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第52話
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「ここがしばらくの間、俺らが拠点として使う『銀狼の宿』だ」
と、エリオットの案内でやって来たのは一軒の建物だ。
『銀狼の宿』と言うだけあって、入り口の上には狼を模したマークがある。
石造りの外壁に三階建てのそれなりに大きな物件だ。
扉を開いて中へ入ると、それなりに繁盛しているのか人も多い。
受付前に数人。テーブルに座って順番待ちしてる利用者の姿も見受けられた。
とりあえず、全員で向かってもアレなので。
代表してエリオットが受付へ。
俺たちは近くの柱前で待機することにした。
「エリオットさん。随分お早いお帰りですね! 噂は聞いてますよ? あのギガムペデスを単騎撃破したとか!」
「誰のことだ、そりゃあっ!? 俺なんかにそんな芸当出来るかよっ!?」
「あれ? 違うんですか? 今、街中でそんな噂が流れてますよ?」
「一体誰だよ、そんな噂流した奴は……!?」
受付のお姉さんの言葉に声を上げるエリオット。
冒険者ギルドでもそうだったが。噂が広まるのは随分早いな。
まぁ、内容が少々違うみたいだが。
「なんか、噂が独り歩きしてそうですね?」
「あはは……。口伝いの噂なんてそんなものよ……」
「そうっスね。前に伝説級の魔剣を見つけたって噂を信じて向かってみたら、馬鹿みたいに強い魔物に守られたゴミみたいな武器が手に入ったっス……」
迷宮内部で見掛ける宝箱のことだろうか?
確かに、アレには当たり外れがあるからな。
当たれば強い武器や防具、魔導書なんかが手に入るが。
外れれば、階層関係なく使えないものが手に入ったりするし。
最悪の場合は罠やミミックによる致命傷でお陀仏だ。
カイルはその『外れ』の方を引いたのだろう。
ちなみに見つけた武器と言うのは、柄から先が無い折れた剣だったとのこと。
ご愁傷様……。心の中で合掌しておく。
と話していると、疲れた様子のエリオットが戻ってきた。
「ハァ……。道理で視線を集めるわけだぜ……」
「お疲れ様ー。部屋は取れた?」
「おう! あと少し遅けりゃ満席だったみたいだけどな! 少々値は張るが一部屋一か月ほど滞在っつー形で借りられたぜ!」
親指を立ててミッションコンプリートとサムズアップする。
そんなエリオットに続いて借りられたという部屋へ。
三階の最奥が目的の場所らしい。
『随分小奇麗な通路ですね? ルクレイア城の通路を思い出しますよ』
「うん、そうだね。流石は値が張る部屋のある通路だ」
エリスの言葉に頷きながらそう返す。
部屋へと向かう三階の通路は濃紺色の厚手のカーペットが敷かれており。
所々に銀の刺繍が施されているそれは、踏みしめる度にしっかりとした質感を感じられる。多分、城のカーペットと遜色ない出来栄えだ。
壁は淡い銀色で、一部には銀狼の紋章が入っている。
小さな飾り棚には花や装飾品が飾られていて、高級感が強く感じられた。
ゲームじゃ宿の内装までは描かれてなかったので、非常に新鮮な光景だ。
基本的に受付で金を支払ったのちに暗転してから、気づけば翌朝。
というのがゲーム内での宿の扱いだったし。
まぁ、それを言ってしまえば、ほとんど全ての施設が当てはまるんだが。
「普段からこんな場所を借りてるんですか?」
「いや? 普段は俺たちも他の冒険者たちと同じで安く済ませてるよ。ただ、今回は大将っつー新しい仲間兼恩人がいるからな! 少しばかり豪勢にしてるのさ!」
「おかげで手持ちは随分軽くなったけどね……」
逆さにした財布を片手に苦笑するセリーナ。
彼女の手に収まる金貨は随分と少ない。おそらくは今回の宿代で随分な量を消費してしまったのだろう。
なんか俺のために申し訳ない。
「坊ちゃんが気にすること無いっスよ! 金は依頼をこなせばすぐ貯まるっス!」
「そうだな、期待してるぜ? 大将っ!」
『お任せくださいっ! マスターがいれば、宿代なんてあっという間ですっ!』
「何でエリスが胸張るのさ?」
いつの間にか人間体になってるエリスにそうツッコミを入れつつ廊下を歩いていると、ようやく目的地の部屋へと到着したらしい。
扉を開くと目に入るのは銀色を基調とした高級感あふれる内装だ。
椅子やテーブルなどの家具の多くがまず大きく。
壁に掛けられたランプの温かい光が部屋を照らしている。
部屋の隅にはキッチンもあり、そこで簡単な料理くらいはやれそうだ。
個室も用意されているらしく、確認できるだけでも四つ。
基本的な家具は一通り揃っているらしく、エリオット曰く簡易的な風呂まで別々に用意されているとのこと。
宿泊施設にしては、かなりの力の入れようだ。
「なんつーか、流石は最高級の部屋って感じだなぁ」
「お金は積んだんだし、これくらいはしてくれないとねー」
「しばらく歩きっぱなしだったから、ようやく一休みできるっスよ……」
と、三人は特に会話するでもなく各々が個室へと向かっていく。
そんな彼らを見送ってからエリスはこちらを見遣る。
「マスター。わたしたちも行きましょうか?」
「そうだね。流石にちょっと疲れたし……」
そうエリスに返しつつ、俺は彼女を連れ立って残りの部屋へと歩を進めた。
と、エリオットの案内でやって来たのは一軒の建物だ。
『銀狼の宿』と言うだけあって、入り口の上には狼を模したマークがある。
石造りの外壁に三階建てのそれなりに大きな物件だ。
扉を開いて中へ入ると、それなりに繁盛しているのか人も多い。
受付前に数人。テーブルに座って順番待ちしてる利用者の姿も見受けられた。
とりあえず、全員で向かってもアレなので。
代表してエリオットが受付へ。
俺たちは近くの柱前で待機することにした。
「エリオットさん。随分お早いお帰りですね! 噂は聞いてますよ? あのギガムペデスを単騎撃破したとか!」
「誰のことだ、そりゃあっ!? 俺なんかにそんな芸当出来るかよっ!?」
「あれ? 違うんですか? 今、街中でそんな噂が流れてますよ?」
「一体誰だよ、そんな噂流した奴は……!?」
受付のお姉さんの言葉に声を上げるエリオット。
冒険者ギルドでもそうだったが。噂が広まるのは随分早いな。
まぁ、内容が少々違うみたいだが。
「なんか、噂が独り歩きしてそうですね?」
「あはは……。口伝いの噂なんてそんなものよ……」
「そうっスね。前に伝説級の魔剣を見つけたって噂を信じて向かってみたら、馬鹿みたいに強い魔物に守られたゴミみたいな武器が手に入ったっス……」
迷宮内部で見掛ける宝箱のことだろうか?
