エロゲの悪役に転生したけど、破滅するのは嫌なので全力で勇者を遂行します!!

ボッさん

文字の大きさ
上 下
36 / 57

第35話

しおりを挟む
 翌日の昼頃。俺は家族を引き連れて城前に来ていた。
 誕生日パーティも終わった。魔物も倒して平和も維持できた。
 そうなると、これ以上ここに残る理由ない。

 つまり、家に帰る時がやって来たのだった。


「先日は、俺のために誕生日パーティまで催してくださって、ありがとうございました。とても有意義な数日間でした」
 
「いや、気にしないでくれ。むしろ、感謝するのはこちらの方だ。よく魔物を倒してくれたな。国の王として感謝する」


 そう言って、目だけ伏せるアルフレッド。
 それから顔を上げると、眉を潜めてこちらを見据えた。


「本当なら、聖剣とは別に何か送るべきなのだろうが……」

「いえ、気にしないでください! 俺は彼女エリスを頂けるだけで嬉しいですから!」


 そう、エリスは俺についてくることになった。
 そもそも聖剣エリス女神様が勇者に向けて授けた剣だ。
 当然の流れだともいえる。

 だが、そうなると浮上してきたのは結界問題。
 今まで結界を張り、魔物の脅威から王都を守ってきたのは他でもないエリスだ。
 そんな彼女が王都を離れて大丈夫なのかと臣下の間で話が出たらしい。

 しかし、そこは女神様の聖剣。
 自分がここにいなくとも維持の可能な結界を張り直して見せた。
 そうしてあっという間に問題解決。
 
 エリスの同行は滞りなく決まったのだった。

 
「そう言ってくれるのは嬉しいが、やはりこういうのはきちんとしてた方が――」

「アルフレッドさま~」


 困り顔のアルフレッドの声を遮ったのは妻のリリィ。
 相変わらず美しい笑顔を浮かべて夫の傍に立っていた。

 そんな彼女はアルフレッドの耳元に口を近づける。


「この際です。アストレアを嫁にやるのはいかかでしょう?」

「アストレアを……?」

「ええ。最初は婚約という形ですが、ゆくゆくは……」


 と、コソコソ話しているようだがバッチリ聞こえる。
 時折こっちを見てくるし。アストレアの方も見てる。
 もしかして、聞こえるように言ってます?

 どうなのかとアストレアを見てみると、彼女は苦笑するだけだった。
 ちょっとは赤面するかもと思っていたが、意外な反応だ。
 
 もしかして、婚約云々に関しては何とも思っていないのだろうか。
 いや、彼女は国の姫なわけだし。
 政治的な理由で嫁に出されるのはとっくに覚悟してるのかもしれない。

 じゃあ次はと、父と母を見据えてみれば。
 二人ともアストレアと同じような反応だ。
 特に母さんは自分の兄夫婦のバレバレな耳打ちに呆れてるような気もする。

 それからしばらく話が続き、とうとう両親もその会話に混ざり始める。

 どうも、この話は長くなりそうだ。
 そう思ってアストレアの方へと歩き出した。


「すまないな。お父様とお母様が迷惑をかけるよ」

「気にしないでいいよ。それより君は良いのか?」

「ん? 婚約のことか? まぁ、何処ぞの貴族に貰われるよりは、キミの方が好ましいからな。わたしとしては構わないよ」


 おっと、思った以上に乗り気だ。
 ゲームのアストレアはもう少し恋愛に対して奥手だった気がするけど。
 何事もなく姫を続ける彼女はそうでもないようだ。

 今もクスクスと微笑むと、


「そういうキミはどうなんだ? わたしとは嫌かい?」


 と、挑発するかのような物言いで迫ってくる。
 微笑みながら流し目でこちらを見てくる姿は少々色っぽい。
 少しだけ心臓が跳ねてしまった。

 流石はゲームのメインヒロイン。破壊力が半端ではない。
 これがゲームなら選択肢が肯定的なもので埋め尽くされてたことだろう。
 
 などと考えていると、肩が掴まれそのまま引っ張られる。
 そうして体制を崩した俺を抱え込んだのはエリスだった。
 

「ヴァイアス様は魔王を打倒すお方です。恋にかまけてる時間はありません」

「ふむ。確かに魔王討伐は早急に何とかするべき事案だ。しかし、勇者の使命でヴァイアスの自由を拘束するのはどうなんだ? 恋愛くらいは構わないだろう?」


 頬を膨らませて不満げな様子のエリス。
 余裕の笑みを浮かべたアストレア。
 双方一歩も引かずに視線を交わしている。

 幻覚じゃなければ交差する視線の間に稲妻が走ってるようにも見える。

 キミたち昨日は仲良くしていたはずだよな。
 エリスがアストレアに素っ気ない態度を取ってないだけマシだが。
 これは果たしていい傾向なのだろうか。

 そう思っていると、どうやら両親たちの方で進展があったらしい。


「ヴァイアス」「アストレア」


 お互いに名を呼ばれて両親の元へ。
 エリスは俺の真横に陣取った。
 さて、両親同士のお話はどのような決着を見せたのか。

 そう考えながら、父さんの言葉を待ってると。
 彼は俺の肩に手を乗せて笑った。

 
「今日から、アストレアはヴァイアスの婚約者だよ」


 そう割とあっさり説明された。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

家の庭にレアドロップダンジョンが生えた~神話級のアイテムを使って普通のダンジョンで無双します~

芦屋貴緒
ファンタジー
売れないイラストレーターである里見司(さとみつかさ)の家にダンジョンが生えた。 駆除業者も呼ぶことができない金欠ぶりに「ダンジョンで手に入れたものを売ればいいのでは?」と考え潜り始める。 だがそのダンジョンで手に入るアイテムは全て他人に譲渡できないものだったのだ。 彼が財宝を鑑定すると驚愕の事実が判明する。 経験値も金にもならないこのダンジョン。 しかし手に入るものは全て高ランクのダンジョンでも入手困難なレアアイテムばかり。 ――じゃあ、アイテムの力で強くなって普通のダンジョンで稼げばよくない?

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

クラス召喚に巻き込まれてしまいました…… ~隣のクラスがクラス召喚されたけど俺は別のクラスなのでお呼びじゃないみたいです~

はなとすず
ファンタジー
俺は佐藤 響(さとう ひびき)だ。今年、高校一年になって高校生活を楽しんでいる。 俺が通う高校はクラスが4クラスある。俺はその中で2組だ。高校には仲のいい友達もいないしもしかしたらこのままボッチかもしれない……コミュニケーション能力ゼロだからな。 ある日の昼休み……高校で事は起こった。 俺はたまたま、隣のクラス…1組に行くと突然教室の床に白く光る模様が現れ、その場にいた1組の生徒とたまたま教室にいた俺は異世界に召喚されてしまった。 しかも、召喚した人のは1組だけで違うクラスの俺はお呼びじゃないらしい。だから俺は、一人で異世界を旅することにした。 ……この物語は一人旅を楽しむ俺の物語……のはずなんだけどなぁ……色々、トラブルに巻き込まれながら俺は異世界生活を謳歌します!

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

処理中です...