エロゲの悪役に転生したけど、破滅するのは嫌なので全力で勇者を遂行します!!

ボッさん

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第24話

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「終わった、か……。エリス、結界閉じていいよ」

『分かりましたっ!』


 
 そんな返事が聞こえてくると同時に展開していた結界が消失する。
 
 元々はグリムヴェルスを完封するための檻だしな。
 奴が消えた以上は残しておく必要はないのである。

 それにしても、思った以上に長い一日だった。
 
 王都までやって来て。
 誕生日パーティーでは貴族の皆様方に囲まれ。
 その後は聖剣を引っこ抜き……。
 最後は未来の魔王幹部だった魔族との戦闘だ……。

 いや、本当によく頑張った。
 誕生日のはずなのに、なんで俺はこんなにも苦労してるのか。
 やっぱり勇者だからか……?

 と、思っていると、東の方から太陽が昇ってくる。
 いつに間にか夜は終わり。朝がやって来ていたらしい。

 朝日に照らされた王都周辺の景色が、疲れた心を癒してくれてる。
 そんな感じがした。


「……壮観だな」

『ふふっ、わたしの浮遊魔術を使えば毎日でも見れますよ!』

「それもそうか……。じゃあ、たまにエリスに頼もうかな……?」

『お任せください、マスターっ!』

 
 そうして話していると、今日一日の疲れが出てきたのか。
 ドッと疲労感に襲われる。
 
 エリスの回復魔術で回復したと思ったんだけどな。
 流石に無理しすぎたらしい。


『マスター。大丈夫ですか?』

「あはは、ちょっと疲れただけだよ。悪いんだけど、降りてもらっていいかな?」

『分かりましたっ!』


 元気な返事と同時に背後から一瞬光が生じる。
 次の瞬間には後頭部に柔らかな感触。腹部には彼女の腕が回って来ていた。
 どうやら、聖剣状態から人間体に戻ったらしい。いや、天使体か……?

 かと思えば横抱きにされて、目の前には再びエリスの大きな胸である。


「マスターはゆっくりしててくださいね」

「それは構わないんだけど、何でこの格好?」

「この方がマスターを安全かつ丁寧に運べますから!」

「あぁ、そうですか……」

 
 この姿を見られるのは少々恥ずかしいけれども。
 疲労感には抗えず、大人しく俺はエリスに抱かれて地上に戻るのだった。

 そうして降りてきたルクレイア城の屋上には、父さんや母さん。
 アルフレッドにアストレアとクロヴァル。
 計五人が俺の帰りを待っていた。

 全員、エリスに抱えられた俺の姿を確認するなり青い顔をしていたが。
 ただ疲れただけだと伝えると、安心したように笑顔を見せてくれた。
 
 かと思うと、ずいっと両親が近寄ってくる。
 そしてエリス共々思い切り抱きしめられた。


「良かった……。良かったよぉ、ヴァイアス……!」

「……無事に帰って来て、良かった……!」

「母さん、父さん……」
 

 二人の口からしきりに漏れる『良かった』、『心配した』の声。
 それらが聞こえるたびに胸が締め付けられた。

 たった一人の息子が戦ってるのに見ていることしか出来ない。
 それが両親である二人にとってどれだけ悔しく辛いことか。
 
 最悪の場合、息子が目の前で死んでた可能性だってあるわけだし。
 俺が戦っている間は、気が気じゃなかったに違いない。


(……申し訳ないことをしたな)
 
 
 グリムヴェルスを倒すことに注力しすぎて。
 二人への配慮を疎かにしていた。
 そのことを強く反省する。

 もう両親のこんな顔は二度と見たくないな。
 
 そう思いながら、俺は二人が泣き止み安心するまで。
 ひたすら『俺は大丈夫だから』と口にしながら、強く抱きしめ返すのだった。
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