神の魔力と紙防御 ～転生で神の魔力を貰ったけど、同時に貰ったのは紙の防御力になりました。これは祝福ですか？ いいえ、呪いです〜

第１章 地方都市ガメル（仮

第１話 転生したようです

　俺の意識はゆっくりと覚醒する。

　ああ、知ってる天井だ。ボロボロの４畳半くらいの部屋にボロボロのベッド、そこに俺は寝ていた。

　そう、ここは教会の俺の部屋だ。

「よかった！　もう目を覚まさないかと思ったわ！」

　横を見ると、この教会で一緒に育った孤児のカミラが居る。カミラはブロンズの長髪で、無地で飾りっ気もない質素なワンピースを着ている。年齢は俺の１つ下だったはずだ。

　日本人の感覚ではハーフタレントの様な顔立ちであり、美人の部類である。

　けど、どうしてこんな状況なんだっけ？　どうも記憶が曖昧だ。

　あれ？　そもそも何でそんな事を知ってるんだ？　

「ん？　ここは誰？　僕はどこ？　ん？　僕じゃなくて俺？　ここは教会の俺の部屋？」

　混乱した俺がそう呟くと、カミラが駆け寄る。

「ちょ、ちょっとケイ！　どうしたの？　やっぱり打ち所とか悪かったの！？」

　そう言ってカミラは俺の両肩をガッチリキープして前後に揺さぶる。

───ボキッ！

　どこかから、そんな音が聞こえる。

　いや、どこかじゃない、俺の骨だ。一気に痛みがこみ上げてくる。

「いてぇぇぇ！！」

「うわっ！　うわっ！　え？　ボキッ？　ごめん！？」

　叫ぶ俺、テンパるカミラ。それと同時に俺の肩が光に包まれる。

《自動回復が発動しました》

　そして頭の中に響く無機質なメッセージ。引いていく痛み。

　けど、幸い？　この痛みのお陰で思い出してきた。

　そうだ。俺は小島圭一。この世界に転生したんだ。


　とりあえずカミラを宥めて現状を整理しよう。まずはステータスの確認だ。

─────────
　名前：ケイ
　年齢：１５
　天職：なし

　レベル：８
　生命力：７６／７６
　体力：９０／９０
　魔力：３２７６７（固定）
　攻撃力：６２
　防御力：－３２７６８（固定）
　速さ：７４

　スキル（アクティブ）：無限収納、鑑定

　スキル（パッシブ）：言語理解、自動回復

　祝福：神の魔力、神の防御力、防御力＋１
─────────

　うん。やっぱり夢じゃなかったみたいだ。

　自動回復は交渉の結果、転生特典と一緒に付けて貰った。

　魔力がある限り、ダメージを負っても自動で回復するのだ。しかし今ので分かったが、回復はするけど普通に痛みはあった。普通に死ねる。

　そして今、俺は日本人の小島圭一であると共に、この世界の少年ケイなのだ。

　神様は言っていた。たまたま運悪く死んでしまった青年の体を君に使ってもらうよって。

　そんな都合の良い死者が早々出るはずもなく、数時間待たされたけどね。

　数時間って早い気もするけど、時間の速度が違うからこっちの世界ではもっと時間が経ってるんだろう。

　名前が似てるのはたまたまだろう。たまたまだよね？

　元々のケイ少年は魂は無くなっているけど、体にも記憶は残っていらしく、どんな生活を送って来たのかは何となく分かる。

　神様のところではレベル１だったけど、一応ケイ少年はレベルが上がっていたらしく８になっている。

　確か平均的な大人でレベル１０って話だったから、１５歳だと思えば普通なのかな？

　そして、ケイ少年の記憶によるとこの教会で孤児として育ったようだ。スラムで暮らす子供達も多い中、ラッキーな部類なんだろう。

　そして、今日は天職が授けられる日だった。

　この世界では１５歳を過ぎ、教会で祈ると天職が授けられる。

　ケイ少年は残念ながら天職を得る前に死んでしまったわけだけど、その理由は地上げ屋によるものだ。

　神から明確に天職が授けられる世界と言う事もあり、街の中に教会は結構な数が存在しているが、ここは貧乏な教会で吹けば飛ぶようなところだ。

　しかし、立地条件だけはそこそこ良く、いつも裏社会の怪しい兄ちゃん達がここを売れとか、出て行けとか嫌がらせに来ている。

　今日も朝から教会の前で叫んでる兄ちゃん達に、カミラが喰ってかかったんだ。

　そして、殴られそうになったところでケイ少年が間に入り、吹き飛ばされた。

　その時の当たりどころが悪かったのかケイ少年は死んでしまった。そしてそのまま俺がそこに入った。

　怪我をしてたかも知れないが、気を失ってる間に自動回復が発動したんだろう。

　地上げ屋も今日は諦めて帰ったみたいだ。まあ、あいつらどうせ明日も来るんだけど。

　カミラには何か申し訳ないが、ケイ少年の記憶は俺の中で生きている。それで許してもらおう。