2 / 12
2
しおりを挟む
「じゃ、決まりね!ラウア、早くいこ!」リーテが腰掛けていた橋のたもとから勢いよく立ち上がった。
橋というのは、小島と小島を渡す小さな細い吊り橋だ。
少女達が暮らしているこの二つの小島は、遠方からみると広い湖の上に二つの小さい島がポツンポツンとあるのが見えるという。
湖は広く楕円形を描いており、周りを人が住まぬ枯れた土地が輪のように囲んでいる。
湖の端は土地の輪の一部が切れて外海へと繋がっていた。
島の大人達はそこから小舟で外海へ向かい出入りしている。
この島に暮らす者は彼ら一族のみで、その数は多くない。
そして彼ら一族以外の者は、このあたりに来ると一種の呪いにかかってしまうため、近づくことができない。
少女達の一族は、船で外海からこの小島へやって来た。彼らが住んでいた土地は海中に沈み、逃れた人々は幾隻かの船に別れて乗り、うち一隻が辿り着いたのがこの島だった。
船には人々と共に積める限りの食糧や少々の日用品などはあったが、急ぎ乗り込んだためさほど準備されていたわけではない。
島に辿り着いた時、当初は少し休んだらすぐ他へ向かう予定だった。まずは物資の補充が最重要事項であり、それらを手に入れられる場所へ赴く必要があったのだ。もちろん住めそうな土地が見つかれば移住するつもりだった。
家族が他の船に乗ったかもしれないから探しに行きたいという連中もいた。
だが、沈むゆく土地からお目当ての人物が船でうまく逃げのびることができたかどうかはわからない。そしてその船の行く先もわからない。現状こちらでも困っている状態なのに無計画に探し出しに行くのは困難だとする者の方が多く、その案は採られなかった。
少女二人に関しては、リーテは片親であったのだが、幸運にも母親と同じ船に乗っていた。ラウアの両親は船に乗る以前、すでに亡くなっていた。そのため、他の船を探しに行かないことが決まっても、彼女達には直接の影響はなかった。
ともあれ、同じ船に乗ってきた人々は思った。他の船を探し出すまではできずとも、たちまちここは去らなければならないだろうと。
というのも、今彼らが辿り着いたこの島は、作物ができそうになかったのだ。
岩ばかりで土の部分は少ない上、やたらに固い土である。
耕すにも農具などは無い。また土地は酷く痩せており、自生植物もほとんど生えていなかった。みるからに碌な作物が育ちそうになかった。
また草木がほとんどない影響なのか、島の周辺には見たところ魚や鳥を見つけるのはなかなか難しかった。ここでは暮らしていけそうにない。
だがここを離れて先を行く計画は、島の中に密かに蓄えられていた大量の財宝を発見した時に中止となった。
偶然ではあったが、島の岩に同じ一族の印が刻まれているのを発見した者が、あたりを探し回った時に発見したのだ。
この一族は古いため様々な伝承を継承しているのだが、その中に人里離れた小島に莫大な宝を集めて宝物庫を作ってあるため困った時にはそこに行けばいいという伝承があった。そして伝承では、その島には魔術がかけられており、一族でない者は立ち入れないようにされているということだった。
彼らはその伝承にある小島を偶然にも発見したようであったのだ。
橋というのは、小島と小島を渡す小さな細い吊り橋だ。
少女達が暮らしているこの二つの小島は、遠方からみると広い湖の上に二つの小さい島がポツンポツンとあるのが見えるという。
湖は広く楕円形を描いており、周りを人が住まぬ枯れた土地が輪のように囲んでいる。
湖の端は土地の輪の一部が切れて外海へと繋がっていた。
島の大人達はそこから小舟で外海へ向かい出入りしている。
この島に暮らす者は彼ら一族のみで、その数は多くない。
そして彼ら一族以外の者は、このあたりに来ると一種の呪いにかかってしまうため、近づくことができない。
少女達の一族は、船で外海からこの小島へやって来た。彼らが住んでいた土地は海中に沈み、逃れた人々は幾隻かの船に別れて乗り、うち一隻が辿り着いたのがこの島だった。
船には人々と共に積める限りの食糧や少々の日用品などはあったが、急ぎ乗り込んだためさほど準備されていたわけではない。
島に辿り着いた時、当初は少し休んだらすぐ他へ向かう予定だった。まずは物資の補充が最重要事項であり、それらを手に入れられる場所へ赴く必要があったのだ。もちろん住めそうな土地が見つかれば移住するつもりだった。
家族が他の船に乗ったかもしれないから探しに行きたいという連中もいた。
だが、沈むゆく土地からお目当ての人物が船でうまく逃げのびることができたかどうかはわからない。そしてその船の行く先もわからない。現状こちらでも困っている状態なのに無計画に探し出しに行くのは困難だとする者の方が多く、その案は採られなかった。
少女二人に関しては、リーテは片親であったのだが、幸運にも母親と同じ船に乗っていた。ラウアの両親は船に乗る以前、すでに亡くなっていた。そのため、他の船を探しに行かないことが決まっても、彼女達には直接の影響はなかった。
ともあれ、同じ船に乗ってきた人々は思った。他の船を探し出すまではできずとも、たちまちここは去らなければならないだろうと。
というのも、今彼らが辿り着いたこの島は、作物ができそうになかったのだ。
岩ばかりで土の部分は少ない上、やたらに固い土である。
耕すにも農具などは無い。また土地は酷く痩せており、自生植物もほとんど生えていなかった。みるからに碌な作物が育ちそうになかった。
