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第1章 地方都市ガメル(仮
幕間(2)
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僕はガメルの街の冒険者ギルドで受付をしているチール。15歳で応援団と言う聞き慣れない天職を授かり、それなら冒険者の応援をしようと、ここに就職して早5年になる。
今日もいつも通り仕事をしていた。そんな中、少し変わった子が登録に来たんだ。
朝のクソ忙しいラッシュが終わり、仕事がひと段落した頃、その男の子は現れた。
「いらっしゃい! 冒険者ギルドガメル支部へようこそ! 受付担当のチールだ」
僕がそう言うと、男の子は露骨に残念そうな顔をする。うん、いつもの事だ。
15歳になり、天職を授かって冒険者登録に来る子は結構いる。だけど、受付は美人の女の子がやっていると言う妄想を抱いている子が多いんだ。
子供が良く読む冒険譚は、基本的に大都市の冒険者ギルドの話しか出てこない。そこの美人受付嬢と恋に落ちるような話も少なくない。
大都市の冒険者ギルドは資金もあるから美人の受付嬢を雇うんだ。地方都市にそれを求めてもらっても困るね。
「ん? その顔は受付が可愛い女の子じゃなくてガッカリしてる顔だね。
うんうん。いつもの事だから分かってるよ。受付嬢が居るのは大都市のギルドだけだよ」
既にテンプレと化した説明を挟んで、業務を開始する。
「それで、今日は何の用だい? 依頼に来た感じでは無いし、見ない顔だから新規の登録かな!」
「はい! 昨日天職を授かったので、早速働こうと思い、登録に来ました!」
僕につられたのか、とても元気に答えてくれた。僕は天職が応援団なので元気よく喋ってしまうんだ。それに合わせてくれるなんて良い子じゃないか。思わず笑みが溢れる。
それを見て男の子は顔を赤くして俯いてしまった。あ、僕に笑われたと思っちゃったのかな。それは悪い事をしたな。さっさと話を進めよう。
「じゃあ、この紙に必要事項を書いてくれるかな!
あ、代筆は必要かい?」
聞くと代筆は必要ないそうだ。身なりも良くないし、てっきり文字の読み書きは出来ないと思ったんだけど、中々やるな。
この国の識字率はそんなに低く無いけど、冒険者になろうとここに来る子たちは、読み書きが出来ないことも多い。ある程度裕福な子は、更に学びの場に行ったり、軍に加入したりするからね。
たまに質問を挟みつつ、登録票を記入してもらう。
「では、これで登録をお願いします」
少し待つと、記入が終わったようだ。得意分野が書いてないけど、戦闘が得意そうにも見えないし、当面は雑用メインだろう。まあ、大丈夫かな。
「はいよ! ケイ君、15歳ね。登録料が小金貨1枚必要だけど払えるかな?」
新規登録一番の難関、それはギルドの登録料だ。ギルドとしても無料にしたいところではあるけど、ギルドカードを作成する魔道具も安くないし、カード自体も魔道具だ。どうしてもある程度の手出しは必要となる。
「はい。大丈夫です」
15歳で小金貨1枚は決して安い金額じゃ無い。この子も少し汚れた大銀貨を10枚で支払った。きっと頑張って貯めてきたんだろう。
こう言う子には頑張って欲しい。応援したくなっちゃうね。天職が応援団になってから、人を応援するのがとにかく楽しいんだよね。
お次はギルドカードの作成だ。週に数回しか使わない部屋なので、物置になっているのは許して欲しい。
ケイ君は僕の説明に従い装置に魔力を込める。
その瞬間、今までに無いくらいにカードが光り輝いた。ま、眩しいっ。
「うおっ、めっちゃ光ったね! よし、良いよ。手を離して!」
想定外の事が起こった時、本物のプロは冷静に対応するべき、そう先輩職員から教わってなければ眩し過ぎて取り乱していたところだ。
僕は冷静を装って説明を続ける。見た事のない模様が浮かび上がったけど、無事に登録できたみたいだ。
ギルドカードに表示されたマークについて説明したけど、何か最初から知ってる風だった。知り合いの冒険者にでも聞いた事があるのかな?
