不要とされる寄せ集め部隊、正規軍の背後で人知れず行軍する〜茫漠と彷徨えるなにか〜

サカキ カリイ

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第一章

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クガヤはシャプナと話がはずんでいた。シャプナはここは自分の家でないから宿泊は好きにしたらいいと言った。

二人は笑顔で、時折クガヤはケラケラと、シャプナはウフフと笑いながら自分たちの背景や他愛無い話を話していた。

シャプナちゃんと仲良くなれて本当に嬉しかった。このあたりに来て良かった、とクガヤは心からそう思った。

「それじゃ、シャプナちゃんのお姉さんは帝都で働いているんだね。」

「そう、お姉さんすごい。」シャプナは羨ましそうに言った。「お姉さんシャプナできないことできる。すごく力が強い。話しかたも上手。頭もいい。普通の人と変わらない。まず見抜かれない。」

クガヤは思った。

そのお姉さんは、帝都で働き口を得られるくらい頭がいいんだ。山の民なのに頑張ったんかなあ。

見抜かれない~だなんて、山の民だっていうことがばれないってことなんかな。

力強いって筋力かなあ。

それにしても、お姉さんが働いてるんなら、食べることで苦労してるシャプナちゃんを助けてあげればいいのに。

最後に思ったことを口に出すと、シャプナは首を振った。

「シャプナ、もう大人ね。小さい子供じゃない。大人は自分の面倒、自分でみる。

シャプナのお姉さん、アーシイアがシャプナの面倒みるのは、大人同士だからやらない。」

…シャプナちゃん、もう大人なんだ。見た目細っこいから、もう少し年少かと思ってた。

クガヤはふと、かつてのガールフレンドが、より条件のよい結婚相手を選んで離れて行ったことを思い出した。

自分よりいい養い手をその娘は求めたのだった。

「自分の面倒は自分でみる、か。シャプナちゃんは偉いんだなあ。」

「偉くない。別にふつう。それあたりまえ。」シャプナは言った。
「シャプナ、そんなに力強くない。あんまり力で戦えないけどその代わり狩りはとくい。

でもほんとはお姉さんみたいに、アーシイアみたいに、力が強いのがいい。」

シャプナは続けた。

「長生きしたら、力強くなる。

言い方変えると、力強いものが長生きする。

アーシイア、力が生まれつき強い。それシャプナ羨ましい。

結婚して子供産むと力弱くなる。
子供に食べさせるの優先。子供守りながら自分も食べるの、大変。
もう力強くするのむづかしい。

だから力強くありたければ結婚しない。
アーシイア結婚してない。シャプナも結婚するの、やめようかと思ってる。」

「そっか、シャプナちゃんは仕事に生きるタイプの女性なんだ」クガヤは言った。同時にガクッと落ち込んだ。

クガヤは、ヤトルが奥さんと子供2人がいて、仲良い家庭を作っているのが実は酷く羨ましかった。

サタヴァが何も努力してないのに女性に囲まれるのも羨ましかったが、それとは実は比べ物にならないくらいヤトルが羨ましかった。

自分もいつかはそんな幸せになれる相手を見つけて子供がいる家庭を作りたかった。

会ったばかりのシャプナが結婚せず子供を持たないことを決めていると聞いて、付き合いもしてないのに、こんなに落ち込むのは変な話だとさすがにクガヤは思った。

認めたくはないが、気に入った感じの女の子と少し仲良くなると、すぐ付き合うだとか、結婚だとか考えてしまうようだった。

クガヤは言った。「その、人生色々だもんな。自分の好きなことやらないとな。

まあ、俺は子供はほしいたちだけど、付き合った相手の女の子がどうしても結婚するのが嫌とか、子供ほしくないって言ったら、諦めるかもな。その大切な娘の希望だからさ。そのまま二人で暮らすのもいいかもな。」

シャプナは飛び上がった。

「クガヤ、それやめたほうがいい。子供ほしい、気持ち大切。子供ほしい女の子探して結婚した方がいい。」

クガヤは言った。「いや、大切な相手の望みを叶えようとしたら結果そうなるってことさ。」

「それだとクガヤの望み叶わない。クガヤ幸せならない。クガヤ幸せでないのシャプナ悲しい。」

クガヤはシャプナの目を見ながら言った。
「シャプナちゃん、ありがとう…俺嬉しいよ。こんなに嬉しかったの、初めてかもしれない。」クガヤは唾を飲み込んだ。
「シャプナちゃん、もし、俺がシャプナちゃんとずっと一緒にいたいと言ったらどうする?結婚とか子供とかの話なしに」

クガヤは付き合おうとも言わないうちに、一気に距離をつめて話をしてしまった。

自分の幸せを祈って貰ったことと、その言葉が本心からのものであることがわかったからだった。
 
賭けに出たわけではなく、考える前に言葉が出てしまったのだ。
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