37 / 57
第36話
しおりを挟む
(――まさか、アストレアが婚約者になるとは……)
故郷の村への帰路の最中。
クロヴァルのワイバーンの背でそんなことを考える。
元々彼女とは敵対する気は無かったが。
まさか婚約者になるとは。
俺たちゲームじゃ敵対同士なのに。
恋人になるルートも快楽堕ちみたいな感じで、恋愛の『れ』の字もないぞ?
それなのに、こうも簡単に関係が進むとは。
流石に予想外だ……。
「マスター、本当に婚約者になるつもりなんですか?」
「ん? 何で?」
「だって、婚約者って結構面倒くさそうでしたよ?」
背中に座るエリスがそう言う。
婚約者になれば、様々なことに参加しなくてはならなくなる。
例えば誕生日パーティ。
仮にダンスパーティになれば、その相手を務めなければならないし。
プレゼントだって準備しなくてはいけないだろう。
勇者は魔王討伐で忙しいのに。
そんなことしてて大丈夫なのか?
と、エリスはそう言っているのだ。
「ちなみに、それって誰情報なの?」
「わたしを抜きに来た王族の誰かが言ってました!」
「な、なるほど……」
確かに、王族って気苦労絶えなさそうだもんな……。
などと考えながら、俺は前に跨るクロヴァルに声を掛ける。
「クロヴァルさん」
「はい、なんでしょう」
「アストレアみたいな王族って、毎年パーティ開催するんですか?」
「そんなことはありませんとも」
クロヴァルは即座に首を横に振って否定した。
今回の俺の誕生日パーティは勇者の誕生を祝うのも一つだが。
その存在を国民に知らしめる意味でも開いたとのことらしい。
普通は10歳と15歳のときに、計二回大きなものを開くのだとか。
ちなみにこの世界では15歳で成人認定らしいので。
15歳の誕生日パーティは酒盛りになりがちだそうだ。
「10歳の誕生日――だいたい三年程か……」
「何がですか?」
「アストレアの誕生日だよ」
七歳だと言っていたからな。
婚約者として参加するべき誕生日パーティまでは三年あるということだ。
それまでに色々準備しないといけない。
ダンスパーティが開催されるなら当然相手は俺だろうから。
アストレアの面目を潰さないためにも、練習は必須だし。
他にも誕生日プレゼントだって――――
「……あっ」
そこまで考えて俺は気づいた。
俺って無一文じゃないか。
働いていないのだから当然だが。
小遣いの一つも貰っていない俺にプレゼントなんて用意できるわけがない。
早くも厄介な壁が俺の前に立ちはだかってきたぞ。
婚約者なのにプレゼントも用意できないなんて。
甲斐性無しにもほどがある。
もしも、それでアストレアの機嫌を損ねてみろ。
物理的に首が飛ぶだろうか……?
分からないが、そんなの嫌だ。
「……こうなったら、働くしかないな」
お金が無いなら稼げばいいじゃない。
まだ五歳のガキではあるが、そんな俺でも働ける場所を一つ知ってるし。
「働くですか……? あの、ご両親のお手伝いとかですかね?」
「それも良いけど、もっと効率的に稼げる場所に行こうかな」
その名も冒険者ギルド。
その気さえあれば、老若男女関係なく働ける場所である。
仕事内容は、魔物討伐から地域貢献まで幅広く。
ゴロツキから貴族まで、幅広い人員が所属している。
たまに冒険者同士で依頼の取り合いなんかもあるそうだが。
命の取り合いにまでは発展しない……はずである。
命を懸ける仕事もあるわけだから、場合によっては報酬も期待できる。
一攫千金も夢ではないのだ。
「凄く胡散臭いんですけど……。そんなところに行って大丈夫ですか?」
「多分大丈夫だよ。だって、父さんだって冒険者なんだから」
帰ったら父さんに、次の冒険に連れてってもらえないか相談してみよう。
グリムヴェルスとの戦いでは泣かれてしまったから。
もしかしたら、反対されるかもしれないが……。
まぁ、その時は諦めて別の方法でも模索するとしよう。
故郷の村への帰路の最中。
クロヴァルのワイバーンの背でそんなことを考える。
元々彼女とは敵対する気は無かったが。
まさか婚約者になるとは。
俺たちゲームじゃ敵対同士なのに。
恋人になるルートも快楽堕ちみたいな感じで、恋愛の『れ』の字もないぞ?
