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第2章 学園入学編

第9話 コードネーム

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「あら、リョーマさん。お久しぶりですね」

 師匠が俺に気付き、声をかけてくる。丁寧な言葉遣いの師匠って違和感しかないな。

「お久しぶりです。偶然ですね!」

「え、ええ、本当に。少し背が伸びましたね?」

「ちょっ! リョーマお前、この方と知り合いなのか!?」

「うん、ちょっとね」

 膝から崩れ落ちたままだったジョージを引っ張り上げながら答える。ジョージが立ち上がったところでまた師匠が口を開いた。

「それで、これは何の騒ぎなんですか?」

「だから、このボクちんに向かってコイツが魔法を・・・、ん!?
 あ、あ、あ、貴女は!!」

 いや、気付くの遅くない? まあ、そこはスルーで。

「僕は的に向かって魔法を撃っただけですよ? 寧ろ、人に向けて魔法を撃ったのはアチラです。ねえ?」

 そう言いながら、周囲に同意を求める。

 ───カクカクカク。

 周りの人達が無言で何度もうなずく。あれ? これは僕が恐れられてるのか、師匠の登場に度肝を抜かしてるのか・・・。うん、きっと後者だろう。

「そう? そこのおデブちゃんが人に向けて魔法を放った、と言う事ですね? 一応、人に害を持つ魔法を撃つと退学という校則があるのですが・・・、貴方達はまだ入学はしていませんでしたね。
 うーん、ではこの場は私が預かると言う事でどうでしょう? 後ほど学園長と相談して処分を決めさせて頂きます」

「ぼ、ボクちんはそれで良いんだな・・・あ、いや、良いですです」

 退学と聞いた時は青い顔になっていたボクちん君は、とりあえず保留になりホッとした様だ。

「僕もそれで問題ありません。
 ところで・・・、的を壊してしまったのですが、試験はどうなるでしょうか?」

「ああ、的は明日には自動修復するから気にしなくて大丈夫だぞ。それとさっきの魔法で十分だ。どう見ても今日の参加者の中ではダントツだからな」

 審判をしていた教師がそう言ってくれた。粉々にしたのに自動修復とか、すごい備品だな。

「では、本日の試験はここまでですね? リョーマさん、この後少し時間よろしいですか?」

「はい、今日は試験さえ終われば予定は有りませんので、大丈夫です」

「えー、この後折角友達になったから親睦を深めようと思ってたんだけどな。相手が飛行姫なら諦めるしかないか」

 ジョージはこの短い時間で俺を友達と呼んでくれるのか、何か嬉しいな。と言うか、師匠の二つ名は飛行姫なのか。確かに魔法で飛んでたけど、ひこうきって・・・。カッコいいな! ん? 俺のネーミングセンスでカッコいいと思うって事は・・・。深く考えるのは止めよう。

「ごめん、ジョージ。まだ入学式まで日もあるし、また今度ゆっくり話をしよう」

「ああ、また声をかける」

「それではリョーマさん、お茶をしながら話をしましょう。貴方も私に聞きたいことがあるでしょうしね」

 うん、やっぱり師匠も気付いてるよね。俺達が同類だと言う事に。


 実力テストはあの場で解散になり、俺と師匠は学園の食堂に移動した。学園には何箇所か食堂があり、食事時以外はカフェとして運営されている。

 今回師匠が選んだのは新入生の寮に近い食堂で、俺もここ数日使用している場所だ。

 師匠はさも当然の様に、食堂奥の個室に入る。この食堂、個室もあったんだね。

「さて、飲み物は紅茶で良いかしら?」

「その前に師匠、その話し方は何とかなりませんか? 正直違和感しか・・・」

「あら、失礼ですね。こっちが素です。あれは冒険者をやる時のロールプレイのような物です。モデルもあるんですよ?」

 そ、そうなのか。あそこまで切り替えられるとか、ある意味凄いな。モデルは知ってる。往年の名ファンタジー小説の主人公ですよね。

「それでも、二人の時はあっちのキャラでお願いできますか? 何か話し難いので」

「はあ、しょうがないわね。これでいいかしら?」

「ありがとうございます。それにしても師匠、カッコいい二つ名を持ってるんですね。感動しました!」

「何それ、皮肉・・・って訳でも無さそうね。本気でカッコいいと思ってるのね。
 でも、私は気に入ってないわよ!」

「そうなんですか? メチャカッコいいのに残念です」

「兎に角、飲み物を頼みましょう」

 師匠が机にあるベルを鳴らすと、ウェイトレスの女の子がやってくる。この個室は外のオープンな席と違って、注文を聞きに来てくれるようだ。外は普通の学食のように、並んで好きな物を取り席に座るスタイルだ。

 暫く待つと頼んだ紅茶とお菓子が届く。ウェイトレスが出て行ったのを見届けると師匠が口を開いた。

「さて、本題を単刀直入に聞くわね?」

「はい、どうぞ」

「私のコードネームは傲慢よ。貴方は?」

 ・・・この人は何を言ってるんだろう。カッコいい二つ名の次は、カッコいいコードネームとか!

「え? 何ですか?」

「いや、だからコードネームよ。貴方も貰ったんでしょ? あのから」

「いや、何の話でしょうか?」

 そう返すと師匠は目に見えて狼狽し始めた。

「え? え? 貴方、7人の中の1人じゃないの? 仲間じゃないの!?」

「すみません、僕はと話はしましたが、黒い世界は記憶にないですね・・・」

「ま、まさかの別口!?」

 ───ガンっ!

 師匠は机に突っ伏してしまった。と思ったら、

「あー、でもどうでも良いわ! 貴方も転生者で間違い無いのよね?」

 一瞬で復活した。

「転生者である事は否定しません。やっぱり師匠も転生者なんですね」

「ええ、そうよ。3年程前に記憶を取り戻したの」

 なるほど、師匠は途中で記憶が蘇ったパターンなのか。しかし7人か。女神様が転移者・転生者が王都に集まると言っていたけど、人数までは分からなかったから、これだけでも収穫だ。

「師匠の他にも居るのですか?」

「いえ、私はまだ出会ったことがないわ。7人居るはずなんだけど。それぞれコードネームを貰っているはずよ」

 7つのコードネームで師匠が傲慢って事は、他のメンバーも推測できる。アレだな。厨二心をくすぐる例のやつ。

「因みに1人心当たりがありますが、情報要りますか?」

「本当? 是非、教えてくれるかしら?」

「情報の交換をしませんか? 師匠が黒い世界でどんな話を聞いたのか、それを教えて下さい」

 俺がそう言うと、師匠は少し困った顔をする。

「ダメですか?」

「ダメと言うか・・・教えたいんだけど、殆どが禁則事項に設定されていて伝える事ができないの。レジェンドスキルを貰った代償で呪いの様な物をかけられてるのよ」

 あ、やっぱりレジェンドスキルは転生者特典みたいな感じで貰ったのか。けど呪いまでかけられてるとか、師匠が出会ったのは本当に神様だったんだろうか、と言う疑念が俺の中で湧き上がるのだった。
 
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