神の魔力と紙防御 ~転生で神の魔力を貰ったけど、同時に貰ったのは紙の防御力になりました。これは祝福ですか? いいえ、呪いです〜

双華

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第1章 地方都市ガメル(仮

第5話 お願いされました

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 目の前に現れた人影は半透明ではあるが、髪は黒く短髪、そして耳が少し尖っている。身長は俺と同じくらいだ。と言うか、俺だ。ドッペルゲンガー?

 予想外の出来事にビクッってなり、その衝撃でダメージを受ける。一瞬で回復はするけどとても痛い。

『はじめまして・・・でいいのかな? 僕はケイ、その身体の元の持ち主です』

 頭の中に直接声が響く。まさかのこの身体の持ち主だった。神様の話だと消える寸前なんだっけ。

『そうです。僕はもう少しで消えてしまいます。
 貴方が転生してから、貴方の目を通して見させて頂いていました。
 貴方は僕の記憶も受け継いでいる。安心してサラさんとカミラを任せる事が出来ます』

 確かに、俺はこの少年ケイの記憶を引き継いでいる。自分の事と言うより、生まれてから今日の朝までを映画で一気に観させられたような感じなんだけどね。でも、考えている事は何となく想像できる。

『貴方に1つだけお願いがあるんです』

 うん、ケイ少年を殺した地上げ屋の事だよね。

『はい、そうです。奴らはずっとこの教会を、正確にはこの教会の土地を狙っていました。
 今後もずっと嫌がらせをしてくるでしょう。もしかしたら2人に危害を加えてくるかも知れません。いえ、間違いなく危害を加えてくるでしょう。
 ですが、貴方の力が、神の魔力があれば何とか出来るんじゃないかと思うんです』

 うん、紙の防御力もあるけどね。でも、俺もそれは考えていた。暫く引き籠るにしても、地上げ屋たちはどうにかしないといけない。

 もしかしたら、バックの組織も含めて何とかする必要があるのかも知れない。

『どうかお願いです。これで居なくなる僕に代わってこの教会を守って下さい』

 大丈夫だよ。言われなくても、俺はここを守る。

『神様の言う通り、僕の意識は朝には消えてしまうでしょう。ですが、僕の意思は貴方と共に生き続けます。どうか、幸せに生きてください』

 半分自分なんだけど、本当に良い子だ。このまま死なせるなんて可愛そうだ。何とかならないのかな。

《残念ですが、レベル3までの権限ではどうする事も出来ません》

 出来ないのか・・・。ん? では? 権限レベルが上がったら?

《現状、私にはレベル4以上の権限で何ができるか、正確には分かりません。ですが可能性は有るかも知れません》

 そうか、さすがに明日の朝までに権限レベルを上げる方法なんて分からないしな。このまま消えて行くのを黙って見ている事しか出来ないのか。

『良いんです。どうせ貴方が転生しなければ、僕はそのまま死んでいたのです。
 むしろ地上げ屋たちを何とかできる可能性が出てきたんです。僕が死んだ甲斐が有ったと言うものです』

 うわぁ、本当に良い子や。何とか、何とか出来ないのか・・・。

《説明が途中でしたが、森魔法の説明をしてもよろしいでしょうか?》

 何故今、このタイミングで!?

《森魔法の中に、眠れる森の美女と言う魔法があります。
 通常は魔力の消費が激しく、使える者は居ませんが、マスターなら問題なく使用可能でしょう。
 その魔法を使えば、確率で対象を仮死状態にする事ができます》

 止まらず説明を続けるのね。ん? 仮死状態に?

《はい。対象が受け入れれば100パーセントの確率で発動も可能です。
 魂が消滅する前に仮死状態にしてしまえば、ケイ少年の魂をそのまま維持する事が出来るのではないでしょうか?》

 なるほど、今すぐは無理だけどいつか権限レベルを上げる事が出来るかも知れない。

 その時までケイ少年には仮死状態になっていてもらうと言うことか。

《その通りです。ケイ少年さえ納得したら確実に実行可能です》

『そんな事ができるんですね。正直、諦めては居ましたが、やっぱり2人を置いて消えるのは辛いです。
 望みを繋ぐ事が出来るなら、仮死状態にして下さい!』

 よし、じゃあ善は急げだ。魂も消耗してるだろうから早く仮死状態にしよう。ケイ少年も良いかな?

『はい、よろしくお願いします。僕が仮死状態の間、サラさんとカミラをよろしく頼みます』

 ああ、任せてくれ。2人はきっと俺が守る。だからお前は安心して眠っていてくれ。

 あ・・・。

《どうされましたか?》

 カッコよく決めたけど、俺魔法の使い方が分からない。

《本来ならスキルを覚えてから修行が必要ですが、私がサポートしますのですぐにでも使用可能です。
 では、森魔法・眠れる森の美女を発動します》

 知識の泉がそう言うと、倦怠感が一気に俺を襲う。きっと魔力を大量に消費したんだろう。

『ありがとうございます。また会える日を楽しみに・・・しています・・・』

 そう言いながら目の前のケイ少年は消えて行ったのだった。
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