そしてケイ君は簡単なお使い依頼を1つ受けると、颯爽とギルドを後にしたのだった。今日の依頼の報告は明日の朝で構わないと言ってあるので、明日は訓練の前に来るだろう。
「本日の特記事項ですが、Dランク冒険者が1人、森で大怪我をして暫く休業するようです。
また、新規の登録者は1人です」
1日の仕事が終わり、順番に業務内容を報告する。
「Dランクは1番無茶をする頃だからなぁ。お前たちもDランクが依頼を受けに来た時には、無理をしないように助言してやってくれ。
それと新人か、数日ぶりだな。どうだ? 見所はありそうか?」
見所かぁ。ちょっとヒョロっとしてて近接向きでは無さそうだったんだよね。
「はい。身体能力は期待できそうにない感じでしたが、見た目はエルフのハーフ、もしくはクォーターで魔力が高そうな感じでした。
ギルドカードの作成時も、今までに無いくらいに輝いて、見た事のない模様が刻まれました」
「ほう・・・。それは少し気になるな。
そいつは明日の訓練に参加するのか?」
「はい。来ると言っていました」
「よし、明日の訓練は俺が自ら教官をやろう」
何と明日の訓練はこの人、ギルドマスターが直々に教官をするそうだ。
この人、厳しいからな・・・。少年よ、グッドラック。
──────────
お読みいただきありがとうございます。
ストック分はここまでですので、ここからは不定期更新となります。ご了承下さい。
今日もいつも通り仕事をしていた。そんな中、少し変わった子が登録に来たんだ。
朝のクソ忙しいラッシュが終わり、仕事がひと段落した頃、その男の子は現れた。
「いらっしゃい! 冒険者ギルドガメル支部へようこそ! 受付担当のチールだ」
僕がそう言うと、男の子は露骨に残念そうな顔をする。うん、いつもの事だ。
15歳になり、天職を授かって冒険者登録に来る子は結構いる。だけど、受付は美人の女の子がやっていると言う妄想を抱いている子が多いんだ。
子供が良く読む冒険譚は、基本的に大都市の冒険者ギルドの話しか出てこない。そこの美人受付嬢と恋に落ちるような話も少なくない。
大都市の冒険者ギルドは資金もあるから美人の受付嬢を雇うんだ。地方都市にそれを求めてもらっても困るね。
「ん? その顔は受付が可愛い女の子じゃなくてガッカリしてる顔だね。
うんうん。いつもの事だから分かってるよ。受付嬢が居るのは大都市のギルドだけだよ」
既にテンプレと化した説明を挟んで、業務を開始する。
「それで、今日は何の用だい? 依頼に来た感じでは無いし、見ない顔だから新規の登録かな!」
「はい! 昨日天職を授かったので、早速働こうと思い、登録に来ました!」
僕につられたのか、とても元気に答えてくれた。僕は天職が応援団なので元気よく喋ってしまうんだ。それに合わせてくれるなんて良い子じゃないか。思わず笑みが溢れる。
それを見て男の子は顔を赤くして俯いてしまった。あ、僕に笑われたと思っちゃったのかな。それは悪い事をしたな。さっさと話を進めよう。
「じゃあ、この紙に必要事項を書いてくれるかな!
あ、代筆は必要かい?」
聞くと代筆は必要ないそうだ。身なりも良くないし、てっきり文字の読み書きは出来ないと思ったんだけど、中々やるな。
この国の識字率はそんなに低く無いけど、冒険者になろうとここに来る子たちは、読み書きが出来ないことも多い。ある程度裕福な子は、更に学びの場に行ったり、軍に加入したりするからね。
たまに質問を挟みつつ、登録票を記入してもらう。
「では、これで登録をお願いします」
少し待つと、記入が終わったようだ。得意分野が書いてないけど、戦闘が得意そうにも見えないし、当面は雑用メインだろう。まあ、大丈夫かな。
「はいよ! ケイ君、15歳ね。登録料が小金貨1枚必要だけど払えるかな?」
新規登録一番の難関、それはギルドの登録料だ。ギルドとしても無料にしたいところではあるけど、ギルドカードを作成する魔道具も安くないし、カード自体も魔道具だ。どうしてもある程度の手出しは必要となる。
「はい。大丈夫です」
15歳で小金貨1枚は決して安い金額じゃ無い。この子も少し汚れた大銀貨を10枚で支払った。きっと頑張って貯めてきたんだろう。
こう言う子には頑張って欲しい。応援したくなっちゃうね。天職が応援団になってから、人を応援するのがとにかく楽しいんだよね。
お次はギルドカードの作成だ。週に数回しか使わない部屋なので、物置になっているのは許して欲しい。
ケイ君は僕の説明に従い装置に魔力を込める。
その瞬間、今までに無いくらいにカードが光り輝いた。ま、眩しいっ。
「うおっ、めっちゃ光ったね! よし、良いよ。手を離して!」
想定外の事が起こった時、本物のプロは冷静に対応するべき、そう先輩職員から教わってなければ眩し過ぎて取り乱していたところだ。
僕は冷静を装って説明を続ける。見た事のない模様が浮かび上がったけど、無事に登録できたみたいだ。
ギルドカードに表示されたマークについて説明したけど、何か最初から知ってる風だった。知り合いの冒険者にでも聞いた事があるのかな?
そしてケイ君は簡単なお使い依頼を1つ受けると、颯爽とギルドを後にしたのだった。今日の依頼の報告は明日の朝で構わないと言ってあるので、明日は訓練の前に来るだろう。
「本日の特記事項ですが、Dランク冒険者が1人、森で大怪我をして暫く休業するようです。
また、新規の登録者は1人です」
1日の仕事が終わり、順番に業務内容を報告する。
「Dランクは1番無茶をする頃だからなぁ。お前たちもDランクが依頼を受けに来た時には、無理をしないように助言してやってくれ。
それと新人か、数日ぶりだな。どうだ? 見所はありそうか?」
見所かぁ。ちょっとヒョロっとしてて近接向きでは無さそうだったんだよね。
「はい。身体能力は期待できそうにない感じでしたが、見た目はエルフのハーフ、もしくはクォーターで魔力が高そうな感じでした。
ギルドカードの作成時も、今までに無いくらいに輝いて、見た事のない模様が刻まれました」
「ほう・・・。それは少し気になるな。
そいつは明日の訓練に参加するのか?」
「はい。来ると言っていました」
「よし、明日の訓練は俺が自ら教官をやろう」
何と明日の訓練はこの人、ギルドマスターが直々に教官をするそうだ。
この人、厳しいからな・・・。少年よ、グッドラック。
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