また草木がほとんどない影響なのか、島の周辺には見たところ魚や鳥を見つけるのはなかなか難しかった。ここでは暮らしていけそうにない。
だがここを離れて先を行く計画は、島の中に密かに蓄えられていた大量の財宝を発見した時に中止となった。
偶然ではあったが、島の岩に同じ一族の印が刻まれているのを発見した者が、あたりを探し回った時に発見したのだ。
この一族は古いため様々な伝承を継承しているのだが、その中に人里離れた小島に莫大な宝を集めて宝物庫を作ってあるため困った時にはそこに行けばいいという伝承があった。そして伝承では、その島には魔術がかけられており、一族でない者は立ち入れないようにされているということだった。
彼らはその伝承にある小島を偶然にも発見したようであったのだ。
5
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
冤罪で山に追放された令嬢ですが、逞しく生きてます
里見知美
ファンタジー
王太子に呪いをかけたと断罪され、神の山と恐れられるセントポリオンに追放された公爵令嬢エリザベス。その姿は老婆のように皺だらけで、魔女のように醜い顔をしているという。
だが実は、誰にも言えない理由があり…。
※もともとなろう様でも投稿していた作品ですが、手を加えちょっと長めの話になりました。作者としては抑えた内容になってるつもりですが、流血ありなので、ちょっとエグいかも。恋愛かファンタジーか迷ったんですがひとまず、ファンタジーにしてあります。
全28話で完結。
宮廷画家令嬢は契約結婚より肖像画にご執心です!~次期伯爵公の溺愛戦略~
白妙スイ@書籍&電子書籍発刊!
ファンタジー
男爵令嬢、アマリア・エヴァーレは絵を描くのが趣味の16歳。
あるとき次期伯爵公、フレイディ・レノスブルの飼い犬、レオンに大事なアトリエを荒らされてしまった。
平謝りしたフレイディにより、お詫びにレノスブル家に招かれたアマリアはそこで、フレイディが肖像画を求めていると知る。
フレイディはアマリアに肖像画を描いてくれないかと打診してきて、アマリアはそれを請けることに。
だが絵を描く利便性から、肖像画のために契約結婚をしようとフレイディが提案してきて……。
●アマリア・エヴァーレ
男爵令嬢、16歳
絵画が趣味の、少々ドライな性格
●フレイディ・レノスブル
次期伯爵公、25歳
穏やかで丁寧な性格……だが、時々大胆な思考を垣間見せることがある
年頃なのに、なぜか浮いた噂もないようで……?
●レオン
フレイディの飼い犬
白い毛並みの大型犬
*****
ファンタジー小説大賞にエントリー中です
完結しました!
異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)
【完結】知らない間に《女神様のお気に入り》だったようです
Debby
ファンタジー
この世界に『魔法』そのものはない。《ギフト》と呼ばれる力が存在するのみだ。しかし人々は《ギフト》を知る術を持っていない。
《ギフト》とはその名の通り女神から与えられる「贈り物」。それは生まれながらのものであったり、後天的に授かったりもし、貴族平民なども関係がない。もちろん《ギフト》持ちから《ギフト》持ちが生まれる訳でもない。それこそ神のみぞ知る、というヤツである。
何故そんなことをクレア・オリーブ伯爵令嬢が知っているのかというと、彼女が《他人のギフトが何か分かる》という一見使えそうで全く使えないギフトの持ち主だからである。
そんな彼女の通う学園で、前代未聞の大問題が起こってしまった。
その中心人物が、アリス・キャロットという美しい男爵令嬢らしいのだが、話してみると意外と良い子で──
★予約投稿済みで、全13話11/28に完結します
★12/12におまけを追加しました
Sランク冒険者の受付嬢
おすし
ファンタジー
王都の中心街にある冒険者ギルド《ラウト・ハーヴ》は、王国最大のギルドで登録冒険者数も依頼数もNo.1と実績のあるギルドだ。
だがそんなギルドには1つの噂があった。それは、『あのギルドにはとてつもなく強い受付嬢』がいる、と。
そんな噂を耳にしてギルドに行けば、受付には1人の綺麗な銀髪をもつ受付嬢がいてー。
「こんにちは、ご用件は何でしょうか?」
その受付嬢は、今日もギルドで静かに仕事をこなしているようです。
これは、最強冒険者でもあるギルドの受付嬢の物語。
※ほのぼので、日常:バトル=2:1くらいにするつもりです。
※前のやつの改訂版です
※一章あたり約10話です。文字数は1話につき1500〜2500くらい。
召喚された聖女? いえ、商人です
kieiku
ファンタジー
ご依頼は魔物の回収……転送費用がかさみますので、買取でなく引取となりますがよろしいですか?
あとお時間かかりますので、そのぶんの出張費もいただくことになります。
【完結】神様に嫌われた神官でしたが、高位神に愛されました
土広真丘
ファンタジー
神と交信する力を持つ者が生まれる国、ミレニアム帝国。
神官としての力が弱いアマーリエは、両親から疎まれていた。
追い討ちをかけるように神にも拒絶され、両親は妹のみを溺愛し、妹の婚約者には無能と罵倒される日々。
居場所も立場もない中、アマーリエが出会ったのは、紅蓮の炎を操る青年だった。
小説家になろう、カクヨムでも公開していますが、一部内容が異なります。
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる