エロゲの悪役に転生したけど、破滅するのは嫌なので全力で勇者を遂行します!!

ボッさん

文字の大きさ
上 下
48 / 57

第47話

しおりを挟む
 その日の晩御飯は非常に豪勢だった。
 
 テーブルいっぱいに並ぶ食事の数々に。
 珍しくワインまで並んでいる。


「いいかい、ヴァイアス。あまり無理はしちゃだめだよ? キミは勇者だが、同時に俺の息子だ。出来れば危険な目には遭ってほしくないからね」

「エリオットさん、セリーヌさん、カイルさんの言うことをよく聞いて。彼らから冒険者の何たるかを学ぶのよ? あっ、でも怪我だけはしないでね?」

 
 父さんと母さんは酒に酔ってるのか少々頬が赤く染まってる。
 普段以上に饒舌で、ついでに少々距離が近い。
 具体的には、ほとんど両親に物理的に挟まれてました。

 こうギューっと。

 気持ちは分かる。一人息子が家を出るわけだし。
 寂しいのは分かるけど、少しだけ離れてほしいと思う自分がいた。
 反抗期? いや違う、ただちょっと酒臭いだけだ。


「父さん、母さん、少し苦しいよ……」

「良いじゃないの~。しばらく会えなくなるんだから~」

「そうだね。今のうちに、息子の体温を感じてないと」


 そんなこんなで、二人が満足するまで一緒に過ごしたあと。
 
 現在は風呂の中。全裸のエリスの膝の上に俺はいた。
 王城でもあったように全身をくまなく洗われて。
 浴槽の中で抱かれるのはほとんど毎日の恒例行事である。

 だからと言うわけではないが。
 ここ最近は彼女の裸を見てもあまり狼狽えなくなってきた。
 他の女性の素肌を見ても同様である。

 もしかしたら、声もエリスの計算のうちなのだろうか。
 そう思わなくもない……。


「マスター、無事に冒険者パーティが見つかって良かったですね!」

「うん。これでようやく本格的にお金稼ぎが出来るよ」

「ふふっ。わたしには分かりますよ? マスターは、ただお金稼ぎがしたいわけじゃありませんよね?」

「……ははは、やっぱりバレた?」


 もちろんです、とばかりに俺を抱きしめる力が増す。
 背中に当たる胸の感触が強くなって少しだけ気恥ずかしい。
 
 
「憧れてたからね、冒険者になって未知の領域を冒険するっていうのに……」


 そんな感情が自分の中に芽生えたのはいつだったか。
 幼い頃に、父さんから聞かされた冒険譚を耳にしたときか。
 それとももっと昔から――それこそ前世からだろうか。

 アストレアへの誕生日プレゼントのために頑張りたい。
 それも本心だ。

 もちろん、魔王を倒すことを放棄したわけじゃない。
 今の俺がどう頑張ったところで魔王を打倒すことなんてできるわけがない。
 だから、強くなるための冒険したいと言うのも確かにある。

 などと考えていると、エリスが耳元に口を近づけてくる。
 彼女の息が当たって擽ったい。


「先代勇者様もそうでした……」

「そうなの?」

「はい。あの方は人に寄り添う優しさと魔物を退ける圧倒的な力。そして何より、子供の様に冒険を楽しむような方でしたから」

「魔物と争ってるのに?」

「えぇ。……あっ、でも冒険は魔王を打倒してからしてましたよ?」


 エリスの言葉が本当ならば。
 先代勇者が世界各国を巡り歩いたなんて話があるのも、
 実は魔王軍の残党を倒す旅では無かったのかもしれない。
 
 普通に冒険を楽しんでいた。そう思うと、途端に親近感が湧いてくる。
 まぁ、最初から同じ勇者ですけれど。


「だからと言うわけではありませんが、わたしはこの冒険寄り道に口出しするつもりはありません。きっと、これも勇者にとっては必要なことだと思うから」


 魔王を倒すのが最優先だと、冒険を止めることだってできるのに。
 エリスは俺の意志を尊重してくれるらしい。
 だが、もしもやりすぎるならば止めますとのこと。

 それはそれで非常に助かる。
 何せ、放っておいたら普通に冒険を楽しんでしまいそうな自分がいるから。
 

「いずれにしても。わたしはマスターの決定に従いますよ? わたしはあなたのための相棒聖剣ですから……」

「……うん、ありがとう。エリス」

「……ところでマスターの体が少しだけ大きく硬くなってきましたね。大人の男性に近づいてきた気がします……!」

「……エリスは相変わらずだね」


 ちょっぴりいい話をしていたのに、この聖剣は……。
 
 やっぱり淫魔族でいいんじゃないだろうか?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

捨て子の僕が公爵家の跡取り⁉~喋る聖剣とモフモフに助けられて波乱の人生を生きてます~

伽羅
ファンタジー
 物心がついた頃から孤児院で育った僕は高熱を出して寝込んだ後で自分が転生者だと思い出した。そして10歳の時に孤児院で火事に遭遇する。もう駄目だ! と思った時に助けてくれたのは、不思議な聖剣だった。その聖剣が言うにはどうやら僕は公爵家の跡取りらしい。孤児院を逃げ出した僕は聖剣とモフモフに助けられながら生家を目指す。

これダメなクラス召喚だわ!物を掌握するチートスキルで自由気ままな異世界旅

聖斗煉
ファンタジー
クラス全体で異世界に呼び出された高校生の主人公が魔王軍と戦うように懇願される。しかし、主人公にはしょっぱい能力しか与えられなかった。ところがである。実は能力は騙されて弱いものと思い込まされていた。ダンジョンに閉じ込められて死にかけたときに、本当は物を掌握するスキルだったことを知るーー。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~

ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。 玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。 「きゅう、痩せたか?それに元気もない」 ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。 だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。 「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」 この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

処理中です...