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第2章 学園入学編

第30話 ポチからのメッセージ

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 鈴木さんの話を聞き終えた俺たちは、一緒に若干遅い朝食をごちそうになった。

 思いの他、話し込んでしまっていたらしく既に10時を回っている。ほぼブランチだね。

〈リョーマ! 起きてる? ガルムと合流できたの!〉

 朝食と言う名のブランチを食べ終わると、ミルクからそんな報告があった。

〈ありがとうミルク。思ったより早かったね〉

〈美味しいお菓子の為だから、ミルク頑張ったの! 褒めて欲しいの〉

 あっと、お菓子を作らないといけないの忘れてた。この後、買い物にも行かないとな。

〈凄いねミルク、ありがとう。この調子なら夜までには帰れそうかな?〉

 夜までにはお菓子も何とか完成するだろう。

〈帰りはガルムに乗って行くから、行きより早いの! ガルムはとても速いの〉

〈わ、分かった。何か問題があったらまた【念話】してね? 待ってるよ〉

 ガルムがどのくらい速いのか分からないけど、急いで帰ってお菓子作りだな。

「従魔のミルクから連絡がありました。無事に合流できたそうです」

「ほう、それは良かったの。
 しかし、あのダンジョンの10階層まで約10時間とは・・・尋常ではない速さじゃの。
 見るからに強力な力を秘めているようじゃったし、然もありなんか」

「従魔・・・ですか?」

「鈴木氏には、後でワシから説明しよう。
 話してしまっても良いかの?」

 鈴木さんは敵対とかしなさそうだし、問題ないだろう。欲を言えば、鈴木さんもゼムスさんも従魔のパートナーになって貰えたら、懸念事項が減るんだけど、ないものねだりをしても仕方ない。

「ええ、お手数をお掛けしますがよろしくお願いします」

「さて、リョーマ。話もひと段落したところで、ミルクとの約束覚えているわよね?」

「ええ、もちろんです。材料を買ってサッサと帰ってご褒美のお菓子を作らないといけませんね」

「買い物手伝うわ。一緒に材料を買いに行きましょう!」

 リーナさん、何故か少し嬉しそうだ。ああ、お菓子の味見とかできるのが楽しみなのかな?

「ほっほ、良いのう若いものは。買い物デートとは羨ましい限りじゃ」

「そ、そんな事ありません! 仕方なく一緒に買い物するだけですっ」

 そんなムキになって言わなくても良いのに。

「それでは、今日の所はこれで帰りますね。当面は先ほどお渡しした『認識阻害』の魔道具を使って下さいね。
 できるだけ早く変装できるような魔道具も作りますので」

「ああ、リョーマ君、何なら何までありがとう。
 君がいなかったら、もしかしたら私は未だに盗賊にこき使われてたかも知れない。
 この恩は必ず返すからね」

「いえ、困った時はお互い様ですから。
 ではまた次の休みにお邪魔させてもらいますね」

「そうじゃの。また休みの日に来てくれ。
 学生も時間が自由に使えないから大変じゃの」

 こうして、ゼムスさんに次回のアポを取ると、俺とリーナさんはゼムスさんの屋敷をお暇したのだった。


 ☆


 そして、夕方。ミルクがガルムに乗って帰ってきた。リーナさんも一緒に状況確認をする為、いつものカフェの個室だ。

 ミルクの【光魔法】でガルムも一緒に透明になって移動してきたようだ。

「ただいまなの! 昨日の夜から何も食べてないからお腹すいたの! 報酬を要求するの!」

「ふふ、そう言うと思って沢山作っておいたよ。急なお願いを聞いてくれてありがとう。
 今まで好評だったクッキー、飴、プリン、ケーキ。それと新作でホットケーキだ」

 そう説明しながら、机の上に並べていくと、ミルクは某怪盗の3世がベッドにダイブするようにお菓子の山にダイブして行った。

「さて、キミがガルムだね? お疲れ様」

 そんなミルクを横目に、ミルクと一緒にやってきたオオカミをみる。

 サイズは中型犬程度、メタリックな見た目をしている。何の金属かな?

《解析の結果、オリハルコンでできています》

「ブッ!」

「な、なに!? リョーマ急にどうしたの?」

「え、いや、このオオカミ、オリハルコンでできているみたいで・・・」

「ブッ!」

 そうなりますよね。良かった同じ反応で。

〈初めまして主殿。小生はガルム1号であります。
 此度、製作者ゴブ・リーン殿の命を受け、この地に参上仕った次第であります〉

 会話できるのかな? と思っていたら【念話】が送られてきた。意外と渋い声だ。

「ガルム1号なんだね? 他にも居るのかな?」

「あれ、リョーマとガルムが見つめ合ってると思ったら、会話してたの?」

「すみません。ガルムは【念話】で意思疎通するようで、僕にしか聞こえてなかったんですね」

 これは毎回、ガルムの声を僕がリーナさんに伝える必要があるのかな?

「えっと、ガルムが自己紹介をしてくれて、ガルム1号って名前らしいんだ」

「あれ? リョーマは【念話】のグループ機能を知らないの?
 【念話】スキルを2人以上が保持していたら、複数人数での【念話】が可能なの!」

 ミルクがお菓子を食べるのを止めて、そんな事を教えてくれた。

 何その便利機能。グループチャットみたいな?

「へぇ、そんな事ができるんだ? 僕はまだ【念話】スキルを持ってないから知らなかったよ」

「ミルクも【念話】があるから、これでグループ機能が使えるの」

 そう言って、ミルクも【念話】を発動したようだ。

〈正常に接続できたであります。
 先ほどの問いの答えでありますが、全部で9体のガルムが存在しているであります〉

「ガルムは凄いの。レベルで言ったら150くらいの強さがあるの」

「「ブッ!」」

 今度は2人そろって吹き出してしまった。レベル150相当が9体とか・・・ヤバすぎる。

〈それでは本題に入らせて頂くであります。
 まず小生はこれより主殿の護衛の任に就くであります。
 また、普段は小さいボール状になり、携帯して頂くことも可能であります〉

 それどこの国民的ゲーム。ガルモン、ゲットだぜ! みたいな?

「リョーマ。多分私は今、あなたと同じような事を思っているわ。とりあえずスルーしましょう」

〈それと、ポチ殿からのメッセージが送られてきているであります〉

「送られてきてる?」

〈小生にはメッセージをやりとりする機能があるであります。
 リアルタイムでの通信はできないでありますが、バッファに貯めておき通信可能なタイミングで送受信が可能であります〉

 詳しく聞くと、従魔たちから俺に経験値が送られる際に発生する封印の歪を使って、貯めてあるメッセージを送受信する事が可能らしい。
 但し、普段の歪は微々たる量なので、文章1つ程度を送るのに数日かかるとの事だった。

「凄いわね。これで自由にとは行かないけど、ポチちゃんと連絡がとれるって事じゃない!」

「ええ、本当に・・・長いようで短い6年でした・・・
 あ、あれ、まだポチと連絡が取れてる訳ではないのに、目から水が・・・」

 不覚にも、俺はポチと連絡が取れる手段が手に入ったと聞いただけで、涙腺が崩壊してしまった。

 何て言うか、体はまだ子供だから涙腺が緩いんだよ。うん、そうに違いない。う、嬉しくなんかないんだからねっ。すみません強がりでした。

〈主殿、落ち着いたでありますか?
 それでは、ポチ殿のメッセージを再生するであります。
 ”ご主人、我輩はポチなのだ”
 以上であります〉

 えっ! 文章1つってそれだけ!? 我輩ってなに! なのだってなに!?
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