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第47話
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その日の晩御飯は非常に豪勢だった。
テーブルいっぱいに並ぶ食事の数々に。
珍しくワインまで並んでいる。
「いいかい、ヴァイアス。あまり無理はしちゃだめだよ? キミは勇者だが、同時に俺の息子だ。出来れば危険な目には遭ってほしくないからね」
「エリオットさん、セリーヌさん、カイルさんの言うことをよく聞いて。彼らから冒険者の何たるかを学ぶのよ? あっ、でも怪我だけはしないでね?」
父さんと母さんは酒に酔ってるのか少々頬が赤く染まってる。
普段以上に饒舌で、ついでに少々距離が近い。
具体的には、ほとんど両親に物理的に挟まれてました。
こうギューっと。
気持ちは分かる。一人息子が家を出るわけだし。
寂しいのは分かるけど、少しだけ離れてほしいと思う自分がいた。
反抗期? いや違う、ただちょっと酒臭いだけだ。
「父さん、母さん、少し苦しいよ……」
「良いじゃないの~。しばらく会えなくなるんだから~」
「そうだね。今のうちに、息子の体温を感じてないと」
そんなこんなで、二人が満足するまで一緒に過ごしたあと。
現在は風呂の中。全裸のエリスの膝の上に俺はいた。
王城でもあったように全身をくまなく洗われて。
浴槽の中で抱かれるのはほとんど毎日の恒例行事である。
だからと言うわけではないが。
ここ最近は彼女の裸を見てもあまり狼狽えなくなってきた。
他の女性の素肌を見ても同様である。
もしかしたら、声もエリスの計算のうちなのだろうか。
そう思わなくもない……。
「マスター、無事に冒険者パーティが見つかって良かったですね!」
「うん。これでようやく本格的にお金稼ぎが出来るよ」
「ふふっ。わたしには分かりますよ? マスターは、ただお金稼ぎがしたいわけじゃありませんよね?」
「……ははは、やっぱりバレた?」
もちろんです、とばかりに俺を抱きしめる力が増す。
背中に当たる胸の感触が強くなって少しだけ気恥ずかしい。
「憧れてたからね、冒険者になって未知の領域を冒険するっていうのに……」
そんな感情が自分の中に芽生えたのはいつだったか。
幼い頃に、父さんから聞かされた冒険譚を耳にしたときか。
それとももっと昔から――それこそ前世からだろうか。
アストレアへの誕生日プレゼントのために頑張りたい。
それも本心だ。
もちろん、魔王を倒すことを放棄したわけじゃない。
今の俺がどう頑張ったところで魔王を打倒すことなんてできるわけがない。
だから、強くなるための冒険したいと言うのも確かにある。
などと考えていると、エリスが耳元に口を近づけてくる。
彼女の息が当たって擽ったい。
「先代勇者様もそうでした……」
「そうなの?」
「はい。あの方は人に寄り添う優しさと魔物を退ける圧倒的な力。そして何より、子供の様に冒険を楽しむような方でしたから」
「魔物と争ってるのに?」
「えぇ。……あっ、でも冒険は魔王を打倒してからしてましたよ?」
エリスの言葉が本当ならば。
先代勇者が世界各国を巡り歩いたなんて話があるのも、
実は魔王軍の残党を倒す旅では無かったのかもしれない。
普通に冒険を楽しんでいた。そう思うと、途端に親近感が湧いてくる。
まぁ、最初から同じ勇者ですけれど。
「だからと言うわけではありませんが、わたしはこの冒険に口出しするつもりはありません。きっと、これも勇者にとっては必要なことだと思うから」
魔王を倒すのが最優先だと、冒険を止めることだってできるのに。
エリスは俺の意志を尊重してくれるらしい。
だが、もしもやりすぎるならば止めますとのこと。
それはそれで非常に助かる。
何せ、放っておいたら普通に冒険を楽しんでしまいそうな自分がいるから。
「いずれにしても。わたしはマスターの決定に従いますよ? わたしはあなたのための相棒ですから……」
「……うん、ありがとう。エリス」
「……ところでマスターの体が少しだけ大きく硬くなってきましたね。大人の男性に近づいてきた気がします……!」
「……エリスは相変わらずだね」
ちょっぴりいい話をしていたのに、この聖剣は……。
やっぱり淫魔族でいいんじゃないだろうか?