確かに、アレには当たり外れがあるからな。
当たれば強い武器や防具、魔導書なんかが手に入るが。
外れれば、階層関係なく使えないものが手に入ったりするし。
最悪の場合は罠やミミックによる致命傷でお陀仏だ。
カイルはその『外れ』の方を引いたのだろう。
ちなみに見つけた武器と言うのは、柄から先が無い折れた剣だったとのこと。
ご愁傷様……。心の中で合掌しておく。
と話していると、疲れた様子のエリオットが戻ってきた。
「ハァ……。道理で視線を集めるわけだぜ……」
「お疲れ様ー。部屋は取れた?」
「おう! あと少し遅けりゃ満席だったみたいだけどな! 少々値は張るが一部屋一か月ほど滞在っつー形で借りられたぜ!」
親指を立ててミッションコンプリートとサムズアップする。
そんなエリオットに続いて借りられたという部屋へ。
三階の最奥が目的の場所らしい。
『随分小奇麗な通路ですね? ルクレイア城の通路を思い出しますよ』
「うん、そうだね。流石は値が張る部屋のある通路だ」
エリスの言葉に頷きながらそう返す。
部屋へと向かう三階の通路は濃紺色の厚手のカーペットが敷かれており。
所々に銀の刺繍が施されているそれは、踏みしめる度にしっかりとした質感を感じられる。多分、城のカーペットと遜色ない出来栄えだ。
壁は淡い銀色で、一部には銀狼の紋章が入っている。
小さな飾り棚には花や装飾品が飾られていて、高級感が強く感じられた。
ゲームじゃ宿の内装までは描かれてなかったので、非常に新鮮な光景だ。
基本的に受付で金を支払ったのちに暗転してから、気づけば翌朝。
というのがゲーム内での宿の扱いだったし。
まぁ、それを言ってしまえば、ほとんど全ての施設が当てはまるんだが。
「普段からこんな場所を借りてるんですか?」
「いや? 普段は俺たちも他の冒険者たちと同じで安く済ませてるよ。ただ、今回は大将っつー新しい仲間兼恩人がいるからな! 少しばかり豪勢にしてるのさ!」
「おかげで手持ちは随分軽くなったけどね……」
逆さにした財布を片手に苦笑するセリーナ。
彼女の手に収まる金貨は随分と少ない。おそらくは今回の宿代で随分な量を消費してしまったのだろう。
なんか俺のために申し訳ない。
「坊ちゃんが気にすること無いっスよ! 金は依頼をこなせばすぐ貯まるっス!」
「そうだな、期待してるぜ? 大将っ!」
『お任せくださいっ! マスターがいれば、宿代なんてあっという間ですっ!』
「何でエリスが胸張るのさ?」
いつの間にか人間体になってるエリスにそうツッコミを入れつつ廊下を歩いていると、ようやく目的地の部屋へと到着したらしい。
扉を開くと目に入るのは銀色を基調とした高級感あふれる内装だ。
椅子やテーブルなどの家具の多くがまず大きく。
壁に掛けられたランプの温かい光が部屋を照らしている。
部屋の隅にはキッチンもあり、そこで簡単な料理くらいはやれそうだ。
個室も用意されているらしく、確認できるだけでも四つ。
基本的な家具は一通り揃っているらしく、エリオット曰く簡易的な風呂まで別々に用意されているとのこと。
宿泊施設にしては、かなりの力の入れようだ。
「なんつーか、流石は最高級の部屋って感じだなぁ」
「お金は積んだんだし、これくらいはしてくれないとねー」
「しばらく歩きっぱなしだったから、ようやく一休みできるっスよ……」
と、三人は特に会話するでもなく各々が個室へと向かっていく。
そんな彼らを見送ってからエリスはこちらを見遣る。
「マスター。わたしたちも行きましょうか?」
「そうだね。流石にちょっと疲れたし……」
そうエリスに返しつつ、俺は彼女を連れ立って残りの部屋へと歩を進めた。
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