8 / 89
第一章
8
しおりを挟む
一方、三名は、配布できる備品を渡すためと、別の部屋に誘導されて来ていた。
「ここで鎧とかもらえるんですかね~ちょっとくらい格好良くしたいですね。
なんかさっき笑われてたみたいなんで…」
話しているのは農具を持った青年だ。
「いや鎧とか重いだろ。ずっと歩き回るんだぞ?重さだけでへばる。
ああいうたぐいの格好で長距離行くのは、馬がいないと厳しい。
疲れたときに、魔獣どころか、普通の獣が向かってきても自分の重みで避けられないぞ。」
黒髪の青年が冷静に助言する。
「いや魔獣とか魔王軍とかカンベン!そんなのいるところは避けて行きますよって!」
「まあそうだな。がっつり戦う装備とか皆持ってないし。」
「馬も備品としてかりられないんですかねえ、歩くの楽じゃないですか。」鍋を脇に抱えた若者が言う。
「馬に乗って薬草とか普通採らないぞ。薬草採取は歩きだ。視点を低くしてないと草木の見分けがつきにくいものは結構あるんだ。
それに馬だと草を見つけて止まれと合図を出しても、間に合わず踏み潰すかもしれんだろう?貴重な薬草だったら困るだろう。
だいたい皆は馬に乗れるのか?」
「畑を耕す馬がいたりしましたけど、朝から晩まで人間と一緒に働かせていたので、乗ったりはしませんでしたね。
余分な重労働させることになるし、はやく潰れても困るし。」
「鎧つけて馬に乗るとかでも、距離行くと重さで馬が疲れて潰れてしまうかもわからんな。」
一同は話しながら、なにか装備品を配布してもらえるのかと期待して待っていたが、
担当者から、薬草採取には装備品は渡す必要はないから配らないと言われガックリしてしまった。
「それに装備品はおふれにもあったけど持参が基本だからな。配布なんか期待するなって。
あ、そうそう、地図は渡しておかないとな。次の納品場所がわからないからな。」
「次の納品場所とは?」
「町や村なんかの窓口に、そっちから薬草を集めたものを、納品するんだろ?
確かそういう話だったと思うから、次に行きやすそうな場所を、地図に赤丸で目印つけといてやるよ。
隊は一つは地図を持っていくからな。余り物だが一つ残ってて良かった。そら、受け取れ。
ここは明日戦地へ向けて出発するから無人になるんだよ。だからここに薬草とか納品しに来ても困るぞ。
地図に赤丸で書いといた村に持ってってくれよな。」
地図だと言って渡されたのは、一度濡れて乾いたものらしく、文字や細かい図柄が溶けてにじんでいる場所があり、よくわからないものだった。
実は使えないため廃棄予定のものだった。
担当者がこれを渡したのは、本隊が行く戦地の場所は濡れてにじんでいるところだったが、薬草採取の向かう場所ではないし、ここから薬草を納品する村へ行くだけに使うなら、にじんでいても用は足りると思ったからである。
また地図はかなりの広域地図であった。帝国の支配領域(自称)から、その外の周りの地域まで一枚に描いてあるためである。
支配地域(自称)は、帝国側の人間が足を踏み入れることができている、比較的安全な部分はもれなく記載されていた。
そこに住んでいる者の主張や都合は構わず帝国領土であるとしているのである。
さらに、支配地域(自称)はまだともかく、その周辺の部分の正確さは全く不明であった。
おそらく帝国から実際に行った者はほとんどおらず、伝聞をもとに適当に描かれていると思われる。
そういった事情を渡す側はわかっていたため、にじんでいる地図でも問題なかろうと渡しているのである。つまるところあんまり使えない地図であるのだ。
その地図と共に、少しのお金や、干し肉、堅く焼かれた携行食などの食料を数日分貰えた。
革袋の水筒を人数分3つもらったので、兵舎の外にある井戸で水をくんでゆくこともできるだろう。
「ここで鎧とかもらえるんですかね~ちょっとくらい格好良くしたいですね。
なんかさっき笑われてたみたいなんで…」
話しているのは農具を持った青年だ。
「いや鎧とか重いだろ。ずっと歩き回るんだぞ?重さだけでへばる。
ああいうたぐいの格好で長距離行くのは、馬がいないと厳しい。
疲れたときに、魔獣どころか、普通の獣が向かってきても自分の重みで避けられないぞ。」
黒髪の青年が冷静に助言する。
「いや魔獣とか魔王軍とかカンベン!そんなのいるところは避けて行きますよって!」
「まあそうだな。がっつり戦う装備とか皆持ってないし。」
「馬も備品としてかりられないんですかねえ、歩くの楽じゃないですか。」鍋を脇に抱えた若者が言う。
「馬に乗って薬草とか普通採らないぞ。薬草採取は歩きだ。視点を低くしてないと草木の見分けがつきにくいものは結構あるんだ。
それに馬だと草を見つけて止まれと合図を出しても、間に合わず踏み潰すかもしれんだろう?貴重な薬草だったら困るだろう。
だいたい皆は馬に乗れるのか?」
「畑を耕す馬がいたりしましたけど、朝から晩まで人間と一緒に働かせていたので、乗ったりはしませんでしたね。
余分な重労働させることになるし、はやく潰れても困るし。」
「鎧つけて馬に乗るとかでも、距離行くと重さで馬が疲れて潰れてしまうかもわからんな。」
一同は話しながら、なにか装備品を配布してもらえるのかと期待して待っていたが、
担当者から、薬草採取には装備品は渡す必要はないから配らないと言われガックリしてしまった。
「それに装備品はおふれにもあったけど持参が基本だからな。配布なんか期待するなって。
あ、そうそう、地図は渡しておかないとな。次の納品場所がわからないからな。」
「次の納品場所とは?」
「町や村なんかの窓口に、そっちから薬草を集めたものを、納品するんだろ?