テーブルいっぱいに並ぶ食事の数々に。
珍しくワインまで並んでいる。
「いいかい、ヴァイアス。あまり無理はしちゃだめだよ? キミは勇者だが、同時に俺の息子だ。出来れば危険な目には遭ってほしくないからね」
「エリオットさん、セリーヌさん、カイルさんの言うことをよく聞いて。彼らから冒険者の何たるかを学ぶのよ? あっ、でも怪我だけはしないでね?」
父さんと母さんは酒に酔ってるのか少々頬が赤く染まってる。
普段以上に饒舌で、ついでに少々距離が近い。
具体的には、ほとんど両親に物理的に挟まれてました。
こうギューっと。
気持ちは分かる。一人息子が家を出るわけだし。
寂しいのは分かるけど、少しだけ離れてほしいと思う自分がいた。
反抗期? いや違う、ただちょっと酒臭いだけだ。
「父さん、母さん、少し苦しいよ……」
「良いじゃないの~。しばらく会えなくなるんだから~」
「そうだね。今のうちに、息子の体温を感じてないと」
そんなこんなで、二人が満足するまで一緒に過ごしたあと。
現在は風呂の中。全裸のエリスの膝の上に俺はいた。
王城でもあったように全身をくまなく洗われて。
浴槽の中で抱かれるのはほとんど毎日の恒例行事である。
だからと言うわけではないが。
ここ最近は彼女の裸を見てもあまり狼狽えなくなってきた。
他の女性の素肌を見ても同様である。
もしかしたら、声もエリスの計算のうちなのだろうか。
そう思わなくもない……。
「マスター、無事に冒険者パーティが見つかって良かったですね!」
「うん。これでようやく本格的にお金稼ぎが出来るよ」
「ふふっ。わたしには分かりますよ? マスターは、ただお金稼ぎがしたいわけじゃありませんよね?」
「……ははは、やっぱりバレた?」
もちろんです、とばかりに俺を抱きしめる力が増す。
背中に当たる胸の感触が強くなって少しだけ気恥ずかしい。
「憧れてたからね、冒険者になって未知の領域を冒険するっていうのに……」
そんな感情が自分の中に芽生えたのはいつだったか。
幼い頃に、父さんから聞かされた冒険譚を耳にしたときか。
それとももっと昔から――それこそ前世からだろうか。
アストレアへの誕生日プレゼントのために頑張りたい。
それも本心だ。
もちろん、魔王を倒すことを放棄したわけじゃない。
今の俺がどう頑張ったところで魔王を打倒すことなんてできるわけがない。
だから、強くなるための冒険したいと言うのも確かにある。
などと考えていると、エリスが耳元に口を近づけてくる。
彼女の息が当たって擽ったい。
「先代勇者様もそうでした……」
「そうなの?」
「はい。あの方は人に寄り添う優しさと魔物を退ける圧倒的な力。そして何より、子供の様に冒険を楽しむような方でしたから」
「魔物と争ってるのに?」
「えぇ。……あっ、でも冒険は魔王を打倒してからしてましたよ?」
エリスの言葉が本当ならば。
先代勇者が世界各国を巡り歩いたなんて話があるのも、
実は魔王軍の残党を倒す旅では無かったのかもしれない。
普通に冒険を楽しんでいた。そう思うと、途端に親近感が湧いてくる。
まぁ、最初から同じ勇者ですけれど。
「だからと言うわけではありませんが、わたしはこの冒険に口出しするつもりはありません。きっと、これも勇者にとっては必要なことだと思うから」
魔王を倒すのが最優先だと、冒険を止めることだってできるのに。
エリスは俺の意志を尊重してくれるらしい。
だが、もしもやりすぎるならば止めますとのこと。
それはそれで非常に助かる。
何せ、放っておいたら普通に冒険を楽しんでしまいそうな自分がいるから。
「いずれにしても。わたしはマスターの決定に従いますよ? わたしはあなたのための相棒ですから……」
「……うん、ありがとう。エリス」
「……ところでマスターの体が少しだけ大きく硬くなってきましたね。大人の男性に近づいてきた気がします……!」
「……エリスは相変わらずだね」
ちょっぴりいい話をしていたのに、この聖剣は……。
やっぱり淫魔族でいいんじゃないだろうか?
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