それなのに、こうも簡単に関係が進むとは。
流石に予想外だ……。
「マスター、本当に婚約者になるつもりなんですか?」
「ん? 何で?」
「だって、婚約者って結構面倒くさそうでしたよ?」
背中に座るエリスがそう言う。
婚約者になれば、様々なことに参加しなくてはならなくなる。
例えば誕生日パーティ。
仮にダンスパーティになれば、その相手を務めなければならないし。
プレゼントだって準備しなくてはいけないだろう。
勇者は魔王討伐で忙しいのに。
そんなことしてて大丈夫なのか?
と、エリスはそう言っているのだ。
「ちなみに、それって誰情報なの?」
「わたしを抜きに来た王族の誰かが言ってました!」
「な、なるほど……」
確かに、王族って気苦労絶えなさそうだもんな……。
などと考えながら、俺は前に跨るクロヴァルに声を掛ける。
「クロヴァルさん」
「はい、なんでしょう」
「アストレアみたいな王族って、毎年パーティ開催するんですか?」
「そんなことはありませんとも」
クロヴァルは即座に首を横に振って否定した。
今回の俺の誕生日パーティは勇者の誕生を祝うのも一つだが。
その存在を国民に知らしめる意味でも開いたとのことらしい。
普通は10歳と15歳のときに、計二回大きなものを開くのだとか。
ちなみにこの世界では15歳で成人認定らしいので。
15歳の誕生日パーティは酒盛りになりがちだそうだ。
「10歳の誕生日――だいたい三年程か……」
「何がですか?」
「アストレアの誕生日だよ」
七歳だと言っていたからな。
婚約者として参加するべき誕生日パーティまでは三年あるということだ。
それまでに色々準備しないといけない。
ダンスパーティが開催されるなら当然相手は俺だろうから。
アストレアの面目を潰さないためにも、練習は必須だし。
他にも誕生日プレゼントだって――――
「……あっ」
そこまで考えて俺は気づいた。
俺って無一文じゃないか。
働いていないのだから当然だが。
小遣いの一つも貰っていない俺にプレゼントなんて用意できるわけがない。
早くも厄介な壁が俺の前に立ちはだかってきたぞ。
婚約者なのにプレゼントも用意できないなんて。
甲斐性無しにもほどがある。
もしも、それでアストレアの機嫌を損ねてみろ。
物理的に首が飛ぶだろうか……?
分からないが、そんなの嫌だ。
「……こうなったら、働くしかないな」
お金が無いなら稼げばいいじゃない。
まだ五歳のガキではあるが、そんな俺でも働ける場所を一つ知ってるし。
「働くですか……? あの、ご両親のお手伝いとかですかね?」
「それも良いけど、もっと効率的に稼げる場所に行こうかな」
その名も冒険者ギルド。
その気さえあれば、老若男女関係なく働ける場所である。
仕事内容は、魔物討伐から地域貢献まで幅広く。
ゴロツキから貴族まで、幅広い人員が所属している。
たまに冒険者同士で依頼の取り合いなんかもあるそうだが。
命の取り合いにまでは発展しない……はずである。
命を懸ける仕事もあるわけだから、場合によっては報酬も期待できる。
一攫千金も夢ではないのだ。
「凄く胡散臭いんですけど……。そんなところに行って大丈夫ですか?」
「多分大丈夫だよ。だって、父さんだって冒険者なんだから」
帰ったら父さんに、次の冒険に連れてってもらえないか相談してみよう。
グリムヴェルスとの戦いでは泣かれてしまったから。
もしかしたら、反対されるかもしれないが……。
まぁ、その時は諦めて別の方法でも模索するとしよう。
127
お気に入りに追加
422
あなたにおすすめの小説
鬼畜なエロゲ世界にモブ転生!?このままだと鬱ENDらしいので、ヒロイン全員寝取ってハピエン目指します!
