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第20話
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「けれど、聖剣として待ったかいがありました……。こうしてマスターと会えましたから!」
ひとしきり嘆いた後に、涙を拭きながらエリスは微笑む。
胸の内に秘めたものを吐き出していくらかスッキリしたのだろう。
少しだけ表情も明るい。
さて、そんな彼女が俺に善福の信頼を向けてきてるわけだが。
そこまで心を許してくれるようなことしただろうか?
「そう言ってくれるのは嬉しいけど、俺って何もしてないよ?」
「そんなことありません。わたしはマスターによって救われました!」
曰く、エリスの魔力は日を追うごとに減少していたらしい。
魔力はその者の力の源。つまりは生命エネルギーだ。
それが尽きるということは、すなわち死を意味する。
あと少しでも遅ければ、最悪誰にも自分を認知されないまま死んでいた。
そうエリスは苦笑する。
「わたしは不老ですが、不死ではありません。ましてや、食事も魔力供給も絶たれていたわけですし……。本当に危ない状況だったんですよ?」
「……だから、俺を信じてると?」
「はいっ! いえ、信じている程度ではありません! 愛していますっ!」
「そんな大げさな……」
まだ出会って数分しか経っていない。
にもかかわらず愛してるとか。随分とチョロい聖剣である。
そういえば、原作のヴァイアスだってなんだかんだ聖剣は所有していた。
じゃあ、彼のような奴でも聖剣は抜けたのだろうか……。
「エリス。仮にキミの前に現れた奴がクズだったらどうなっていた?」
「……クズ、ですか? どの程度のでしょう……?」
「窃盗、暴力、強姦と、自分の欲に忠実なクズ野郎かな……?」
「……マスター、難しい言葉をよくご存じですね」
そりゃ中身はもういい大人ですから。
とは口に出さずにエリスの返答を待つ。
彼女は顎に指を添えて、『う~ん』と悩んだ末に答えた。
「そもそも、そんな奴には抜けませんね。勇者の資格があるわけないです」
「そりゃそうだよな……」
「はい! わたしにだってマスターを選ぶ権利くらいはあるんですから!」
と、そう答えるエリスだが、『でも……』と言葉を付け加える。
「もしも……もしもですよ? マスターのような勇者の証を持つ人が相手だったら、呆気なく抜かれていたかもです……」
「そうなのか……?」
「はい……。多分、そのショックでわたしも死んじゃうかもですね」
弱り切っていたエリスに、勇者の力を拒むのは難しい。
なるほど。だとしたら、原作のヴァイアスは普通に聖剣に挑戦し。
呆気なくソレを達成したのかもしれない。
だが、そのせいでエリスは姿を現すことなく死亡。
だとしたらルクレイアを覆う結界はどうなって……あっ!
「……仮にキミが死んだら結界はどうなっていた?」
アストレアが言うには、結界は聖剣から発生している。
もしも、仮にそれがエリスが生きているからこそ機能する。
そんな条件で働いていたなら、彼女が死んだ場合はどうなるんだ。
問いかけてみると、エリスは悲し気に目を伏せて答えた。
「もちろん結界は壊れ、魔物が押し寄せてきていたでしょうね……」
「……そうか。そうだよな」
これは仮説だが。
アストレアが王都を追われる原因となった魔物の襲撃。
ゲームでは『昔』としか表記されていなかったが。
もしかしたら、ヴァイアスの誕生日……。
つまり、今日だった可能性が高いのではないだろうか?
仮にそうだとしたら、かなり危ないところだったぞ……!
襲撃の中には魔王軍の幹部が一人紛れ込んでいたはず。
厄介なのはその力。
『洗脳』で記憶を改竄。相手を意のままにするコントロールする能力だ。
奴一人の能力のせいで、ノーマルルートじゃ国が完全に崩壊していたし。
戦闘面でも、奴を囲う敵キャラが無限沸きで面倒だった覚えがある。
おまけに性格が歪んでいたからな。
幹部の中では特にプレイヤーから特に嫌われていたはず………………。
「……なぁ、エリス。結界ってまだルクレイアを覆ってるの?」
「……え? はい。さっきの食事で魔力も回復しましたし」
「じゃあ、部分的に結界の開閉とか。他にも結界を作ることってできる?」
「えっと、そうですね。おそらくは可能かと……。それが何か……?」
「いや、少しやってほしいことが出来たみたいでさ……」
……もしかしたら、暫定幹部を一人消せるかもしれない。
ひとしきり嘆いた後に、涙を拭きながらエリスは微笑む。
胸の内に秘めたものを吐き出していくらかスッキリしたのだろう。
少しだけ表情も明るい。
さて、そんな彼女が俺に善福の信頼を向けてきてるわけだが。
そこまで心を許してくれるようなことしただろうか?
