不要とされる寄せ集め部隊、正規軍の背後で人知れず行軍する〜茫漠と彷徨えるなにか〜

サカキ カリイ

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第二章

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「サタヴァさんは渦の近くへ行くんですよね…」ヤトルが言う。

薬草部隊三人は、鍛冶屋のおやじさんの住まいにいる。

おやじさんとナギは仙女の泉へ日参し、話とやらを聞くことにしたらしく、今日ももうでかけている。

三人はナギの件で何かできることはないかと言ったが、特に何もしなくていい、申し訳ないからと本人から言われてしまった。

そうすると、ここでやることもないため、サタヴァは、二人はもう故郷へ帰ったらどうかと言い出しているところだった。

「そのことなんだけど、俺は渦までサタヴァの後からついていこうかな…って思ってる」クガヤは言う。

「だって、実害のない幻影は無視したらいいにしても、魔獣に帰り道襲われるのは嫌なんだ。

お前と一緒の方が安心だよ。

お前が渦近くでネックレスをとって夢の女の子に渡したら、魔獣、今ほどはでなくなるんだろ?

そうなってから故郷に帰る方が道中安全だと思う。」

「僕もそのつもりです。

まあ、魔獣が出るとこだと言われている渦の近くまで行くのは、ちょっと怖いんですけど…」

口では自分達のためのように言っているのだが、その実、二人に心配されているのを感じるサタヴァだった。

自分にはその心配、不要なんだが…

「…いつまでかかる旅になるかはっきりわからない。

魔獣が出てくると、戦いになるだろうし、幻影や亡霊に惑わされるだろうし。

幻影の軍勢に襲われるという話もあるらしいんだ。
ただ、切りつけられても、傷は負わないらしいが。

…そんな感じで、必ずしも全面的に安全とは言えない旅になるんだ。」

サタヴァは話しながら困っていた。

自分だけで行動していれば、酷く危険な目にあった場合でも、いざとなれば姿を変化させる術を使うと、

どんな敵があらわれてもそれほど不安はない。

もちろん、今の人の姿の状態でもかなり平気だが、残り二人はそうではなく、

二人を守ることになると、術を使わねば守りきれなくなる可能性がある。

体が変化する術を見られたくはない。

まあ、姿を変化させる術以外の術もつかえたりするのだが、非常に地味な術であるため、

それらは考えにものぼらないサタヴァであった。

…二人は帰そう。

「みんなあまり意識してないと思うんだけど、俺って実は隊長だったりするんだ。

隊長命令で薬草部隊は解散とする。
各自は指定の窓口にて報酬を受け取って帰郷すべし。

帰郷に際しては、できるだけ人と共に行動し、安全なルートと思われる道を選び帰ること。

それなら無事帰れる確率が高まる。

…では解散!」

しかし残り二人は動こうとしなかった。

「…か、解散だ…

渦の近くについてくるなんて危ないから、早く家に帰るように!」

「うん、解散な。確かに承りましたとも。

そしてその後、俺がサタヴァのあとをついていくのは、俺の自由な。」クガヤがいう。

「また危ないからと言って、また僕らを置いて、一人だけ行動するんですか。」ヤトルが非難するような目を向ける。

それを聞いてサタヴァは胸をつかれたようになった。

二人が亡くなったと思っていた時の心情が一瞬、呼び起こされた。

確かに、事象が落ち着くまでは、この二人は自分と一緒に行動したほうが安全かもしれなかった。

魔獣退治に慣れている本隊に、守ってくれと頼ることもできない。

一度報酬をもらい兵役を終了させる手続きを終えてからでないと、

兵士が足りないからそのまま魔獣狩りなどの戦いに参加しろと言われそうな情勢に加え、

なんだか味方殺しのようなことまで横行している状況なのだった。

近寄らぬに越したことはない。

「まあ、お前がしょげたりぐったりきた時には、

俺が右腕を、ヤトルが左腕を支えて行くからさ。

いるだろ?俺ら。」

クガヤは言い、ヤトルもうなづいた。

サタヴァは、その言葉を聞き、二人の前で姿を変えることなく人として接して貰い続けたいという思いをますます持つようになった。

だが、そのことと、二人の安全性の確保とを、両立させないと…!

サタヴァはふとある方法が頭に閃いた。

…この方法だと、うまく行く可能性があるかもしれない!

そして、その思いつきが浮かんでからは、二人に帰るように言わなくなっていった。
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