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第45話

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「……おい、大将。アンタ、もしかして良いところの坊ちゃんかい?」


 翌日の朝。ハルバ村の入り口にて。
 再び集合したときにエリオットが顔を引き攣らせて問いかけてくる。
 視線は俺の隣。つまりはメイド服姿のエリスに向けられてる。


 カイルなんかはエリスの胸をガン見だ。鼻の下も伸びてる。
 気持ちは分かるがそろそろ止めたげて。エリスが不機嫌になるから。
 あっ、セリーナにどつかれた。

 ちなみに今は天使の羽を収納しているので。
 普通に人間の女性にしか見えない。
 器用なことが出来る聖剣様だ。
 

「裕福と言えば、裕福ですね……」

「そうか……。俺たちに出来る範囲でお礼をと思ったんだが。その様子じゃ、金に困ってるわけでもなさそうだしよ……」

「いえ、実は結構金には困っていまして……」

「マジかよ。じゃあ、これいるか?」


 と、エリオットが掲げるのは小さな痣袋。
 動かすたびにチャリチャリと音を奏でる。
 
 それなりの額が入っているみたいだが、
 貰ったところで目標額には全然届かないので遠慮する。
 あなたたちのお金だ。あなたたちで使ってくれ。

 そう突き返すと、「貴族なのにできた奴だよアンタは」と苦笑された。
 もしかして、貴族相手に苦労した口か?


「金も要らねぇとなると、ますますどうするか……」

「あっ。じゃあ、カイルの秘蔵のお宝から一品好きなの上げるとかはどう?」

「僕のお宝、魔剣やらの曰く付きばかりっスけど……」


 魔剣!? なんだ、その興味惹かれる言葉は。
 やっぱりアレか?
 装備すると強い力を得られるが、代償に装備が外せなくなるとかだろうか。
 それとも体力か魔力が常に消費されるとか、そんな感じか?

 ゲームには出なかったから普通に興味が湧くんだが?


「やめとけ、やめとけ。そんなもん。大将にやれるわけねーだろ。――見ろ、隣のメイドさんの表情。渡したら殺されるぞ」


 エリオットの指摘に俺は彼女を見据える。
 確かに、渡したら殺すとばかりの雰囲気を出してる。
 笑顔を張り付けてるのに圧が凄い。
 『渡したらどうなるか分かってんだなろうな? ああん?』って感じだ。

 まぁ、彼女の場合はただ俺が他の武器を使うのが我慢ならないだけだろう。
 自分が勇者マスターの唯一無二の相棒だと主張しているだけだ。


「じゃあ、どうするっスか……?」

「命救われて、『ありがとう、またねー』は、流石にねぇ……」

「だな。翠葉の翼の沽券にかかわる」


 三人そろって腕を組み、うんうん唸る。
 そんな三人を観察していると、エリスが耳元に口を近づけてくる。


「マスター。これはチャンスでは?」

「チャンス?」

「はい。今マスターは自分を受け入れてくれる熟練冒険者パーティを探してるわけですし。彼らにお願いしてみるのはどうでしょう?」


 エリスに言われてそういえばと思い至る。
 確かに『翠葉の翼』であれば、実力も父さんのお墨付きだし。
 きっと彼らの元なら父さんも許してくれるはず。

 と、そう考えているとエリオットらがこちらを見据えているのに気づく。


「なんだ、大将。冒険者になりたいのか?」


 どうやら俺たちの会話が耳に入ったらしい。
 

「ですね。込み入った事情がありまして。冒険者として働いてはいるけど、Gランク級以上は他の冒険者パーティの護衛付きでないと許してくれなくて」

「なんつーか、過保護な親だなぁ……」

「坊ちゃん程の実力者なら、護衛なんて必要無さそうっスけどね……」

「そこはほら。お貴族様の事情ってやつなんじゃない?」


 お貴族様というか、『勇者』ですからね。
 全てを説明すれば確実に拒否される気がしたので詳細は伏せる。
 
 そうして俺の加入?
 を、前向きに考えてくれないかと頼み込んだところ。
 
 しばらく三人で協議開始。
 あれやこれやと話し合って、最終的には加入を良しとしたらしい。


「大将の実力なら問題ない、ってことで……。良いぜ、命を救われたからな!」

「ようこそ! 翠葉の翼へ!」

「歓迎するっスよ!」


 思いがけず俺は冒険者パーティへの加入に成功したのだった。
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