ぽんぽこ@書籍発売中!!
ファンタジー
「助けて、このままじゃヒロインに殺される……!!」
気が付いたら俺はエロゲーム世界のモブキャラになっていた。
しかしこのエロゲー、ただヒロインを攻略してエッチなことを楽しむヌルいゲームではない。
主人公の死=世界の崩壊を迎える『ハイスクール・クライシス』というクソゲーだったのだ。
ついでに俺がなっちまったのは、どのルートを選んでも暗殺者であるヒロインたちに殺されるモブキャラクター。このままではゲームオーバーを迎えるのは確定事項。
「俺は諦めねぇぞ……トワりんとのハッピーエンドを見付けるまでは……!!」
モブヒロインの家庭科教師に恋した俺は、彼女との幸せな結末を迎えるルートを探すため、エロゲー特有のアイテムを片手に理不尽な『ハイクラ』世界の攻略をすることにした。
だが、最初のイベントで本来のエロゲー主人公がとんでもないことに……!?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
英雄に幼馴染を寝取られたが、物語の完璧美少女メインヒロインに溺愛されてしまった自称脇役の青年の恋愛事情
灰色の鼠
ファンタジー
・他サイト総合日間ランキング1位!
・総合週間ランキング1位!
・ラブコメ日間ランキング1位!
・ラブコメ週間ランキング1位!
・ラブコメ月間ランキング1位獲得!
魔王を討ちとったハーレム主人公のような英雄リュートに結婚を誓い合った幼馴染を奪い取られてしまった脇役ヘリオス。
幼いころから何かの主人公になりたいと願っていたが、どんなに努力をしても自分は舞台上で活躍するような英雄にはなれないことを認め、絶望する。
そんな彼のことを、主人公リュートと結ばれなければならない物語のメインヒロインが異様なまでに執着するようになり、いつしか溺愛されてしまう。
これは脇役モブと、美少女メインヒロインを中心に起きる様々なトラブルを描いたラブコメである———
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
異世界に行ったら才能に満ち溢れていました
みずうし
ファンタジー
銀行に勤めるそこそこ頭はイイところ以外に取り柄のない23歳青山 零 は突如、自称神からの死亡宣言を受けた。そして気がついたら異世界。
異世界ではまるで別人のような体になった零だが、その体には類い稀なる才能が隠されていて....
異世界でチート能力貰えるそうなので、のんびり牧場生活(+α)でも楽しみます
ユーリ
ファンタジー
仕事帰り。毎日のように続く多忙ぶりにフラフラしていたら突然訪れる衝撃。
何が起こったのか分からないうちに意識を失くし、聞き覚えのない声に起こされた。
生命を司るという女神に、自分が死んだことを聞かされ、別の世界での過ごし方を聞かれ、それに答える
そして気がつけば、広大な牧場を経営していた
※不定期更新。1話ずつ完成したら更新して行きます。
7/5誤字脱字確認中。気づいた箇所あればお知らせください。
5/11 お気に入り登録100人!ありがとうございます!
8/1 お気に入り登録200人!ありがとうございます!
せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
勇者に大切な人達を寝取られた結果、邪神が目覚めて人類が滅亡しました。
レオナール D
ファンタジー
大切な姉と妹、幼なじみが勇者の従者に選ばれた。その時から悪い予感はしていたのだ。
田舎の村に生まれ育った主人公には大切な女性達がいた。いつまでも一緒に暮らしていくのだと思っていた彼女らは、神託によって勇者の従者に選ばれて魔王討伐のために旅立っていった。
旅立っていった彼女達の無事を祈り続ける主人公だったが……魔王を倒して帰ってきた彼女達はすっかり変わっており、勇者に抱きついて媚びた笑みを浮かべていた。
青年が大切な人を勇者に奪われたとき、世界の破滅が幕を開く。
恐怖と狂気の怪物は絶望の底から生まれ落ちたのだった……!?
※カクヨムにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる