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第2章 学園入学編
第29話 鈴木さんの異世界生活
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俺たちは隣の部屋、つまり鈴木さんが寝ている部屋に入る。
部屋に入ると、昨日連れて来たままの恰好の鈴木さんがベッドで寝息を立てていた。
「それじゃあ、起こしますね?」
そう言って、ゼムスさんとリーナさんを見ると2人とも頷く。それを見届けて俺は『覚醒』の魔法を使った。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
私の名前は鈴木修二。今年で42歳になる、しがない独身サラリーマンだ。いや、サラリーマンだったと言うべきか。私の生活は数か月前に一変したからだ。
それは、深夜まで仕事をしていて終電も無くなった為に、徒歩で自宅アパートへと帰る途中の事だった。正直、あのまま仕事をしていたら数ヵ月以内に過労で死んでいたと思う。そう言う意味ではこちらの世界に来れて良かった。
それで帰り道、地下の通路を歩いている時に、不思議なトビラを見つけたんだ。仕事が遅くなるとよく通る道だけど、こんな所にトビラなんてあっただろうか? そう思いながらもトビラに近づいたんだ。
トビラに近づくと、少しだけ開いていて中から七色の光が漏れていた。七色の光と言っても簡単に形容できるようなものでもなく、とにかく第一印象として七色に感じる、そんな感じの光が漏れていた。
普段の私なら、そんな怪しい場所はスルーしていたのだろうが、深夜まで仕事をして疲れていた私は何となく気になり、そのトビラを開いてしまった。
その瞬間、トビラに吸い込まれ、次に気付くと私は真っ黒な世界に居た。
何もかもが真っ黒で上も下も。右も左も分からない。そんな世界だった。
一瞬、私の目がおかしくなったのかとも思ったが、自分の手をみるとちゃんと見えていた。つまり純粋に周りが真っ黒だったんだ。真っ黒なのに手は見えるのも不思議な話だけどね。
「そうこそボクの世界へ。シュウジ・スズキさん。
ボクは神様だよ」
真っ黒な世界で目の前に急に人が現れたと思ったら、そんな事を言いだした。人と言っても、顔は良く見えず、とにかく黒い人物って感じだった。
もちろん、最初は自称神様とかそんな胡散臭い話は信じなかった。
けど、色々と話を聞いていく内に本当に神様かどうかは置いておいて、言ってる事は少し信じてみようかと思うようになっていたんだ。
曰く、私は異世界に転移した。そこは剣と魔法の世界で、普通の人が持たないような凄いスキルを持って転移させて貰える。
このまま会社の奴隷として毎日働き、いつか倒れるよりかよっぽど良いんじゃないかと思えてしまったんだ。
噂に聞くような異世界転移。さすがにハーレムまでは求めないけど、特殊なスキルも貰えるなら俺ツエーできる要素もある。
だから私は、神様からの要求を二つ返事で受け入れて、異世界へと旅立ったんだ。その後に待ち受けている運命も知らずに・・・。
目を覚ますと。私は森の中に居た。うん、ここまでは良くある異世界転移の始まり方だ。
けど、想定外だったのは周りを小汚い服を着て、ぼさぼさの髭を生やした連中に囲まれていた事だった。
「動くなよ。動くと命はないぞ?」
知らない言葉でそんな事を言われたけど、何故か理解できる。これが噂の言語チートか。うんうん益々主人公ぽくなってきた。
きっとこいつらは盗賊か何かだろう。最初の敵としては持ってこいだ。異世界あるあるだ。
ここで神様にもらったレジェンドスキル【発動阻害】で無双して、私の異世界生活の幕が開ける。
・・・そう思っていた時期が私にもありました。
結果的に、レジェンドスキルで盗賊たちのスキルは完封できたものの、レベル1の私では肉体的に敵うはずもなく・・・。
成すすべもなく取り押さえられて、スキル目当てで隷属の首輪を付けられた。逆にスキルの有効性を認められたお陰で、殺されたり、奴隷として売却されたりしなかっただけマシだったのかな?
