神の魔力と紙防御 ~転生で神の魔力を貰ったけど、同時に貰ったのは紙の防御力になりました。これは祝福ですか? いいえ、呪いです〜

双華

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プロローグ

プロローグ④

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 俺はステータスを二度見、三度見する。

─────────
 名前:なし
 天職:なし

 レベル:1
 生命力:10
 体力:10
 魔力:32767(固定)
 攻撃力:10
 防御力:-32768(固定)
 速さ:10

 スキル:なし

 祝福:神の魔力、神の防御力、防御力+1
─────────

 うん、何回見てもマイナスだ。これ。

「あー。ごめんね。何かバグがあったみたいだ」

 神様は申し訳なさそうに言う。

「えっと、貰った祝福を辞退する事は・・・」

「うん、出来ないね。祝福は魂に刻まれるんだ。無理に引き剥がすと、君が君でなくなる可能性もある」

 何てこった! 折角2連続で超激レアを引いたのに、なんなのこの大どんでん返し!

「けど、何でこんな事になってるんだろー?」

 神様は不思議がってるけど、俺はその答えを持っている。

「えっと、推定ですが良いですか?」

「え? 分かるの?」

「ええ、多分ですが。
 まず二進数で32767ってどう表現するか分かりますか?」

「もちろんだよ。1が15個だ」

 そう、2バイト・・・つまり16ビットでマイナス有りの数字を表現する場合、15ビットを使用する。なので、最大の数字は15ビット全てが1である、32767なのだ。

「では、そこに1を足したら?」

「1繰り上がって、残りは全て0だね」

「はい、その通りです。それでは問題です。
 1ビット目はプラスかマイナスを表現しています。0がプラス、1がマイナスです。
 その1ビット目が繰り上がり計算で1になりました。以降は全てゼロ。つまり、マイナスで一番小さい数字と言う事です。
 いくらになるでしょうか?」

「・・・マイナス、32768だね」

「そう、正解です。さて、上限の数字を超えた時のエラー処理って入ってますか?」

「「・・・・・・」」

 暫く沈黙が流れる。

「いや、通常はエラー処理が入ってるんだけどね?
 祝福は強制処理なんだよ・・・。
 やっちゃったー!? ごめんよー!!」

 沈黙の後、神様はキレイなジャンピング土下座で謝罪してきたのだった。


「それで、どうにもならないんでしょうか?」

 とりあえず頭を上げてもらって、今後の事を話し合う事にする。

「うーん、直ぐには無理かなー。かなり複雑に作り込んじゃってて、直すとしても最低でもこちらの感覚で1ヵ月はかかるよ」

 お、1ヶ月で直せるならそんなに悲観する事もないのか? ん? 

「こちらの感覚って何ですか?」

「あれ? 言ってなかったかな?
 ボクの作った世界はまだまだ若いから、時間を100倍のスピードで進めてるんだよ」
 
「こっちで1ヶ月はあっちで100ヶ月って事ですかね?」

「う、うん、そうだね。8年とちょっと。頑張れるかな?」

 無理無理、無理でしょう!

「因みに、防御力がマイナスだとどうなるんですか?」

「防御力がマイナスの人は見た事ないからねー、どうなるんだろう?」

 お前が創った世界だろう! と叫びたくなるのをグッと抑える。

「では、相殺するような祝福を更に貰うと言うのは?」

「さすがに3つの祝福で、君の魂の容量はいっぱいだよー。
 これ以上は破裂しちゃう」

 くっ、万事窮すか・・・っ!

「えっと・・・、天職と装備を奮発するから許して? 来月には世界の査定が待ってるんだ。ここで世界のバグとか発覚したら昇級が遠のいちゃうよ」

 そう言いながら見た目がキラキラな装備を取り出す。

 神様の昇級とかどうでも良いし! けど、待てよ? 奮発してもらった装備で防御力を底上げしたら・・・。


 ダメでした。

 神レベルの装備一式を装備したけど、防御力+5000。莫大なマイナスは消えないままだった。

 そうだ! 逆転の発想だ。せめて+1が消せたら。

「防御力が減る呪いのアイテムとか無いんですか?」

「んー、あるにはあるんだけど・・・。
 腐っても祝福だからねー。呪いを打ち消しちゃうかな」

「終わった。俺の次の人生、始まる前に終わった」

 絵に描いたように崩れ落ちる俺。

「えっと、その装備はプレゼントするし、特殊効果の付いた魔道具もあげよう。
 天職も世界を作った時に用意はしたけど、まだ誰もなった事ないようなレアなやつをあげるよ。
 だから元気を出して? バグは少しでも早く修正できるように頑張るからさ?」

 何かこれでもかってくらいに神様に同情された。

 こうなったら、この状態でも生きていけるような天職を選ぶしかない!


 こうして、不安しかない俺の異世界生活は幕を開けるのだった。


 ───プロローグ完
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