確かそういう話だったと思うから、次に行きやすそうな場所を、地図に赤丸で目印つけといてやるよ。
隊は一つは地図を持っていくからな。余り物だが一つ残ってて良かった。そら、受け取れ。
ここは明日戦地へ向けて出発するから無人になるんだよ。だからここに薬草とか納品しに来ても困るぞ。
地図に赤丸で書いといた村に持ってってくれよな。」
地図だと言って渡されたのは、一度濡れて乾いたものらしく、文字や細かい図柄が溶けてにじんでいる場所があり、よくわからないものだった。
実は使えないため廃棄予定のものだった。
担当者がこれを渡したのは、本隊が行く戦地の場所は濡れてにじんでいるところだったが、薬草採取の向かう場所ではないし、ここから薬草を納品する村へ行くだけに使うなら、にじんでいても用は足りると思ったからである。
また地図はかなりの広域地図であった。帝国の支配領域(自称)から、その外の周りの地域まで一枚に描いてあるためである。
支配地域(自称)は、帝国側の人間が足を踏み入れることができている、比較的安全な部分はもれなく記載されていた。
そこに住んでいる者の主張や都合は構わず帝国領土であるとしているのである。
さらに、支配地域(自称)はまだともかく、その周辺の部分の正確さは全く不明であった。
おそらく帝国から実際に行った者はほとんどおらず、伝聞をもとに適当に描かれていると思われる。
そういった事情を渡す側はわかっていたため、にじんでいる地図でも問題なかろうと渡しているのである。つまるところあんまり使えない地図であるのだ。
その地図と共に、少しのお金や、干し肉、堅く焼かれた携行食などの食料を数日分貰えた。
革袋の水筒を人数分3つもらったので、兵舎の外にある井戸で水をくんでゆくこともできるだろう。
4
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
“金しか生めない”錬金術師は果たして凄いのだろうか
まにぃ
ファンタジー
錬金術師の名家の生まれにして、最も成功したであろう人。
しかし、彼は”金以外は生み出せない”と言う特異性を持っていた。
〔成功者〕なのか、〔失敗者〕なのか。
その周りで起こる出来事が、彼を変えて行く。
外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~
海道一人
ファンタジー
俺は地球という異世界に転移し、六年後に元の世界へと戻ってきた。
地球は魔法が使えないかわりに科学という知識が発展していた。
俺が元の世界に戻ってきた時に身につけた特殊スキルはよりにもよって一番不人気の土属性だった。
だけど悔しくはない。
何故なら地球にいた六年間の間に身につけた知識がある。
そしてあらゆる物質を操れる土属性こそが最強だと知っているからだ。
ひょんなことから小さな村を襲ってきた山賊を土属性の力と地球の知識で討伐した俺はフィルド王国の調査隊長をしているアマーリアという女騎士と知り合うことになった。
アマーリアの協力もあってフィルド王国の首都ゴルドで暮らせるようになった俺は王国の陰で蠢く陰謀に巻き込まれていく。
フィルド王国を守るための俺の戦いが始まろうとしていた。
※この小説は小説家になろうとカクヨムにも投稿しています
クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される
こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる
初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。
なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています
こちらの作品も宜しければお願いします
[イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉
まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。
貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる