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最終章

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帝都にあるクガヤの実家での夜。

クガヤはサタヴァとヤトルの二人に、とある計画を持ちかけた。

その計画とは、仙女の泉がある森を抜けたところに離れ小島がある、そこで財宝を探してみないか、と言うことだった。

鍛冶のギルド関係者から聞いた話では、以前はそこの住民と取引をしていた者達がいたらしいということだった。

小島の住民が小舟を漕いで渡って来て、貴金属のたぐいと食料との交換を求めていた時期があり、そこには財宝が大量にあるのではないかという噂となったらしい。

住民が絶えたらしく、もう取引自体しなくなってから長い。
ギルドの中でも、今はもうごくわずかな者しか知らない話になってしまったという。
宝の噂を確かめようにも、禁忌とされている水辺を渡らないとその場所へは行けない。

恐れず行こうとした者たちも、途中で恐ろしげな幻影に悩まされ、呪われたという話もあった。
不吉な水辺を渡るようなことをしているから、住民も死に絶えたんだ、なんてことを言う者もいる。

そんなこんなで、今では噂を知っている者も、危険を犯してまであるかどうかわからない宝を探しに行きたがらないらしかった。

クガヤは言うのだった。
「離れ小島までの道筋を知っている俺と、術にかからないサタヴァがいれば、宝を探しに行っても無事に帰ってこれる可能性が高いだろ。

宝が見つかったとして、量が多い場合だと運ぶのも大変だ。ヤトル、運ぶのを手伝わないか。
もし財宝が見つかったら、三人で山分けしようぜ!

俺は宝があれば商売の元手にするつもりだ。お前らだって、金で苦労することがなくなるかもしれないぞ!
ま、本当に財宝があれば、なんだけどな。

どうだ?この話に一山のらないか?
準備がいるから、すぐ行こうというわけじゃないけど。」

ただ、ヤトルはその誘いを断った。
「すみませんが僕はいいです。そろそろ帰宅して家族を安心させたいです。畑仕事に手もいるし。
宝が手に入るとしても、うちの村では財産は共有してるので、全部村のものになります。
それはいいのですが、宝のせいで税金をぐっと上げられるかもしれないです。その上で宝だって取り上げられるかもしれません。かえって皆が困りそうなので、やめときます。」

一方、サタヴァはクガヤからその場所の話を聞いて思うところがあった。どうも、夢に何度かあらわれた、あの兜の少女がいた場所に、地形が合致しているように思える。

サタヴァは、ネックレスを少女に届けに行くことを諦めておらず、夢で見た地形の場所を探し回る予定だったので、似た地形のところのように思えるため行ってみたいと話した。

「よし、それじゃサタヴァと俺の二人で向かうとするか。
ただ、先程も話したけど、準備があるので、すぐにとはいかない。
月が新しくなるころに、帝都の実家であるここに訪ねてきてくれないか。」

クガヤがそう言ったので、サタヴァは自分も準備してから来るようにすると返し、お互い落ち合うことを約束した。

次の日、サタヴァとヤトルは帰宅するため出立した。
ヤトルとはもしかして最後の別れになるかもしれず、三人は寂しい思いをしながら別れの挨拶をのべあった。

ヤトルはその後数日かけて、故郷の土地までやっとこさたどりついた。
次第に見慣れた土地の様子となり、自分の暮らす家が見えてきた。
…旅路が終わった。無事ここまで帰ってこれたんだ。ヤトルは感慨無量だった。

丈高くなった作物の向こうから、ほっそりした若い女の子が自分を見て駆け寄ってくる。子供二人産んでるようにはとてもみえないのが自慢の、ヤトルの女房だ。

「ヤトル!今日帰って来たのね!ずっと無事を祈ってた。」

ヤトルは、ただいま、と言いながら抱き寄せた。

背が伸びた二人の子供たちが、おかえりお父さん!と転げるように走ってくる。

ここが自分の場所だ、帰ってこれて良かった。
風になびく作物をみながらヤトルはそう思う。
ここでいつまでも家族と暮らし、生きていくんだ。

青々とした作物の隙間から、晴れわたった空が見える。
同じ空の下の地の果てを、薬草部隊の三名でかけずり回ったことを思いおこす。

誰か僕の経験した不思議な話を信じてくれるだろうか。

子供に話しても、パパのホラ吹き!と口を膨らませて終わりになりそうだな。

そしてその予感は当たることになるのであった。
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