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第2章 学園入学編

従話 ポチの冒険(7)前編

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 今、我輩の前には大きな扉があるのだ。

 豪華な装飾と共にハンマーの絵が描かれている。これは間違いなく階層主の部屋なのだ。

「殿! 待っていたで・・・ござ・・・る?」

「ん? どうしたのだ? ジロジロと我輩をみて。歯切れが悪いのだ」

「・・・いや、何でもないでござる」

 おかしなアドランなのだ。

「トビラの発見、お疲れなのだ。後は我輩が何とかするからアドランは休んでるのだ」

「ダメでござるよ! また前みたいに1人で突入して1日以上出られなかったら、配下のみんなが心配するでござる」

 前みたいに、と言うのは1年くらい前の悪魔5人衆の事なのだ。あの時は相手がこちらの平均レベルまで強化される特殊な部屋で、5人とも我輩と同じレベルになってとても苦戦したのだ。だけど、さすがに同じギミックは芸がなし、作らないと思うのだ。

「とにかく、何人かお供を連れていくでござる! もちろん拙者も行くでござる」

「アドランは心配性なのだ。でも我輩も成長してるのだ。仲間に心配かけるわけにはいかないので、ちゃんと皆で行くのだ」

「はーい! ボクも行くよー!」

 そう言いながら現れたのは、魔エルフのマルフなのだ。我輩の【転移】を【トレース】のスキルで追ってきたのだと思われるのだ。ふざけた奴だけど、色々と優秀なのだ。

「ワタシも行くわよぉ」

 グリモンまで来たのだ。悪魔たちは【影移動】というスキルを持っていて、短距離で影がある場所なら【転移】と同等の移動を可能とするのだ。我輩、頑張って【転移】を手に入れたのにこんな簡単に付いて来られたらちょっと凹むのだ。

「それじゃあ、我輩、アドラン、マルフ、グリモンの4人で入るのだ」

 我輩は他の直轄配下に階層主の部屋を攻略に行くと【念話】を送ると返事を待たずトビラを開ける。


 部屋に入ると、お決まりでトビラは自動的に閉まる。部屋の大きさは20m四方ほどで他の階層主の部屋より少し小さめ。そしていつも通り部屋の中央で魔法陣光り輝き、光が収まるとその中心に階層主が現れたのだ。

 体長は2m程、筋肉粒々で髭を生やし背中には大きな金属のハンマーを背負っているのだ。

「永かった・・・永かったぞ・・・。いつかこの階層に客人が来ることを夢見て、自己研鑽すること幾百年。
 ようこそ、待ちに待った挑戦者の諸君・・・ん? んん?」

 階層主は我輩をみると目が点になっている。ものすごく凝視されているのだ。

「げ、芸術だ! ワシの求めていた芸術がここに!!」

 な、何を言い出すのだ。この階層主は・・・。とりあえず【鑑定】しておくのだ。

【基本情報】
 種族:魔ドワーフ
 名前:なし
 年齢:1132歳
 レベル:111

 レベルが中々高いのだ。我輩のレベルをコピーした悪魔たちを除くと、過去最大なのだ。後、年齢もヤバいのだ。

 続けてスキルも【鑑定】しようとしたら失敗してしまった。基本情報だけ確認できて詳細確認ができなかったのは初めてのパターンなのだ。

「フハハハ。そこの芸術ワンコ。ワシが【鑑定】できなくて驚いているな?」

「な、何故ばれたのだ!? って芸術って何なのだ!」

「我輩は詳細な【鑑定】を防ぐ魔道具を装備しているのでな。誰に【鑑定】されたかもわかるぞ。ワシの自信作じゃ。
 して、芸術の定義も知らぬのか?」

「いや、芸術は知っているのだ。そうじゃなくて、何で我輩が芸術なのだ!?」

 我輩がそう言うと、魔ドワーフと配下の3人が顔を見合わせる。一体なんなのだ!?

「自分でやっておいて何だけど、どうみても芸術よねぇ」

「うんうん。ボクも会心の出来だと思うよ!」

「拙者、殿の趣味をとやかく言うことはしないでござる。思う存分こすぷれ? をしたらいいでござるよ」

 そこで、ハッと気付いた。

 我輩・・・色々と飾られたままなのだ! ピンクのリボンなのだ! カラフルな毛並みなのだ!

「・・・お邪魔したのだ。我輩、帰るのだ」

「待て待て、この部屋に入ったからには、簡単に出られないことは知っておるじゃろう?
 初めての客人だ。ワシを楽しませてくれ」

 ですよねなのだ・・・。

 こうなったら一刻も早く、このフロアをクリアして外に出るしかないのだ!

「ワシ自身は戦闘職ではないのでな。ワシが創ったコイツが相手をするぞ」

 魔ドワーフが丸いボールのような物を取り出すと、目の前に投げる。

 ボールは地面に当たると同時に眩い閃光と共に大きく膨らんだのだ。まっ、眩しいのだ。

「しまった! 目潰しなのだ!?」

「いやいや、そんな姑息な事はせん。ワシの力作。究極の戦闘兵器ガルフじゃ!」

 何と、光が収まるとカッコいいオオカミ型ロボットが現れたのだ! ボールから変形する変形ロボなのだ! カッケーのだ! 我輩も欲しいのだ!

「今までだーれもこの階層まで来なくてな。あまりに暇で改造に改造を重ねたら、レベル150相当まで強化されてしまったのじゃ。すまぬが、簡単には勝たせてやれぬぞ」

 レベル150相当!? それはやば・・・くはないのだ。この1年で我輩のレベルは160まで上がっている。配下のみんななら多少苦戦はするかもしれないけど、我輩なら問題ないのだ。

「ここは我輩一人で大丈夫なのだ。みんなはそこです見ていてくれなのだ」

 そう言って、我輩は1歩前に出る。

「良いのか? 全員まとめてでも良いのじゃぞ?」

「問題ないのだ」

 我輩はいつでも戦闘が開始できる態勢を取る。

「そうか、後悔して知らぬぞ・・・。
 行けガルフ。ワシの技術の結晶よ!」

 魔ドワーフのその言葉と同時にオオカミが突っ込んできたのだ。


────────────────
長くなったので、前・後編に分けさせて頂きます。
後編は臨時で明日(24時間後)更新予定です。
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