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「ねえラウア、ただここで皆を待ってるだけなの、飽きちゃった。他のことしない?」

赤茶けた髪の少女、リーテがもう一人の少女に向けてつまらなそうに言う。

同じ灰色の眼同士がお互いを捉える。彼女達は細い吊り橋のたもとの地面に隣り合い腰掛けているのだった。

リーテは十二かそこらで、ラウアより僅かに年上だ。

リーテの面差しは、薄黄色であるラウアの髪の色合いを除きラウアと似通っており、腰まである髪の長さも同じくらいだ。

二人とも上からすっぽり被る種類の生成りの服とサンダルを着用し、格好もよく似ている。

まわりの人達は彼女達を姉妹のように扱っているが、実際は従姉妹だ。

なぜか、年上のリーテが妹だとされ、年下のラウアは、お姉ちゃんはしっかりしているね、などと言われてしまう。

ラウアは答えた。「まあ、時間空いた時には他の人の仕事の手伝いをするもんだけど、皆出払ってしまってるから、何やるのがいいのかわからないもんね。」

そう答えながら、この島に来る前は暇な時は同じくらいの子供達と遊んだりしたこともあったっけ、彼らは無事に生き延びているんだろうかなあと想いを馳せた。

「そうそう!確か洗濯物、手をつけず残っているものがあるんじゃないかな?あれなら私達だけで手伝いできそうじゃない?」

ふと思いついたことをラウアは口にしたのだが、それを聞くとリーテはひどく嫌そうな顔をした。

「こんな誰もいない時なんだから、何も手伝いだとかそんなにいい子ちゃんぶりっ子しなくても良くない?
あれだよね、私は光を司る精霊の巫女ですって気取りがそうさせてるんでしょ!」
リーテは意地悪気な口調になった。

…また始まった!

ラウアは心の中で溜め息をついた。

リーテは、時々扱いが難しくなることがある。彼女は、何においても、自分がこの世で一番で誰よりも素晴らしい人物だとされないと気がすまないところがある。

一族の光の巫女は、女神様に近しい存在であるとされていた。そのため、現在の光の巫女であるラウアに対し、リーテは妬みがましい言い方をすることが多々あるのだ。

「いい子ちゃんぶりっ子だなんて酷い!リーテだって闇の精霊の巫女じゃない。」

ラウアがそう言い返すと、「だってえ…光の巫女って女神様に近い存在とされてて、闇の巫女よりいい感じなんだもん」とリーテはいつもの愚痴を言い始めた。

彼女達二人は一族の巫女だ。先代の巫女達が亡くなり、それぞれが巫女に選定されてからまださほど間もない。

祈祷に使用する巫女のネックレスも引き継いでおり、二人ともそれを首にかけている。

リーテのネックレスは骨を彫刻して木の葉を型どったもので、ラウアのネックレスは何かしら白い金属で型どられた羽と小さな玉が交互に連なっているものだ。

「私達のお勤めは、今日はもう終わってるもんね」リーテは自らの首にあるネックレスを指先でいじりながら言う。「歌を歌ってお祈りしたもん。もう一日の仕事はしなくていいもん」

「そうは言っても、他の人たちが戻ってきた時、汚れ物がそのままだと大変だよ?ちゃんとできそうな手伝い、そのくらいしか思いつかないし。」ラウアはそう答える。

「…でも、頼まれてもいない仕事して疲れちゃったら、その分お腹すいて、予定より早く食糧を食べきったら困るでしょ?」

「…う、うん」ラウアは微妙な顔をしてうなづいた。島の大人達が出かける折に、食糧は少しずつわけあって食べなさいと言い残して出かけたのだが、二人だけで腹の空いた状態だと抑えが効かずあっという間に食べきるかもしれない。この島で食糧は貴重なのだ。

リーテは余分な仕事をすることが嫌いな質だから、こういう言い訳をしている、そのことはラウアはわかっているのだが、食糧の件を持ち出されると反論はできなかった。

「それよりねえ!」リーテは目をきらめかせて言った。「誰もいないうちにさあ、宝物庫に行ってみようよ!以前、大人達が宝の箱を開封しているとき覗き見したら、なんだかものすごく綺麗な布の服がちらっと見えたのよ…

ああいうの、着てみようよ、この機会に!ねえ、ラウア、お互いどの服が一番似合うか決めっこしよ!」クスクスと笑い出すリーテ。

「えっ…」ラウアも少し心が動かされてしまう。子供である少女達は、破損する心配があるとそれら宝物庫に立ち入ることを禁止されているのだった。

宝物庫の中に、おそらくは古の巫女の衣装だろうと思われるものが最近発見されたのだとラウアは聞いていた。

近頃は礼装はどんどん簡略化しているため、見出されても使用されず保存されたままにされているということだったが、できることならばそれらを目にしてみたかった。
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