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第35話
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翌日の昼頃。俺は家族を引き連れて城前に来ていた。
誕生日パーティも終わった。魔物も倒して平和も維持できた。
そうなると、これ以上ここに残る理由ない。
つまり、家に帰る時がやって来たのだった。
「先日は、俺のために誕生日パーティまで催してくださって、ありがとうございました。とても有意義な数日間でした」
「いや、気にしないでくれ。むしろ、感謝するのはこちらの方だ。よく魔物を倒してくれたな。国の王として感謝する」
そう言って、目だけ伏せるアルフレッド。
それから顔を上げると、眉を潜めてこちらを見据えた。
「本当なら、聖剣とは別に何か送るべきなのだろうが……」
「いえ、気にしないでください! 俺は彼女を頂けるだけで嬉しいですから!」
そう、エリスは俺についてくることになった。
そもそも聖剣女神様が勇者に向けて授けた剣だ。
当然の流れだともいえる。
だが、そうなると浮上してきたのは結界問題。
今まで結界を張り、魔物の脅威から王都を守ってきたのは他でもないエリスだ。
そんな彼女が王都を離れて大丈夫なのかと臣下の間で話が出たらしい。
しかし、そこは女神様の聖剣。
自分がここにいなくとも維持の可能な結界を張り直して見せた。
そうしてあっという間に問題解決。
エリスの同行は滞りなく決まったのだった。
「そう言ってくれるのは嬉しいが、やはりこういうのはきちんとしてた方が――」
「アルフレッドさま~」
困り顔のアルフレッドの声を遮ったのは妻のリリィ。
相変わらず美しい笑顔を浮かべて夫の傍に立っていた。
そんな彼女はアルフレッドの耳元に口を近づける。
「この際です。アストレアを嫁にやるのはいかかでしょう?」
「アストレアを……?」
「ええ。最初は婚約という形ですが、ゆくゆくは……」
と、コソコソ話しているようだがバッチリ聞こえる。
時折こっちを見てくるし。アストレアの方も見てる。
もしかして、聞こえるように言ってます?
どうなのかとアストレアを見てみると、彼女は苦笑するだけだった。
ちょっとは赤面するかもと思っていたが、意外な反応だ。
もしかして、婚約云々に関しては何とも思っていないのだろうか。
いや、彼女は国の姫なわけだし。
政治的な理由で嫁に出されるのはとっくに覚悟してるのかもしれない。
じゃあ次はと、父と母を見据えてみれば。
二人ともアストレアと同じような反応だ。
特に母さんは自分の兄夫婦のバレバレな耳打ちに呆れてるような気もする。
それからしばらく話が続き、とうとう両親もその会話に混ざり始める。
どうも、この話は長くなりそうだ。
そう思ってアストレアの方へと歩き出した。
「すまないな。お父様とお母様が迷惑をかけるよ」
「気にしないでいいよ。それより君は良いのか?」
「ん? 婚約のことか? まぁ、何処ぞの貴族に貰われるよりは、キミの方が好ましいからな。わたしとしては構わないよ」
おっと、思った以上に乗り気だ。
ゲームのアストレアはもう少し恋愛に対して奥手だった気がするけど。
何事もなく姫を続ける彼女はそうでもないようだ。
今もクスクスと微笑むと、
「そういうキミはどうなんだ? わたしとは嫌かい?」
と、挑発するかのような物言いで迫ってくる。
微笑みながら流し目でこちらを見てくる姿は少々色っぽい。
少しだけ心臓が跳ねてしまった。
流石はゲームのメインヒロイン。破壊力が半端ではない。
これがゲームなら選択肢が肯定的なもので埋め尽くされてたことだろう。
などと考えていると、肩が掴まれそのまま引っ張られる。
そうして体制を崩した俺を抱え込んだのはエリスだった。
「ヴァイアス様は魔王を打倒すお方です。恋にかまけてる時間はありません」
「ふむ。確かに魔王討伐は早急に何とかするべき事案だ。しかし、勇者の使命でヴァイアスの自由を拘束するのはどうなんだ? 恋愛くらいは構わないだろう?」
頬を膨らませて不満げな様子のエリス。
余裕の笑みを浮かべたアストレア。
双方一歩も引かずに視線を交わしている。
幻覚じゃなければ交差する視線の間に稲妻が走ってるようにも見える。
キミたち昨日は仲良くしていたはずだよな。
エリスがアストレアに素っ気ない態度を取ってないだけマシだが。
これは果たしていい傾向なのだろうか。
そう思っていると、どうやら両親たちの方で進展があったらしい。
「ヴァイアス」「アストレア」
お互いに名を呼ばれて両親の元へ。
エリスは俺の真横に陣取った。
さて、両親同士のお話はどのような決着を見せたのか。
そう考えながら、父さんの言葉を待ってると。
彼は俺の肩に手を乗せて笑った。