とにかく会社の奴隷(比喩)から逃れられたものの、盗賊の奴隷(物理)となり、私の異世界無双計画は数分で終焉を迎えたんだ。
その先は知っての通り、しばらくは盗賊の便利アイテムとして森を通る人たちのスキル発動を阻害する生活を送っていた。スキルあり対なし、レベルが大きく違わなかったら勝敗は火を見るより明らかだった。
そんなある日、リョーマ君たちがやってきた。私のスキルをモノともせず、盗賊を一網打尽にしたんだ。それはもう衝撃だった。そして同時に確信したよ。リョーマ君が神様が言っていた7人の仲間の内の1人なんだろうって。え? 違う?
とにかく、その後でこの国の兵士と言う人たちに保護され、やっと平和な異世界生活が送れる。・・・そう思っていた。
だけど、今度はそこから解放されずに、監禁されてしまったんだ。何でも非常に珍しいスキルを持っているから国の為に役立てて欲しい。むしろ役に立てろとか。
もちろん断ったよ。危険な任務も多そうだし、のんびり異世界生活を楽しみたい。最終的には神様の依頼を達成しないといけないからね。その結果も知っての通りだよ。
と、まあこれがここまでの鈴木修二の異世界生活ってところかな?
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「ま、まあ42歳って言うと厄年ですもんね? ・・・大変でしたね?」
鈴木さんの話を聞いた後、俺が何とか捻り出した言葉がそれだった。
社畜として働き、盗賊に便利アイテムとして使われ、そして軍に拉致られる。かなり不運な人生だと思う。
「そう、私ももう半場あきらめかけていたんだ。
助け出してくれて感謝しているよ」
そこで話が一区切りすると、今度はリーナさんが話しかける。
「初めまして鈴木さん、私はリーナ。傲慢のコードネームをもらった者です。あなたのコードネームは何ですか?」
「初めましてリーナさん。私ですか? 私のコードネームは確か怠惰ですね。
朝から深夜まで必死に働いていた私に怠惰とかひどいですよね!」
やっぱりコードネームは七つの大罪みたいだ。完全に自称神様の趣味で付けただけっぽいけど。
「ワシはゼムス。コードネームは憤怒じゃ。自分で言うのもなんじゃが、穏やかな性格じゃぞ?
しかし、これで7人中3人集まったという事じゃな。あとは4人じゃ。
果たして、もうこの世界に居るのか、これから転生、または転移してくるのか分からないがの」
ポチを助けるにはとにかく7人を集める必要があるんだ。あと4人、何としても早く見つけないと。
部屋に入ると、昨日連れて来たままの恰好の鈴木さんがベッドで寝息を立てていた。
「それじゃあ、起こしますね?」
そう言って、ゼムスさんとリーナさんを見ると2人とも頷く。それを見届けて俺は『覚醒』の魔法を使った。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
私の名前は鈴木修二。今年で42歳になる、しがない独身サラリーマンだ。いや、サラリーマンだったと言うべきか。私の生活は数か月前に一変したからだ。
それは、深夜まで仕事をしていて終電も無くなった為に、徒歩で自宅アパートへと帰る途中の事だった。正直、あのまま仕事をしていたら数ヵ月以内に過労で死んでいたと思う。そう言う意味ではこちらの世界に来れて良かった。
それで帰り道、地下の通路を歩いている時に、不思議なトビラを見つけたんだ。仕事が遅くなるとよく通る道だけど、こんな所にトビラなんてあっただろうか? そう思いながらもトビラに近づいたんだ。
トビラに近づくと、少しだけ開いていて中から七色の光が漏れていた。七色の光と言っても簡単に形容できるようなものでもなく、とにかく第一印象として七色に感じる、そんな感じの光が漏れていた。
普段の私なら、そんな怪しい場所はスルーしていたのだろうが、深夜まで仕事をして疲れていた私は何となく気になり、そのトビラを開いてしまった。
