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第一章

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「ところでサタヴァの服だけど、そういう素材見たことないんだけど。どこで手に入れたんだ?」聞いたのはクガヤだった。

一同は先ほど集落を見つけていったものの、よそ者にけんもほろろな態度のところで、宿を頼むも追い払われてしまい、今夜は野宿することになったところだった。

もちろん納品窓口などありそうもなく、薬草の納品やら地図の行先の確認は、次の町か村を見つけた時にするほかなかった。

今はサタヴァがつけた火を囲んで座しており、サタヴァが野外で寝るときはマントを体に巻いて休むと話をしたので、服の話になったのだ。

クガヤは家が商家で、衣類の扱いは少ないが、商売柄、基本的な生地の知識は持っていたようで、サタヴァの服やマントの素材と色を不思議がっていた。

「まさか採った薬草で作りましたとかじゃないよなあ。」

「そのまさかだ。このマントも、服も、全て薬草の繊維の部分を編んで作ってある。

生地が見慣れないものに見えたのは、染色では普通使われてない薬草で染めたせいだ」

「なんで薬草で編んだり染めたりしてるんですか?」とヤトル。

「生地については買うと金がかかるから、あるもので編んで作った。草木の丈夫な繊維でだ。

染めについては、野宿とかで寝たとき、困るのは虫なんだが、虫よけの効果がある草木で染めてあるんだ。」

「虫よけ!」

「この辺、虫多いのか?

野宿やっぱやだなあ!風呂も入れないし。」

「この地域あたりは湿地ではないから、虫はまだそんなにいない方だがな。」

しかし風呂の話になったときに、サタヴァが野宿が多くあんまり風呂に入らない生活をしていることを聞いて、
二人は少しサタヴァから距離をおいて座り直した。

「いや、風呂は入りましょうよ。なんで入らないんですかねえ」

「外だと、体を洗うのが川とか沼とかになるだろう。
妙な生物、あるいは寄生虫がいるかもしれんから長く水につかれないんだ。」

草を束にしたもので肌をこすりながら、冷たい水で洗うらしい。

「やっぱ野宿が長い生活とか、やだなあ…」ヤトルがボソっと言う。
「仕事すませて早く家に帰りたいなあ…」

「いやー風呂がそうだと、服の洗濯とかはどうなるんだ?」とクガヤ。

「洗濯とかあんまりしない。よほど汚れたら別だが。」

二人はますます離れて座る。

「ええと、その、洗濯はしましょうよ、その、虫とかついたら洗い落とさないといけないですよね」

ヤトルがなんだか必死な顔で話す。

「いや、下手に洗うと、防虫効果も洗い流してしまうから洗わない。

まあ湯の用意ができるときは、防虫の薬草を入れて、この服やマントなんかを一緒に入れて煮だすんだ。

それが洗濯と言えば洗濯だな。

煮るから虫がいても死ぬ。たぶん。

色も重なって汚れの上からつくから、いわゆる洗うというのとはちょっと違うかもしれないが。」

「それを世間では洗濯とは言わん!」クガヤが怒り出した。

「それで染色の感じが妙だったのか!変にどす黒いと思った!」

「でもでも、しっかり沸騰させている湯を使ったんなら、洗濯もできていることになりますよね!」ヤトルはまだ必死な面持ちで話す。「よく沸かした湯なら消毒にもなりますから!」

「いや、湯の温度はそこまであげない。ぬるま湯だ。
使っている材料の関係で、あまり温度が高いと、防虫効果が消えてしまうからな。」

「それを世間では消毒とは言わん!」クガヤがまた叫んだ。

「ちょ、てめえ、頼むから、も少し離れててくれ!」

「クガヤ、何をそんなに怒ってるんだ?」

サタヴァはじりじりクガヤに近づこうとしたが、クガヤはつめた距離分だけ離れ、鍋で自分の体を守った。

「こっちくんな汚い!」

「…なんだとお!」サタヴァはマントを脱いで手に取って広げて見せた。

「これのどこが汚いっていうんだっ!」マントをはためかせながらじりじりクガヤの方に迫る。

「ほらほらよ~く見てみろ!」

クガヤは「くっ!来んなって言ってるだろお!」マントを避けてその辺を走り出してしまった。

「二人とももうやめてくださいよ!こんな変なことで迷子になるじゃないですか!探すの大変だから!」ヤトルも叫んだ。

「クガヤは人のことを汚いとか失礼なこと言わない!こっちに戻って!早く!

サタヴァさんも意地にならないでください!クガヤをマント持って追わないでください!」

ヤトルが必死に言ったのでこれ以上はまずいと思った二人は、戻ってきて座った。

まだ距離は置いたままだが。
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