エロゲの悪役に転生したけど、破滅するのは嫌なので全力で勇者を遂行します!!

ボッさん

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第55話

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 迷宮とは言ってしまえば魔物の巣だ。
 自分たちのテリトリーにやってきた冒険者侵入者を撃退するために動くのは生物としても至極当たり前のことである。
 
 となれば、魔物と出くわすのは避けられないことだろう。
 仮に奴らと出会った場合冒険者の次なる行動は二つ。
 戦うか、逃げるか。そのどちらかだ。

 
「――ハァっ!」


 背中をエリスを引き抜き盾持ちゴブリンの体を盾ごと切り裂く。
 
 ギガムペデスすら両断して見せるエリスの刃だ。
 ゴブリンはなすすべなく真っ二つに切り捨てられ、道をその鮮血で染め上げる。
 後ろへ振り向き、次のゴブリンを視認。

 軽いステップで肉薄し、動揺した奴らの体を再び横薙ぎで切り裂く。


『マスターっ! 矢が来ますっ!』

「――っ!」


 エリスの言葉に咄嗟にその場を離れる。
 すると、つい先程まで頭があった場所を通過する一本の矢。
 凄まじい速度で射出されたソレは、目標を失い地面に突き刺さる。

 軌道を追ってみれば、距離のある場所に弓持ちゴブリンを発見。
 接近戦は頭から除外し、手をそちらに向ける。
 無詠唱で発動した炎の魔術によって、瞬く間にゴブリンは燃えカスとなった。


「相変わらずとんでもねー強さだな、大将……」

「盾持ちゴブリンってそれなりに耐久力あるのにね……」

「流石は勇者様っス! 坊ちゃんっ!」


 と、背後から聞こえてくる仲間たちの方へと視線を向ける。
 どうやらあちらも向かってきた魔物はあらかた倒したのだろう。
 数体のゴブリンの死体が転がってる


「皆さんも強いですよ、流石は優秀な冒険者パーティですね!」

「ま、まぁ、それなりに修羅場は潜ってるからなー」


 実際、彼らは強い方の冒険者だろう。
 
 戦ってる最中に横目で確認したが、連携の取れた見事な戦術でゴブリンたちを一掃していた。エリオットがまず接近からの一撃を当て、セリーナによる補助と援護魔術の嵐。そして、隙を見てのカイルによる弓矢の追撃だ。

 何か一つでもタイミングがズレればエリオットが被弾しそうなものだが。
 セリーナの魔術もカイルの狙撃も彼には当たらず。
 倒れるのはゴブリンのみ。

 そうして着実に数を減らしていく様は、本当に見事の一言だ。
 流石は幼馴染で構成された冒険者パーティである。


「それで、これからどうするんですか?」


 エリスを鞘に納めながら問いかけてみる。


「まずはゴブリンの耳を切り取るかな。これが魔物を討伐した証になるの」

「分かりました」

「あと、装備は全部剥ぎ取ってくださいっス!」

「えっ? これをですか?」


 ゴブリンたちが手にしていたらしい装備品の数々を目にしてみるが。
 どれもこれも全体的に錆に覆われていてまともに使えそうにもない。

 何故だろうかと考えていると、隣のエリオットが教えてくれる。


「この錆みたいなものは外に持ち出して魔術を使えば簡単に落ちるんだよ。あとは、それを換金するも使うも俺たち次第って感じだな」


 運が良ければ質の高いものも手に入るとのこと。
 なるほど。ゲームでのドロップ品は現実になるとこんな感じになるわけか。
 流石に金は落とさないらしいが、その変わりが魔物討伐の証になるのだろう。

 それにしても、倒した魔物の装備を拝借か……。
 

「……なんか、追剥みたいですね」 

「あはは……。まぁ、そう思っちゃうのも仕方ないけど、相手は魔物なわけだし、あまり深く考えない方が良いよ?」

「……ですね」


 真っ二つになった盾を除いて、使えそうな装備と耳を冒険ポーチへ。
 俺の幸運値はかなり高い方だから、ドロップ品もそれなりのものが期待できるといいんだが。などと考えながら無心で作業を進める。
 
 そうして後始末を終えてから、また迷宮内の探索開始だ。
 薄暗い迷宮内をカイルを先頭に一列で歩く。
 
 しばらく歩いているとカイルが立ち止まった。


「どうした?」

「アレ、見てくださいっス」


 カイルの指さす先にあるのは多少広めの部屋と宝箱だ。
 木製なのか古ぼけた印象を覚えるソレだが、それ以上に部屋の中央にポツンと不自然に置かれてるために怪しさが半端ではない。


『見るからに怪しい宝箱ですね。罠でしょうか?』

「いえ、アレは間違いなく本物っス! 僕のトレジャーハンターとしての勘がそう言ってるっスよ!」


 鼻息荒くそう告げるカイル。
 トレジャーハンターである彼が言うのだ。
 可能性はゼロではないだろうが。


「カイルさんの勘って当てになるんですか?」

「五分五分ってとこだな」

「むしろ、外れ枠の方が多いかな……」

「……大丈夫なんですかね?」


 少々心配にはなるが協議の結果宝箱を開けてみることになった。
 カイルが宝箱の周りにある罠の有無を確認し、安全が確認できたところで宝箱に手をかけた瞬間だった。

 箱の側面から腕が生え、その青白い腕がカイルを掴もうと伸びる。
 どうやら宝箱に擬態し冒険者を食らう魔物。ミミックだったようだ。


「――危ないっ!」


 カイルの襟首を掴み、彼と一緒にその場から離れる。
 手元の方から彼の『ぐえっ』という悲鳴が聞こえたが我慢してほしい。

 ちなみにミミックだがエリオットによる剣撃で倒されていた。
 何故だか手慣れた様子である。

 これまでもかなりの頻度でミミックに遭遇してきたのかもしれない。


「結局外れか」

「そうね。まっ、今回は特に怪我が無かったから良いじゃない」

「けほっ、げほっ……! た、助かったっス、坊ちゃん……」

「どういたしまして」


 もしかしたら、トレジャーハンターの勘とは当てにならないのかもしれない。
 カイルの首に回復魔術を施しながら、俺はそう思うのだった。
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