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ラウアは遠方からリーテを見つけた。リーテが危険な男がいる船のあたりに自分から近寄っていっているのを見て、必死に行かないでと叫びながら走って向かったが、風のせいか、リーテやその男のいるあたりにその声が届くことはなかった。
胸が破れそうなくらい走り抜いて渡し場のところまで来たころには、船は男とリーテを乗せて湖の水面を進んで行くところだった。
ラウアは肺に痛みを感じるほど息をしながら、裾をたくし上げて足を出すように体の前で縛り、サンダルを脱ぎ、そうっと湖に入った。
船はリーテに進んでいることに気づかれないようにか、ゆっくりと浅い箇所を漕いで進んでいた。
漕いでいる男は、リーテが渡し場から船が離れたことにいつ気づくのか見張ろうと、リーテと船の行く先をかわるがわる見ながら漕ぎ進むことに集中しており、後ろからつけているラウアには今のところ気づいていない。
こちらが風下にあたるため、向こうにわからないように近寄れるかもしれない。ラウアは音を立てないよう静かに水中を歩いて進んだ。
だが途中から船は足の立たない深さを外海へ向かってスピードをあげて進みだしたので、ラウアは見つからないように近寄ることは諦め、船に向かって泳ぎはじめた。
「素敵!これ全部私の物になるのよね!」リーテは指輪をはめられるだけ全ての指にはめ、頭には冠、首にはネックレスを三つ、両手首には、かけられるだけの腕輪を引っ掛けていた。
「私こんなに着飾るとお姫様にでもなったみたい!いいえ、お姫様というより、女王様の方がふさわしいわ。」
リーテは微笑みながら同意を求めて顔を上げて男を見たが、渡し場から離れて来ているのに気づいてぎょっとした。「ちょっと!島から離れてしまっているわよ!」
「それはその、宝を見せている間、私もネックレスをみるのに夢中になっていたので、気づいたらここまで島から離れてしまっていたのだ。」
リーテは「もう、何やってるのよ!渡し場に早く戻ってよ!」と叫びだした。男は「うむ、そのつもりだ」と櫂を手に持ち漕いだが、その行く先は外海へ向かっており、リーテは戸惑った。「何してるの?それじゃ、外海へ出ちゃうじゃない!」
その時、小舟の片側のふちに重さがかかったため、船はぐらりと揺らいだ。ラウアが乗り込んできたのだ。「ラウア!?何してるのよ一体!」リーテはボタボタ水を垂らすラウアを、豪奢な装いが濡れてしまわないように避け、離れて座り直した。
ラウアは激しく走った上に泳いで来たばかりなので息をするのに忙しく、言葉がなかなか出なかったが、「リーテ、この男、危ない!逃げて!」と短く口にした。
「誰だ!」男は怒鳴った。
「ラウア、いきなり変なこと言わないでよ…貢ぎ物を私にくれる人のことを悪く言わないでよ!貰えなくなるじゃない!」リーテも叫んだ。
「リーテ」ラウアはリーテの姿を見てハッとなって言った。「巫女のネックレスはどうしたの?」
リーテは両手を広げてラウアに綺羅びやかな姿がよく見えるよう胸を張り、得意そうに言った。
「貸してって言われたから、今貸してるよ、その人に。そのお礼がこの装飾品だもん。ラウアのは無いからね!」
男は顎でラウアを指しながらリーテに聞いた。「この女の子は何だ?」ラウアに対しぞんざいな態度だったのは、彼女の服が平服であったからだろう。
光の巫女のネックレスは服の下にしまい込まれていたので、男の目は引かなかった。
「これはラウアといって私の従者、下僕なのよ。」リーテは巫女がもう一人いると知られたら貢ぎ物を独り占めできないため、大急ぎでそう言った。
余計なこと言わないでよね!と言いたげな目でラウアを睨みながら。
