事は証明されている。便利な世界だ。
そして母親は既にいない。と言うか、物心付いた頃にはいなかった。実は母の生死すら知らない。
しかし、小さい頃から腹違いの兄や姉に「お前は妾の子」「ここはお前のいていい場所じゃない」等と言われて育ったので、自分の出生は何となく理解していた。
いや、言われるだけでなく、物理的な嫌がらせをされる事もあった。こんな奴らが次代の王国を背負っていくかと思うと、ちょっと心配になる程だった。
そんな私を見かねてか、学園入学と同時に王──お父様は私にお屋敷を与えて下さった。
まあ、屋敷を貰っても学生になれば基本的に暮らすのは学園の寮だ。結局は毎日のように兄や姉とも顔を合わせる。でも帰省先が王城から屋敷に変わったのは精神的に救われたかも知れない。
途中で前世の記憶を取り戻してからは、私は力を付けて冒険者として名を上げたが、それでも兄弟たたちの対応がかわることはかなかった。
そして、ようやく兄と姉が学園を卒業して居なくなったのは私が5年生になった年だった。
私の下の兄弟はまだ学園に入っていないのも救いだ。
そして、5年生になったこの1年は色々とあった。
まずはリョーマが学園に入ってきた事。
リョーマの従魔ミルクとパートナー誓約をした事。
それにより、経験値と回復力が大変な事になった事。
今まで発見できなかった異邦人を2人も発見した事。
それ以外にも、この1年でリョーマと王都北のダンジョンに探索に行ったりもした。
前世も含めて、最高の1年だったと思う。前世はほとんど病院で過ごしてたからね。
最高の1年だったが、今日はその中でもダントツで最低の日だ。年末と言う事で王族会議が開かれるため、王城に召集されている。
間違いなく兄や姉に色々言われると思うと、今から憂鬱だ。
レベルも上がり、肉体的には強くなっているので物理的な攻撃は耐えられるが、精神的な攻撃は結構堪える。
学園は冬季休暇に入り、屋敷で過ごしていたのだが、朝から馬車が迎えに来た。
もう、こんな王位継承権の低い娘なんて、放って置いてくれたらいいのに、王家の慣わしだし、そうも行かないんだろう。お迎えまで来たら行かざるを得ない。
王城へ着き、王族会議の行われる部屋に入る。
部屋に入ると、既に何人かの兄弟は席に着いていた。私を見て、何やらヒソヒソ言っているがスルーする。
王族会議には王とその2親等以内の者が参加する。具体的には王、王弟が2人、王の正妻、側室が2人、そして子供たちが10人の計16人だ。王様の母親、つまり私の祖母も存命ではあるが体調が悪く参加はしない。
そして、もちろん妾の子である私に用意されるのは末席である。
少しすると徐々に参加者が集まり、兄弟と王弟が揃う。そして、王──お父様が3人の妻を連れて入ってきた。
久々に見た父は、とても疲れているように見える。顔色も悪く、今にも倒れそうだ。大丈夫かな? 何か上手く行ってないのかな?
☆
「以上で、今年の王族会議を終了する」
数時間経ち、やっと会議が終わった。私は特に発言する事もないし、やっぱり来る必要ないんじゃないかと思ってしまう。内容も特に興味はなく聞き流していた。
途中、あまりに暇でミルクと【念話】でおしゃべりしていた。寝てた兄弟よりマシだよね?
私は他のみんなが退席するのを待ってから、部屋を出る。先に出たらまた色々と言われそうだしね。
そして、帰るまでに絡まれるのもイヤなので、この1年で習得した【光魔法】で自らを透明にして、気配を消して、そっと移動する。
途中、兄弟の──私をいじめるのが大好きな姉の部屋の前を通りかかったとき、少し開いたドアから気になる話声が聞こえてきた。
「全く、リーナの奴、いい気になりやがって。
冒険者として成功してるから、もういびられないとでも思っているのかね」
「ホント、然も私は関係ありませんよーみたいな顔して座ってたけど、実は国家転覆とか狙ってるんじゃない?」
「アハハ! それは私たちの事でしょ?」
物凄く聞き捨てならない事が聞こえてしたので、隙間から中を覗き込む。
そこに居たのは、去年卒業した姉と兄、それと数年前に卒業した姉の3人だ。因みにこの2人の姉が、私を池に沈めて前世の記憶を取り戻すことになった。まあ、そのお陰で色々あったので、ある意味では感謝している。
圧倒的に恨みの方が大きいけどね。
「それで、お父様に盛っている薬の進捗はどうなの?」
「ああ、順調だ。もう少しでポックリあの世行きさ」
「なるほど、そうなるとあと邪魔になるのは残りの兄弟たちね」
悪だくみというレベルじゃない。本気でヤバい話をしているところを見てしまった。
「そっちは力で抑える予定だから問題ないわ」
「力と言っても、それこそリーナは既にAランク冒険者だぞ?
最近同じくAランクのガキと良くつるんでるって話だ。軍を使うわけにもいかないし、大丈夫なのか?」
「大丈夫、私を誰だと思ってるの? 宝物殿に忍び込んでコレ、バッチリ盗んできたわ」
コレ? ここからじゃ良く見えないな。何を盗んできたんだろう?
「おお、それか! それが古から伝わる王家の秘宝・・・」
王家の秘宝? 確か、噂では聞いたことがある。その古代の秘宝の効果は・・・
「そうよ。勇者召喚の書よ。消耗品で勿体ないけど勇者を召喚して従えたら私たちに敵はないわ。これでこの国を手に入れましょう」
この場で止めようとも思ったけど、王族にもなるとかなり高度な防御用魔道具を持っている。防がれている間に兵士たちが来てしまうと、私の方が悪者にされるのは目に見えてるので、うかつに手も出せない。
リョーマやゼムス神官長とも相談してから動いた方が良い案件だ。いくらこいつらでも、すぐに勇者召喚を実行したりはしないだろう。
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