「今日から、アストレアはヴァイアスの婚約者だよ」
そう割とあっさり説明された。
誕生日パーティも終わった。魔物も倒して平和も維持できた。
そうなると、これ以上ここに残る理由ない。
つまり、家に帰る時がやって来たのだった。
「先日は、俺のために誕生日パーティまで催してくださって、ありがとうございました。とても有意義な数日間でした」
「いや、気にしないでくれ。むしろ、感謝するのはこちらの方だ。よく魔物を倒してくれたな。国の王として感謝する」
そう言って、目だけ伏せるアルフレッド。
それから顔を上げると、眉を潜めてこちらを見据えた。
「本当なら、聖剣とは別に何か送るべきなのだろうが……」
「いえ、気にしないでください! 俺は彼女を頂けるだけで嬉しいですから!」
そう、エリスは俺についてくることになった。
そもそも聖剣女神様が勇者に向けて授けた剣だ。
当然の流れだともいえる。
だが、そうなると浮上してきたのは結界問題。
今まで結界を張り、魔物の脅威から王都を守ってきたのは他でもないエリスだ。
そんな彼女が王都を離れて大丈夫なのかと臣下の間で話が出たらしい。
しかし、そこは女神様の聖剣。
自分がここにいなくとも維持の可能な結界を張り直して見せた。
そうしてあっという間に問題解決。
エリスの同行は滞りなく決まったのだった。
「そう言ってくれるのは嬉しいが、やはりこういうのはきちんとしてた方が――」
「アルフレッドさま~」
困り顔のアルフレッドの声を遮ったのは妻のリリィ。
相変わらず美しい笑顔を浮かべて夫の傍に立っていた。
そんな彼女はアルフレッドの耳元に口を近づける。
「この際です。アストレアを嫁にやるのはいかかでしょう?」
「アストレアを……?」
「ええ。最初は婚約という形ですが、ゆくゆくは……」
と、コソコソ話しているようだがバッチリ聞こえる。
時折こっちを見てくるし。アストレアの方も見てる。
もしかして、聞こえるように言ってます?
どうなのかとアストレアを見てみると、彼女は苦笑するだけだった。
ちょっとは赤面するかもと思っていたが、意外な反応だ。
もしかして、婚約云々に関しては何とも思っていないのだろうか。
いや、彼女は国の姫なわけだし。
政治的な理由で嫁に出されるのはとっくに覚悟してるのかもしれない。
じゃあ次はと、父と母を見据えてみれば。
二人ともアストレアと同じような反応だ。
特に母さんは自分の兄夫婦のバレバレな耳打ちに呆れてるような気もする。
それからしばらく話が続き、とうとう両親もその会話に混ざり始める。
どうも、この話は長くなりそうだ。
そう思ってアストレアの方へと歩き出した。
「すまないな。お父様とお母様が迷惑をかけるよ」
「気にしないでいいよ。それより君は良いのか?」
「ん? 婚約のことか? まぁ、何処ぞの貴族に貰われるよりは、キミの方が好ましいからな。わたしとしては構わないよ」
おっと、思った以上に乗り気だ。
ゲームのアストレアはもう少し恋愛に対して奥手だった気がするけど。
何事もなく姫を続ける彼女はそうでもないようだ。
今もクスクスと微笑むと、
「そういうキミはどうなんだ? わたしとは嫌かい?」
と、挑発するかのような物言いで迫ってくる。
微笑みながら流し目でこちらを見てくる姿は少々色っぽい。
少しだけ心臓が跳ねてしまった。
流石はゲームのメインヒロイン。破壊力が半端ではない。
これがゲームなら選択肢が肯定的なもので埋め尽くされてたことだろう。
などと考えていると、肩が掴まれそのまま引っ張られる。
そうして体制を崩した俺を抱え込んだのはエリスだった。
「ヴァイアス様は魔王を打倒すお方です。恋にかまけてる時間はありません」
「ふむ。確かに魔王討伐は早急に何とかするべき事案だ。しかし、勇者の使命でヴァイアスの自由を拘束するのはどうなんだ? 恋愛くらいは構わないだろう?」
頬を膨らませて不満げな様子のエリス。
余裕の笑みを浮かべたアストレア。
双方一歩も引かずに視線を交わしている。
幻覚じゃなければ交差する視線の間に稲妻が走ってるようにも見える。
キミたち昨日は仲良くしていたはずだよな。
エリスがアストレアに素っ気ない態度を取ってないだけマシだが。
これは果たしていい傾向なのだろうか。
そう思っていると、どうやら両親たちの方で進展があったらしい。
「ヴァイアス」「アストレア」
お互いに名を呼ばれて両親の元へ。
エリスは俺の真横に陣取った。
さて、両親同士のお話はどのような決着を見せたのか。
そう考えながら、父さんの言葉を待ってると。
彼は俺の肩に手を乗せて笑った。
「今日から、アストレアはヴァイアスの婚約者だよ」
そう割とあっさり説明された。
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