「リーテ、何言ってるの!この男、水面にキトを突き落として殺してしまったわ!私、島の上の方から見てたもの!危ないからすぐ逃げないと!」
胸が破れそうなくらい走り抜いて渡し場のところまで来たころには、船は男とリーテを乗せて湖の水面を進んで行くところだった。
ラウアは肺に痛みを感じるほど息をしながら、裾をたくし上げて足を出すように体の前で縛り、サンダルを脱ぎ、そうっと湖に入った。
船はリーテに進んでいることに気づかれないようにか、ゆっくりと浅い箇所を漕いで進んでいた。
漕いでいる男は、リーテが渡し場から船が離れたことにいつ気づくのか見張ろうと、リーテと船の行く先をかわるがわる見ながら漕ぎ進むことに集中しており、後ろからつけているラウアには今のところ気づいていない。
こちらが風下にあたるため、向こうにわからないように近寄れるかもしれない。ラウアは音を立てないよう静かに水中を歩いて進んだ。
だが途中から船は足の立たない深さを外海へ向かってスピードをあげて進みだしたので、ラウアは見つからないように近寄ることは諦め、船に向かって泳ぎはじめた。
「素敵!これ全部私の物になるのよね!」リーテは指輪をはめられるだけ全ての指にはめ、頭には冠、首にはネックレスを三つ、両手首には、かけられるだけの腕輪を引っ掛けていた。
「私こんなに着飾るとお姫様にでもなったみたい!いいえ、お姫様というより、女王様の方がふさわしいわ。」
リーテは微笑みながら同意を求めて顔を上げて男を見たが、渡し場から離れて来ているのに気づいてぎょっとした。「ちょっと!島から離れてしまっているわよ!」
「それはその、宝を見せている間、私もネックレスをみるのに夢中になっていたので、気づいたらここまで島から離れてしまっていたのだ。」
リーテは「もう、何やってるのよ!渡し場に早く戻ってよ!」と叫びだした。男は「うむ、そのつもりだ」と櫂を手に持ち漕いだが、その行く先は外海へ向かっており、リーテは戸惑った。「何してるの?それじゃ、外海へ出ちゃうじゃない!」
その時、小舟の片側のふちに重さがかかったため、船はぐらりと揺らいだ。ラウアが乗り込んできたのだ。「ラウア!?何してるのよ一体!」リーテはボタボタ水を垂らすラウアを、豪奢な装いが濡れてしまわないように避け、離れて座り直した。
ラウアは激しく走った上に泳いで来たばかりなので息をするのに忙しく、言葉がなかなか出なかったが、「リーテ、この男、危ない!逃げて!」と短く口にした。
「誰だ!」男は怒鳴った。
「ラウア、いきなり変なこと言わないでよ…貢ぎ物を私にくれる人のことを悪く言わないでよ!貰えなくなるじゃない!」リーテも叫んだ。
「リーテ」ラウアはリーテの姿を見てハッとなって言った。「巫女のネックレスはどうしたの?」
リーテは両手を広げてラウアに綺羅びやかな姿がよく見えるよう胸を張り、得意そうに言った。
「貸してって言われたから、今貸してるよ、その人に。そのお礼がこの装飾品だもん。ラウアのは無いからね!」
男は顎でラウアを指しながらリーテに聞いた。「この女の子は何だ?」ラウアに対しぞんざいな態度だったのは、彼女の服が平服であったからだろう。
光の巫女のネックレスは服の下にしまい込まれていたので、男の目は引かなかった。
「これはラウアといって私の従者、下僕なのよ。」リーテは巫女がもう一人いると知られたら貢ぎ物を独り占めできないため、大急ぎでそう言った。
余計なこと言わないでよね!と言いたげな目でラウアを睨みながら。
「リーテ、何言ってるの!この男、水面にキトを突き落として殺してしまったわ!私、島の上の方から見てたもの!危ないからすぐ逃げないと!」
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