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第30話
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たどり着いた訓練場は随分殺風景な場所だった。
まず天井、床、壁の全てが土で統一されてる。
部屋の隅には木偶人形が複数設置されていて。
その横には大量の訓練用の剣が籠いっぱいに刺さっていた。
部屋は縦も横もかなり広めに設計されている。
きっとワイバーンを引き連れての訓練を可能にするためだろう。
(そういえば、ゲームでも見たかもな。この光景……)
あのときはクロヴァルに入団を認めてもらうための勝負で訪れたんだったか。
けど、やっぱりアレだな。
画面を挟んで見るのと現実で見るのとは全然違う。
少なくとも、ゲームではこんなに広くは感じなかったはずだ。
それにしても崩落の危険はないのだろうか?
仮に起きたとしたら、出口は入口ただ一つ。
部屋の反対側にいたとしたら、まず助かる見込みはないと思うんだけど。
そうクロヴァルに聞いてみると。
「ここの壁は魔術で作られてますからな。よほどのことが無ければ崩れません」
とのことだ。
実際、今の今までずっと使ってきたが。
壁や天井が崩れたことは一度たりとも無いらしい。
クロヴァルが暴れても壊れやしない壁か。
でも、とりあえず心配なのでエリスに頼んで部屋中を結界で覆ってもらう。
王都を囲う結界と同種のものなので、おそらくはこれで一安心である。
「慎重なんだな」
「一応ね。あって困るものでもないし」
苦笑するアストレアにそう返す。
すると、彼女は傍にあった剣を抜いてこちらに渡してくる。
訓練用なのか、刃は潰され所々に傷がついている。
年季の入り具合が凄まじいな。
大丈夫かな。振ったらポッキリ折れたりしない?
などと思っていると、アストレアが「こっちだ」と声を掛けてきた。
案内されたのは訓練場の中心だ。
白線が敷かれてあり、まるでスポーツのコートのようだ。
「早速始めるのか?」
「早い方が良いだろう?」
「……かもね。あともつかえてるし」
「あぁ、そうだな。手早く済ませよう」
お互いに距離を開けて立つ。
大体二メートル弱と言ったところか。
一度の踏み込みで懐に入れる絶妙な距離感である。
「ルールは、そうだな……。魔術なしの剣術のみ。それで相手の体に一太刀浴びせれば勝ちでどうだろう?」
「うん。分かりやすくていいね。それでいこう」
アストレアの提案に頷いて返す。
それから、その場で剣を振るって感覚を確認。
普段木刀を使ってるから少々重い。
訓練用だから雑に作ってるだけなのかもしれないが。
これならエリスの方がいくらか軽い気がする。
などと考えながら準備を済ませてアストレアを見据える。
あちらも準備はできてるようだ。
剣を中段に構えて戦いに備えている。
「では、合図はわたしが出しましょう」
そう言って、クロヴァルが俺たちの間に立って片手を上げ。
「……始めぃっ!」
号令と共にその手が振り下ろされる。
と同時、アストレアは地面を蹴って距離を詰めてくる。
剣は上段に構えられており、すでに振り下ろす準備は完了していた。
凄まじく速いが、父さんに比べればまだ目で追える。
振り下ろされた剣を受け流して反撃を狙ったが、
「……はぁっ!」
「――っ!?」
それより早く彼女の剣が戻ってくる。
それからも彼女の攻撃の嵐は留まることを知らず。
思わず俺はその場から後ろへ飛び退いた。
体制を立て直して彼女を見据える。
そんな防戦一方な俺に対して、アストレアは不敵な笑みを浮かべていた。
まず天井、床、壁の全てが土で統一されてる。
部屋の隅には木偶人形が複数設置されていて。
その横には大量の訓練用の剣が籠いっぱいに刺さっていた。
部屋は縦も横もかなり広めに設計されている。
きっとワイバーンを引き連れての訓練を可能にするためだろう。
(そういえば、ゲームでも見たかもな。この光景……)
あのときはクロヴァルに入団を認めてもらうための勝負で訪れたんだったか。
けど、やっぱりアレだな。
画面を挟んで見るのと現実で見るのとは全然違う。
少なくとも、ゲームではこんなに広くは感じなかったはずだ。
それにしても崩落の危険はないのだろうか?
仮に起きたとしたら、出口は入口ただ一つ。
部屋の反対側にいたとしたら、まず助かる見込みはないと思うんだけど。
そうクロヴァルに聞いてみると。
「ここの壁は魔術で作られてますからな。よほどのことが無ければ崩れません」
とのことだ。
実際、今の今までずっと使ってきたが。
壁や天井が崩れたことは一度たりとも無いらしい。
クロヴァルが暴れても壊れやしない壁か。
でも、とりあえず心配なのでエリスに頼んで部屋中を結界で覆ってもらう。
王都を囲う結界と同種のものなので、おそらくはこれで一安心である。
「慎重なんだな」
「一応ね。あって困るものでもないし」
苦笑するアストレアにそう返す。
すると、彼女は傍にあった剣を抜いてこちらに渡してくる。
訓練用なのか、刃は潰され所々に傷がついている。
年季の入り具合が凄まじいな。
大丈夫かな。振ったらポッキリ折れたりしない?
などと思っていると、アストレアが「こっちだ」と声を掛けてきた。
案内されたのは訓練場の中心だ。
白線が敷かれてあり、まるでスポーツのコートのようだ。
「早速始めるのか?」
「早い方が良いだろう?」
「……かもね。あともつかえてるし」
「あぁ、そうだな。手早く済ませよう」
お互いに距離を開けて立つ。
大体二メートル弱と言ったところか。
一度の踏み込みで懐に入れる絶妙な距離感である。
「ルールは、そうだな……。魔術なしの剣術のみ。それで相手の体に一太刀浴びせれば勝ちでどうだろう?」
「うん。分かりやすくていいね。それでいこう」
アストレアの提案に頷いて返す。
それから、その場で剣を振るって感覚を確認。
普段木刀を使ってるから少々重い。
訓練用だから雑に作ってるだけなのかもしれないが。
これならエリスの方がいくらか軽い気がする。
などと考えながら準備を済ませてアストレアを見据える。
あちらも準備はできてるようだ。
剣を中段に構えて戦いに備えている。
「では、合図はわたしが出しましょう」
そう言って、クロヴァルが俺たちの間に立って片手を上げ。
「……始めぃっ!」
号令と共にその手が振り下ろされる。
と同時、アストレアは地面を蹴って距離を詰めてくる。
剣は上段に構えられており、すでに振り下ろす準備は完了していた。
凄まじく速いが、父さんに比べればまだ目で追える。
振り下ろされた剣を受け流して反撃を狙ったが、
「……はぁっ!」
「――っ!?」
それより早く彼女の剣が戻ってくる。
それからも彼女の攻撃の嵐は留まることを知らず。
思わず俺はその場から後ろへ飛び退いた。
体制を立て直して彼女を見据える。
そんな防戦一方な俺に対して、アストレアは不敵な笑みを浮かべていた。
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