離れ小島の二人の巫女

サカキ カリイ

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そんなこんなで、少女達、リーテとラウアは宝物庫へ美しい衣装とやらをこっそり見るためにやって来たのだった。

島の一部に、ほこらのようになっている場所があるが、そこが島の住人が見つけだしたいわゆる宝物庫である。

宝箱の上には、箱を隠すように様々な物が雑多に置かれていた。

外部の者が万が一入り込んでもすぐに見つけられないようにするためであろうか、それらは、壊れた家具であったり何かの布切れだの、手当たり次第何でも宝箱を隠すように置かれている。

「私が見た箱は確かこのあたりにあったように思うんだけど」リーテが横になっている椅子と布地をどけたら、横長の古い木箱があらわれた。

蓋が重く、ラウアも手伝って二人で箱を開けると、年代物の衣類があらわれた。

それらは生成りで染色はほどこされてはいなかったが、手触りの滑らかな上質な布でできており、薄暗いほこらの中でぼんやりと輝いているように見えた。

どれも上から被る種の服である。緑や青の大きな宝石を使用した色とりどりの装飾品も、同じ箱に仕舞われていた。

「ああなんて素敵なの!
これ、礼拝の時の衣装にしてほしい…

私達、巫女なんだから、こういう衣装を着てもいいと思うんだけどさあ…」リーテがため息をつきながら言う。

「上等だから扱いに注意がいりそうじゃない?普段使いするのはどうかなあ。

あまり触ると汚したり破いたりしても困るから、もっと装飾の少ない普通ぽい感じがいいかも…」ラウアは布地の上質さには感嘆しながらも、話に聞く伝統的な礼拝用の物とは少し違う物のようだと考えながら答えていた。

「ねえ、みてみて!着てみたんだけど。」リーテはもう、箱にあった服を被って着てしまっていた。ところどころ青やら緑やら光るので、どうやらそこそこの大きさの宝石が縫い止めてある服のようだ。大人用で裾が長く引きずってしまうので、ラウアは箱にあった金色の紐でリーテの腰あたりの布地をたくし上げて括り、サンダルと足の先が見える程度に裾を調整してあげた。

「ありがと!でもこれ着たとこ、自分では見れないから、水辺の方まで行って姿を映して見ないとね!
ラウアも早くなんか着てみてよ!」

リーテがせかすのでラウアは適当に衣類を掴んだが、こっちのほうが似合うんじゃないとリーテの選んだ服を着せられた。

生地には銀糸で刺繍がしてあるのだが、ところどころ白い光がきらめくように見える。もしかしたら光る石みたいなものを砕いて貼り付けてあるか、どうにかして織り込んであるのかもしれない。もしそうなら、一度洗濯しただけでも台無しになる類のものかもしれない、汚さないよう注意しないと!ラウアはそう思った。

リーテの好みで選んだものだが、ラウアにも非常に美しい服のように思われた。リーテは常に扱いが難しくなるわけではない。いつもは普通の友達や家族などと同じように話せた。今のようにリーテ本人の気分が上がっている時などはことさらである。

ラウアは自分の裾も調整したが、布地を紐で折ってとめたところが膨らんでしまうのは仕方なかった。

「ラウア、いつもと違ってとってもいい感じになってるから、水辺に行って姿を映して見たほうが絶対にいい!
私も早く自分の姿見たいもん!」

二人は手を繋ぎクスクス笑いながら走りだした。
鏡は無いので水面に映った姿を見るほかないのだ。

色々不安な要素はあるはずなのだが、二人はまだ幼く、今楽しいことをしているのでそのことで頭がいっぱいとなっていたのだった。

その笑い声には一片の曇りもなかったのだ。
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