うちのポチ知りませんか? 〜異世界転生した愛犬を探して〜

双華

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第1章 幼少期編

第12話 森へ

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「全く。もう一度説明してやるから、ちゃんと聞いておくんだぞ?」

「はい、すみません」

 従魔契約に気を取られて、支部長の説明を聞き逃していた。申し訳ない。

「まず、今回の依頼は本来なら指名依頼となる案件だ。そして、その辺りも先程相談させてもらったが、やはり冒険者登録したてのFランクに指名依頼は出せない」

 詳しく聞くと、どうやら指名依頼はギルドランクがC以上の冒険者にしか出せないらしく、登録したての俺に指名依頼は出せないようだ。

 支部長はそこまで話すと、理解できてるか? みたいな顔でこちらを見て来る。

「はい、ここまでは大丈夫です」

「うむ、今度はちゃんと聞いてるな。そこで苦肉の策だが、ある程度条件を付けて一般依頼として発行する事にした。
 今すぐCランクまで上がって貰うのも無理があるからな」

「条件・・・ですか?」

 俺が聞き返すと、シーラ様が答える。

「ええ、そうです。リョーマ君にしか受けられないような条件ですね。依頼の内容によっては色々と条件があるのは良くある事です。
 具体的には、依頼を受けられる年齢に制限を設けます。ギルド規約にも、依頼に年齢制限をしてはいけないとは、書かれていませんしね」

 そう言いながらニヤリと笑うシーラ様。まあ、確かに年齢条件を一般的な冒険者の年齢より低くしておけば、そうそう受けられる冒険者は居ないだろう。

「年齢制限を出来れば5歳以下としたいところですが、それだとちょっとあからさま過ぎますので、10歳としようと思います。
 本来なら12歳以上しか冒険者登録出来ませんので、今この支部で条件を満たしているのはリョーマ君だけとなります。
 今回は護衛依頼なので、事前に面談もあります。万が一、他の支部の特例冒険者が来たとしても、その面談でお断りしようと思っています」

 なるほど、でもそれなら俺に直接一般依頼を受けさせるだけで良いんじゃないかな? わざわざ、回りくどい事をする必要があるんだろうか? そんな疑問を投げかけたら、支部長が答えてくれた。

「それが出来たら楽なんだけどな。一般依頼は開示期間というものがあり、冒険者に均一に依頼を受ける機会を提供する為に、一定期間貼り出した依頼しか受ける事が出来ない仕組みになっている。
 勿論、急ぎの依頼などの特例はあるが、今回はその特例には当てはまらないしな。
 なので、一般依頼とした時点で貼り出しの義務が生じる。組織が大きくなると色々と手続きも面倒なんだ」

 12歳以下を冒険者登録するのは、実力さえ確認できたら支部長権限で出来るけど、一般依頼のルールを曲げて特定の冒険者に受けさせるのはダメなのだそうだ。まあ、貼り出しても誰も受けなかった依頼とかなら、ギルド員の裁量で特定の冒険者に直接お願いしても良いらしいけどね。

「兎に角、そんな訳で神殿からの依頼は、一旦依頼ボードに貼り出すから、開示期間が経過したらお前に受けて貰う予定だ。
 今から貼り出すと、昼過ぎってところだな」

 アルフさんが壁に掛かった時計の魔道具をみながら、説明してくれた。そうそう、時計の魔道具は意外と普及しているらしい。多分、先輩転生者や先輩転移者が広めてくれたんだろう。感謝、感謝。

「分かりました。でも、どうしてそこまでしてギルドの依頼に拘るのですか? 僕としては冒険者としてではなく、個人ででもお手伝いしますよ?」

「ああ、それは単純だ。
 冒険者の評価に関する項目に信用度と言うものがあってな。その信用度が高いと、ギルドランクアップ試験の結果に考慮されたり、初めて行った支部などでも優遇されたり、色々良い事があるんだ。
 そして神殿からの依頼を無事達成したとなると、その信用度も大きく上がる。内容次第だが一般的な依頼の10~100倍くらいだ。護衛は元々結構高いから、更に倍率ドンだ。
 お前には早めに信用度も上げて欲しいという、シーラ様の親心ってやつだな」

