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第49話

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 ハルバ村を発って数日後の午前中。
 ようやく見えてきたのはルクレイアにも似た巨大な都市――グレイヴェン。
 
 クリスタリア大陸中央部に位置し、多くの冒険者がここを拠点に活動している。
 ゲームでも主人公くんたちもここを拠点に活動していたはずだ。

 街へ入るとまず目に入るのは多くの冒険者たちの姿。
 エリオットたちにも似た装備を身に着けた人たちが石畳の道を行き交っている。
 屈強な肉体をした漢って感じの奴らだったり。
 少々露出度の高い装備を身に着けた女性の冒険者もいたりする。
 
 道の左右には多くの店が立ち並んでいた。
 冒険者を相手に商売を営む店なのだろう。
 店頭には武器や装備、それに薬の類が見受けられた。


「――さて、到着して早々で悪いが。まずは大将のギルド登録を済ませねーとな」

「賛成。ここにいる以上は、最優先事項ね」

「確か、冒険者ランクに応じて値下げがされるんでしたっけ?」

 
 この辺りの説明はゲームでもされてた気がする。
 
 冒険者の街と言うだけあって冒険者ギルドと商業組合が提携しており。
 冒険者の活躍に応じて、品物が安くなったり。
 提供する商品が増えたりする感じだったか。

 無論、ランクが上がるごとに値下げは顕著になるし。
 商品もより効果や能力の高いものを提供してくれる。

 簡単に言えば、有名になればなるほど良いサービスを受けられるわけだ。
 
 
「そうっスね。買い物したいかもっスけど、仮登録の冒険者がここで買い物しようものなら商品一つで財布の中身がなくなるっス!」

「だから、しばらくヴァイアス様は買い物禁止ね? 行くなら、わたしたちの誰かに声かけてくれれば、一緒に行くから」

「分かりました」


 セリーナにそう返して、俺は彼らに続くようにして移動を開始。
 
 そうしてしばらく歩いていると、巨大な建造物が出迎えてくれた。
 おそらくは冒険者ギルド。
 ルクレイアの竜騎士団の宿舎に負けず劣らずな大きさだ。
 
 石で出来た壁にレンガ造りの屋根。
 一番上には旗が立てられていて、
 鳥の羽をイメージした冒険者ギルドを意味するのマークが描かれてる。

 そんな建物の扉を開いて中へ入れば、見事なまでの酒場であった。


「……酒くさっ!」


 思わず口からそんな言葉が漏れるのも仕方ない
 それほどまでに高濃度の酒の香りが充満しているのだ。
 それにしても朝っぱらから酒盛りとは。

 なんというか、想像していた冒険者っぽくて良い。
 割と好印象だ。

 とはいえ、そんな空気はエリスからすれば不快以外の何物でもないらしく。
 珍しく『マスター。わたし、ここ苦手ですぅ……』と背中で呟いた。
 しばらく人間体にならずに聖剣でいてもらおう。


「ははは、流石に大将にはキツかったか」

「早いとこ慣れた方が良いかもね。ルクレイアとかならともかく、ここの冒険者ギルドは基本的にこんな感じだから」

「わ、分かりました……」


 と、返しつつギルド奥にある受付へ移動する。
 道中、冒険者たちのこちらを射抜く視線が気になった。
 なんというか、羨望の眼差しと言うのだろうか。
 まるで、英雄でも見るかのような視線だ。

 一応、俺は勇者はあるけれど。流石にまだその話は出回ってないはず。
 そんな風に視線を努めて無視を決め込んで受付へ。

 そこには笑みを浮かべた女性が待っていた。


「おかえりなさい、エリオットさん。聞きましたよ? ギガムペデスの討伐に成功したんですってね! こちらでも噂になってますよ?」

「あはは……。相変わらず情報が早いなぁ……。――と、それよりもお願いがあるんだ。こちらの大将……いや、ヴァイアス様のギルド登録をお願いしたい」

「――ヴァイアス、様……?」


 今話題の冒険者パーティ翠葉の翼のリーダーが、
 『様』付けで呼ぶことに首を傾げつつ、彼女は俺へと視線を向ける。
 それからしばらくこちらを観察していると、その表情に変化が見られた。

 大きな瞳がこれでもかと開く。
 口も同じく大きく開いて、「ま、まままままま……まさ、か」と声を漏らす。
 汗は吹き出し、体は小刻みに震えている。

 あっ、これはマズイやつじゃね?
 などと思ったのも束の間。


「えぇぇっ! な、何で、勇者様がこんなとこにいるんですかっ!?」


 と、それなりに大きな声で叫んだ。
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