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第48話

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 翌朝、俺とエリスは父さんと母さんに見送られて家を発った。
 
 今生の別れでもないのに涙を流す母さんの姿に少し心が痛むが。
 それでも俺は歩みを止めない。何故なら、そう決めたのだから。

 そうしてハルバ村の入り口までやってくると。
 すでに翠葉の翼の面々は集合していた。
 

「おっ、来たな大将! ――と、メイドさん!?」


 と、俺の姿を視界に入れたエリオットが狼狽えた。
 気持ちは分かる。まさか、メイドが同伴とは思わないだろう。
 隣のカイルもセリーナも若干『マジかよ』みたいな顔してるし。


「た、大将……もしかして、彼女も連れてくつもりか?」


 代表してエリオットが問いかけてくる。
 連れてかない方が賢明だと顔に出てる。

 それはそうだ。どう見たってエリスは普通の女性にしか見えない。
 しかも身に着けた衣服はフリフリのメイド服。
 過酷な冒険に適した姿とは言えないものだ。

 だが俺の中に彼女を連れて行かない選択肢はない。
 何処の世界に聖剣を置いて冒険に出る勇者がいると言うのか。
 少なくとも、俺は絶対にそんなことはしたくない。


「その、俺の相棒なので……って、これは見せた方が早いか。――エリス」

「はい!」


 返事と同時にエリスが聖剣に早変わり。
 それから俺の背中に移動する。
 あまりにも現実離れした光景に三人は開いた口が塞がらないようだった。

 しばらく絶句していた三人だったが、やがて回復。


「まぁ、大将は勇者さまだもんな。なんでもありか……」

「そうっスね。こっちの常識で推し量れるお方では無いっスよ……」

「逆に考えれば、これからの冒険は安泰だから良いんじゃない……?」


 口々に言い始める。
 理解したというより、理解するのを投げたみたいな感じだ。
 開き直ったとすら思える。

 少し失礼じゃないだろうか。
 
 それじゃあまるで、俺が人外みたいじゃないか。
 確かに、勇者だから普通の人より一歩くらいは人外の域かもしれないが。
 人を辞めたわけではないつもりである。

 
「――よし。それじゃあ、大将も来たことだし。早速行くとするか!」

「そうね! 目指すは冒険者の街、グレイヴェンよ!」

「ルクレイアほどじゃないにしてもデカい街っスからね! 期待するっスよ!」

「よろしくお願いします!」


 そんなこんなでエリオットの号令を合図に俺たちは歩き出す。
 目的地である街――グレイヴェンまでは徒歩で移動するとのこと。
 
 竜騎士団に依頼して、ワイバーンに騎乗して移動はどうなのか。
 と、提案してみれば、『支払えるだけの金が無い』と却下された。
 やはり、ワイバーンでの送迎は高額らしかった。

 それはそうだ。日本だって移動手段で一番お高いのは飛行機だし。
 空の移動は早いが代わりに金がかかる。
 それは何処の世界も共通らしい。

 改めて、我が家の異常さを理解した思いだ。


「……行ってきます」


 入り口の門を潜り抜けたところで振り返り。
 小さくそう告げる。

 家にいるであろう両親の元に、この声が届くようにと願い。
 俺は翠葉の翼のメンバーとして故郷を発った。
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