 なるほど、ギルドとして安心して依頼を任せられる指標みたいなものかな? 上げておいて損はなさそうだね。依頼を失敗すると下がるらしい。身の丈にあった依頼を受ける様に心掛けよう。

「この依頼が受けられるようになる昼過ぎまでに、半日で終わりそうな依頼を受けてみたらどうだ? まだ朝だから、それなりには依頼が残ってるはずだ。良いのが無ければ、常設依頼と言うものもある」

 詳しく聞くと、常設依頼とは薬草の採取や、ゴブリンの討伐(ゴブリンの魔石の採集)など、ギルドからの依頼として年中貼り出されている物らしい。

 そして、この支部の常設依頼は大抵が俺の家の裏の森でも達成可能な内容との事だ。また、常設依頼は特に受注する必要はなく、成果物を持ち込むだけで良いらしいので、一度帰って朝食を食べたら森へ行ってみようかな? 信用度は上がらないが、依頼の達成回数としてはカウントされるそうなので、ランクアップにも近づける。

「お父様、一人で外出の件ですが、早速森へ出掛けても構いませんか?」

「うーむ。若干心配ではあるが、お前なら大丈夫だろうし、一人でお使い出来たら許可すると約束もしたからな。行って来ると良い」

 さすがパパン。話が分かるイケメンだ。説得するのに時間をかける覚悟はしていたけど、昨日のチンピラや冒険者とのやり取りを聞いて、実力的には安心してくれてるのかな? 他人とトラブルを起こすと言う時点で微妙に安心出来ないかも知れないけど。

「それでは、私は貴方達を家に送ったら、先に神殿に帰っているので、昼過ぎに依頼を受けたら、私を訪ねて来てくれるかしら?」

「はい、分かりました。必ず伺います」

 そして、俺は家に帰り家族で朝食を食べた後、森に出掛ける事となった。

 ☆

「リョーマ、準備はいい? 剣は持った? 回復ポーションは持った? ギルドで貰った薬草の写し絵は持った? ハンカチは?」

 この母、過保護である。・・・嫌では無いけど、何かくすぐったいな。前の世界で親の愛を感じる事は無かったので、寧ろ嬉しい。面と向かっては言えないけどね。

「大丈夫です、お母様。ちょっと裏の森に行って、薬草を探して来るだけです。近場なら、仲間からはぐれた弱い魔物しか出ないって話ですし、ヤバそうなら走って逃げます。僕の身体能力は知っているでしょう?」

「ええ、まあ貴方の身体能力なら、この辺りの魔物に引けを取る事は無いとは思うけど、物事に絶対はないのよ?
 そもそも、貴方は魔物を倒した事がないでしょ? 最初は心構えとかも必要だと思うの。
 ・・・やっぱり、私も付いて行こうかしら?」

 や、ヤバい。ママンがついて来る気になってる。過保護なママンと行ったら、俺は見てるだけになりそうだ。折角の機会に色々とやってみたいのに、ママン無双になっちゃう。

「い、いえ、大丈夫ですよ、お母様。折角外出の許可を頂いたんです。一人で行かせて下さい! まだ数日ですが、お母様に教えられた剣術も試したいですしね!」

「そう? 本当に大丈夫? 危なそうならすぐに帰って来るのよ?」

「はい。無理はしない予定なので心配無用です。何度かお母様と立ち入ったこともありますし、問題はありません」

 どこかの偉い人は言っていた。予定は未定であり決定ではないと。でも、俺としても一人で外出を許可された当日に無理をするつもりも無いので、多分大丈夫だろう。

「それでは、行ってきます。昼にはギルドへ行かないといけないので、それまでには帰ってきます」

「いってらっしゃいリョーマ。薬草が依頼1回分集まったら帰って来るのよ? 後、最近は大丈夫だけど
魔物が増えている様な兆候があったら直ぐに戻るのよ? それと、えっと・・・」

「大丈夫です。行ってきますね?」

 これ以上居ても、母の話は堂々巡りしそうなので、早々に切り上げ俺は初めて一人で森へ足を踏み入れたのだった。
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