「そう言ってくれるのは嬉しいけど、俺って何もしてないよ?」
「そんなことありません。わたしはマスターによって救われました!」
曰く、エリスの魔力は日を追うごとに減少していたらしい。
魔力はその者の力の源。つまりは生命エネルギーだ。
それが尽きるということは、すなわち死を意味する。
あと少しでも遅ければ、最悪誰にも自分を認知されないまま死んでいた。
そうエリスは苦笑する。
「わたしは不老ですが、不死ではありません。ましてや、食事も魔力供給も絶たれていたわけですし……。本当に危ない状況だったんですよ?」
「……だから、俺を信じてると?」
「はいっ! いえ、信じている程度ではありません! 愛していますっ!」
「そんな大げさな……」
まだ出会って数分しか経っていない。
にもかかわらず愛してるとか。随分とチョロい聖剣である。
そういえば、原作のヴァイアスだってなんだかんだ聖剣は所有していた。
じゃあ、彼のような奴でも聖剣は抜けたのだろうか……。
「エリス。仮にキミの前に現れた奴がクズだったらどうなっていた?」
「……クズ、ですか? どの程度のでしょう……?」
「窃盗、暴力、強姦と、自分の欲に忠実なクズ野郎かな……?」
「……マスター、難しい言葉をよくご存じですね」
そりゃ中身はもういい大人ですから。
とは口に出さずにエリスの返答を待つ。
彼女は顎に指を添えて、『う~ん』と悩んだ末に答えた。
「そもそも、そんな奴には抜けませんね。勇者の資格があるわけないです」
「そりゃそうだよな……」
「はい! わたしにだってマスターを選ぶ権利くらいはあるんですから!」
と、そう答えるエリスだが、『でも……』と言葉を付け加える。
「もしも……もしもですよ? マスターのような勇者の証を持つ人が相手だったら、呆気なく抜かれていたかもです……」
「そうなのか……?」
「はい……。多分、そのショックでわたしも死んじゃうかもですね」
弱り切っていたエリスに、勇者の力を拒むのは難しい。
なるほど。だとしたら、原作のヴァイアスは普通に聖剣に挑戦し。
呆気なくソレを達成したのかもしれない。
だが、そのせいでエリスは姿を現すことなく死亡。
だとしたらルクレイアを覆う結界はどうなって……あっ!
「……仮にキミが死んだら結界はどうなっていた?」
アストレアが言うには、結界は聖剣から発生している。
もしも、仮にそれがエリスが生きているからこそ機能する。
そんな条件で働いていたなら、彼女が死んだ場合はどうなるんだ。
問いかけてみると、エリスは悲し気に目を伏せて答えた。
「もちろん結界は壊れ、魔物が押し寄せてきていたでしょうね……」
「……そうか。そうだよな」
これは仮説だが。
アストレアが王都を追われる原因となった魔物の襲撃。
ゲームでは『昔』としか表記されていなかったが。
もしかしたら、ヴァイアスの誕生日……。
つまり、今日だった可能性が高いのではないだろうか?
仮にそうだとしたら、かなり危ないところだったぞ……!
襲撃の中には魔王軍の幹部が一人紛れ込んでいたはず。
厄介なのはその力。
『洗脳』で記憶を改竄。相手を意のままにするコントロールする能力だ。
奴一人の能力のせいで、ノーマルルートじゃ国が完全に崩壊していたし。
戦闘面でも、奴を囲う敵キャラが無限沸きで面倒だった覚えがある。
おまけに性格が歪んでいたからな。
幹部の中では特にプレイヤーから特に嫌われていたはず………………。
「……なぁ、エリス。結界ってまだルクレイアを覆ってるの?」
「……え? はい。さっきの食事で魔力も回復しましたし」
「じゃあ、部分的に結界の開閉とか。他にも結界を作ることってできる?」
「えっと、そうですね。おそらくは可能かと……。それが何か……?」
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……もしかしたら、暫定幹部を一人消せるかもしれない。
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