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「そか、一人だとやっぱ寂しい感じするもんね」ラウアがそう言うと、リーテはやや挑戦的に言い返した。
「寂しくなんてないもん!…ただ、奥の部屋のお母さんと目が合うんだもん。一人だと怖い時があって…このところよく眠れないからお願い!」リーテはそんなことを話すのだった。
「リーテのお母さん、この前亡くなられたんじゃない?」ラウアはそう聞きながらも、リーテの母のことを思い出していた。
リーテの母は、自分に対し、しばらく前からあたりが良くなかった。島に着いて以降は尚更だった。
ラウアの母はリーテの母の姉であったが、両親のいない自分をたとえ姉の子といっても面倒を見る余裕はなかったのだろう。
そのためラウアは、リーテ達のすみかには一緒にはおらず、自分一人だけで狭い隙間を見つけ、そこで寝泊まりしていたのだった。
その後、リーテの母は亡くなったのだが、遺体はリーテの住まいの奥に保存されたままになっていた。
他の亡くなった者達は外海に葬ったのだが、リーテの母親は前代の巫女のため、遺体が流されてどこかへ行ってしまうと一族の守りが薄らぐのではないか、と言い出す者が出たのだ。
また島の土は固いため道具もなく土葬に必要なだけの深さを掘りぬくことも難しかった。彼ら一族が古にはよくしていたように、遺体はその住まいの奥に保存されたままになったのだ。
しばらくたっても、異様な土地柄が影響したのか、遺体は腐らないままであった。さすがに巫女だけはあると他の大人達が噂していたことを、ラウアは思い出した。
リーテはぶるっと身を震わせながら言った。「うん、お母さん死んでるんだけど、住まいの奥に体を横たえて置いてる。
でも、目を閉じたはずなのに、このところ目がわずかに開いて来て…
夜になるとつい見てしまい、目が合った感じがして怖いの。」
話を聞いたラウアはゾッとした。それは一人で寝泊まりすると恐怖を覚えるに違いなかった。
「…わかった。じゃ今夜は一緒に寝ようね。」二人はリーテの寝場所で身を寄せ合って眠ったのだった。恐ろしい奥の部屋には意識を向けないように。明日になれば誰か帰って来ますように、そう願いながら。
「寂しくなんてないもん!…ただ、奥の部屋のお母さんと目が合うんだもん。一人だと怖い時があって…このところよく眠れないからお願い!」リーテはそんなことを話すのだった。
「リーテのお母さん、この前亡くなられたんじゃない?」ラウアはそう聞きながらも、リーテの母のことを思い出していた。
リーテの母は、自分に対し、しばらく前からあたりが良くなかった。島に着いて以降は尚更だった。
ラウアの母はリーテの母の姉であったが、両親のいない自分をたとえ姉の子といっても面倒を見る余裕はなかったのだろう。
そのためラウアは、リーテ達のすみかには一緒にはおらず、自分一人だけで狭い隙間を見つけ、そこで寝泊まりしていたのだった。
その後、リーテの母は亡くなったのだが、遺体はリーテの住まいの奥に保存されたままになっていた。
他の亡くなった者達は外海に葬ったのだが、リーテの母親は前代の巫女のため、遺体が流されてどこかへ行ってしまうと一族の守りが薄らぐのではないか、と言い出す者が出たのだ。
また島の土は固いため道具もなく土葬に必要なだけの深さを掘りぬくことも難しかった。彼ら一族が古にはよくしていたように、遺体はその住まいの奥に保存されたままになったのだ。
しばらくたっても、異様な土地柄が影響したのか、遺体は腐らないままであった。さすがに巫女だけはあると他の大人達が噂していたことを、ラウアは思い出した。
リーテはぶるっと身を震わせながら言った。「うん、お母さん死んでるんだけど、住まいの奥に体を横たえて置いてる。
でも、目を閉じたはずなのに、このところ目がわずかに開いて来て…
夜になるとつい見てしまい、目が合った感じがして怖いの。」
話を聞いたラウアはゾッとした。それは一人で寝泊まりすると恐怖を覚えるに違いなかった。
「…わかった。じゃ今夜は一緒に寝ようね。」二人はリーテの寝場所で身を寄せ合って眠ったのだった。恐ろしい奥の部屋には意識を向けないように。明日になれば誰か帰って来ますように、そう願いながら。
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