不要とされる寄せ集め部隊、正規軍の背後で人知れず行軍する〜茫漠と彷徨えるなにか〜

サカキ カリイ

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第二章

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荷造りをしたのち、一行は住まいを出て仙女の泉へと向かった。

出かける時、一応クガヤが出かけることについて手紙を書いたが、もし会えるようなら二人に挨拶をしたかったので、一同は、この時間にいると思われる仙女の泉へ向かったのだった。

タイミングよく二人はまだそこにおり、三人は渦のあたりに向かうと話をした。

「…自分もおそらく渦の近くには行くようになるだろう」ナギは語りだした。

「自分の乗ってきた乗り物に、使用する機器などが置いてあるため、いずれにせよそこへ行くことになる。

ただ、乗ることがあるかもしれない。その場合、近くには人がいないほうがいい。

その折には、どうにかしてこちらが乗ることを知らせたいものだ。」

サタヴァは部隊で使わなかった狼煙があることを思い出し、良ければこれを使ってくれと手渡し、使用方法を説明した。

「実を言うと似たようなものは持ってはいるんだ」ナギは言う。
「しかし、見慣れた狼煙の方が、あなた方にとってはわかりやすいだろう。」

「しかし二回目に乗る時とかはどうするんだ?そちらの狼煙を使うのかな?」クガヤが聞く。

「二回目の飛行が可能かどうかはわからない。二回目のことはそんなに考えなくてもいい。

まあしかし、最初の狼煙をあげたとしても、見晴らしがえらく悪いので、あんまり目立たない可能性がある。

一応乗る場合には使うつもりではあるが、失礼ながらさほど効果がないかもしれない。

まあ、こちらでも飛び立つとき必ず周囲に人はいないか確認する。

そちらでも、渦の周辺で何か変わったことがあれば、狼煙があがっていてもいなくても、
済まないが自分達で避けるようにしてほしい。」

三人は了解した。

「ところで、渦のあたりから来られたんですよね。渦ってどんな感じなんですかね?」ヤトルは聞いた。

「渦のあたりというか、この人の乗り物、渦から出てきたのよね」泉の仙女が突然口を挟んだ。「その時、見てたのよ。振動が酷い時だったから。」

「渦は、そうだな、霧が晴れて見えることもあるが、このあたりからだと、まず見えづらい状態だな。

渦というのは、確かに渦の状態ではあるようなんだが、別に想像するほど速く回転しているわけではないんだ。

白い巨大な蒸気のようなものが、ゆっくりと回転しながら地から天へ登って行く感じかな。

実を言うと、ゆっくりすぎて、ほとんど止まっているようにしか見えない。

時間がたってよく見ると、見覚えのある模様が上の方にいってるので、移動しているのはわかる、という程度だ。」

ナギはそう言いながらも、渦は自分のいた世界と繋がっている可能性がある、自分がそこから来たのを見た者がいるからだ、と認識を新たにした。

だが彼は、この時点では、真剣にその乗り物で飛行することを検討しているわけではなかった。

何かで実験的に使用することがあるかもしれないと漠然と思っているだけだった。

「ところで、二人はどうやって渦の近くへ行くんだ?魔獣が出るかもわからないんだぞ?」サタヴァが聞く。

「魔獣が通れないような、砦の連中は知らない細い道があるんだ。そこを通れば渦の近くに行ける。

わしはよくそこを通って渦のあたりなんかを確認してるぞ。この前見に行ったのもそこを通ったんだ。」とおやじさんは言う。

「えっと自分たちも一緒にそこを通らせてもらうことは、できないですか?」ヤトルが聞くと、おやじさんはこう話した。
「申し訳ないが、一人か、多くても二人くらいの少人数しか同時に通れないんだ。

案内がないとわかりづらいので、このわしと、あとはナギだな、もう満員となるんだ。

道自体、きちんと作られたものではないし、地盤もかなりゆるい。
こんな人数で通ると、おそらく重みで崩れてしまうだろう。

かと言って、人数を二組へ分けて時間をおいて通ると、案内が無い組はどこを通っていくのかわからなくなる。
すまないが別の道を選んでほしい。」

サタヴァも言う。「こちらは、渦のそばまで行くのが目的ではないんだ。

渦のそばにあるだろうといわれている、ネックレスを探そうという話なので、視点は狭い道を行くより、広い道を行くほうが探しものを見つけやすい。別々に向かおう。」
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