その瞬間、トビラに吸い込まれ、次に気付くと私は真っ黒な世界に居た。
何もかもが真っ黒で上も下も。右も左も分からない。そんな世界だった。
一瞬、私の目がおかしくなったのかとも思ったが、自分の手をみるとちゃんと見えていた。つまり純粋に周りが真っ黒だったんだ。真っ黒なのに手は見えるのも不思議な話だけどね。
「そうこそボクの世界へ。シュウジ・スズキさん。
ボクは神様だよ」
真っ黒な世界で目の前に急に人が現れたと思ったら、そんな事を言いだした。人と言っても、顔は良く見えず、とにかく黒い人物って感じだった。
もちろん、最初は自称神様とかそんな胡散臭い話は信じなかった。
けど、色々と話を聞いていく内に本当に神様かどうかは置いておいて、言ってる事は少し信じてみようかと思うようになっていたんだ。
曰く、私は異世界に転移した。そこは剣と魔法の世界で、普通の人が持たないような凄いスキルを持って転移させて貰える。
このまま会社の奴隷として毎日働き、いつか倒れるよりかよっぽど良いんじゃないかと思えてしまったんだ。
噂に聞くような異世界転移。さすがにハーレムまでは求めないけど、特殊なスキルも貰えるなら俺ツエーできる要素もある。
だから私は、神様からの要求を二つ返事で受け入れて、異世界へと旅立ったんだ。その後に待ち受けている運命も知らずに・・・。
目を覚ますと。私は森の中に居た。うん、ここまでは良くある異世界転移の始まり方だ。
けど、想定外だったのは周りを小汚い服を着て、ぼさぼさの髭を生やした連中に囲まれていた事だった。
「動くなよ。動くと命はないぞ?」
知らない言葉でそんな事を言われたけど、何故か理解できる。これが噂の言語チートか。うんうん益々主人公ぽくなってきた。
きっとこいつらは盗賊か何かだろう。最初の敵としては持ってこいだ。異世界あるあるだ。
ここで神様にもらったレジェンドスキル【発動阻害】で無双して、私の異世界生活の幕が開ける。
・・・そう思っていた時期が私にもありました。
結果的に、レジェンドスキルで盗賊たちのスキルは完封できたものの、レベル1の私では肉体的に敵うはずもなく・・・。
成すすべもなく取り押さえられて、スキル目当てで隷属の首輪を付けられた。逆にスキルの有効性を認められたお陰で、殺されたり、奴隷として売却されたりしなかっただけマシだったのかな?
とにかく会社の奴隷(比喩)から逃れられたものの、盗賊の奴隷(物理)となり、私の異世界無双計画は数分で終焉を迎えたんだ。
その先は知っての通り、しばらくは盗賊の便利アイテムとして森を通る人たちのスキル発動を阻害する生活を送っていた。スキルあり対なし、レベルが大きく違わなかったら勝敗は火を見るより明らかだった。
そんなある日、リョーマ君たちがやってきた。私のスキルをモノともせず、盗賊を一網打尽にしたんだ。それはもう衝撃だった。そして同時に確信したよ。リョーマ君が神様が言っていた7人の仲間の内の1人なんだろうって。え? 違う?
とにかく、その後でこの国の兵士と言う人たちに保護され、やっと平和な異世界生活が送れる。・・・そう思っていた。
だけど、今度はそこから解放されずに、監禁されてしまったんだ。何でも非常に珍しいスキルを持っているから国の為に役立てて欲しい。むしろ役に立てろとか。
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と、まあこれがここまでの鈴木修二の異世界生活ってところかな?
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「ま、まあ42歳って言うと厄年ですもんね? ・・・大変でしたね?」
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