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第17話
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「疲れた……!」
滑り落ちるように石碑の上から落下。
地面に尻餅をついて俺は愚痴をこぼす。
本当に疲れた。
父さんの修行とは桁が違う疲労に体全体が悲鳴を上げてる。
それにさっきの魔術で保有する魔力も空になったし。
しばらくは魔術も使えないだろう。
「やったな、ヴァイアス! まさか、本当に成し遂げるだなんてっ!」
「あ、あはは……結構ギリギリだった気もするけどね……」
満面の笑みで駆け寄るアストレアにそう返す。
実際、本当にギリギリだった。
身体強化の重ね掛けはかなりリスクを伴う方法だ。
そもそもこの魔術自体が魔力を馬鹿みたいに使うんだ。
それを二重に使うというのは、単純に考えれば倍以上の魔力が必要。
さらに、上手く魔術を扱えたとしてもだ。
身体強化の重ね掛けに耐えうる肉体でなければ魔術は成功しない。
むしろ、暴発して死ぬ可能性だってあったんだ。
(本当に父さんや母さんには感謝しかないな……)
強い体に生んでくれたこともそうだが。
ここまで鍛えてくれたことに、両親には感謝しかない。
おかげで無事に聖剣を手にすることが出来たんだから。
「それにしても、それが聖剣……。持ってみて、何か感じるかい?」
「何か……。――えっと、重いかな……?」
「いや、そういう意味ではないのだが……」
「あぁ、うん。分かってる。……でも、俺には大きすぎてさ」
引き抜いた聖剣の大きさは約1メートルといったところ。
俺よりも頭一つ分くらいは大きい。
本来は大人が振り回すようにできているわけだし。
五歳児の俺には大きすぎる。
いくら木刀を毎日振り回しているとしても、これはちょっと厳しい気がする。
この際、しばらくはアストレアに預けておこうか……。
などと考えていると、突然聖剣が輝き始める。
『マ、マスターっ!? まさか、早々にわたしはお払い箱なのですか!?』
「……っ!?」
聞こえてきたのは、聖剣を引き抜く時にも耳にした幻聴。
さっきよりもよく聞こえてくるその声に、思わずアストレアを見据えた。
「わ、わたしではないぞっ!?」
だが、その彼女は首を横に振って自分ではないとアピール。
どうやら彼女にも先程の声は聞こえたらしい。
「じゃあ、まさか……」
「そのようだな……」
と、呟きながら二人で聖剣を凝視。
すると、『その通りです!』と言わんばかりに独りでに動き出し。
俺の手から離れたかと思うと、地面に剣先を向けて浮遊し始めた。
その光景に二人して唖然としていると、今度は聖剣が輝きだした。
「……っ!? な、なにが起きてるんだよ……!?」
「分からない。こんなこと女神様の予言には何も……!?」
眩い輝きに思わず目を瞑る。
閃光手榴弾を浴びるとこんな感じなのだろうか。
そんなことを考えながら耐えていると、突然輝きが消え失せたかと思えば。
「マスターっ!」
という声と共に、俺の体はポヨンっと柔らかな何かに包まれた。
布のような物越しに感じるソレは、温かくて、大きくて、柔らかい。
さっきの輝きで視力が麻痺していてよく見えないが。
頭上からしきりに聞こえる『マスター』と俺を呼ぶ声と。
後頭部に感じる手のような感触に、嫌でも俺は現状を察した。
(これ、胸だ……!)
理解すると同時に視線を上に向けてみる。
最初はぼやけて見えにくかったが、間違いなく女性の顔である。
そうしてジッと見ていると、やがて麻痺していた視力が回復してきて。
彼女の凄まじく整った顔の全体が見えるようになってきた。
聖剣の刀身の様に輝く長い銀髪。
こちらを見据える空色の瞳からは、小さな涙が滲んでいる。
そんな彼女は俺を真っすぐに見つめながら、再度『マスター』と呼んだ。
滑り落ちるように石碑の上から落下。
地面に尻餅をついて俺は愚痴をこぼす。
本当に疲れた。
父さんの修行とは桁が違う疲労に体全体が悲鳴を上げてる。
それにさっきの魔術で保有する魔力も空になったし。
しばらくは魔術も使えないだろう。
「やったな、ヴァイアス! まさか、本当に成し遂げるだなんてっ!」
「あ、あはは……結構ギリギリだった気もするけどね……」
満面の笑みで駆け寄るアストレアにそう返す。
実際、本当にギリギリだった。
身体強化の重ね掛けはかなりリスクを伴う方法だ。
そもそもこの魔術自体が魔力を馬鹿みたいに使うんだ。
それを二重に使うというのは、単純に考えれば倍以上の魔力が必要。
さらに、上手く魔術を扱えたとしてもだ。
身体強化の重ね掛けに耐えうる肉体でなければ魔術は成功しない。
むしろ、暴発して死ぬ可能性だってあったんだ。
(本当に父さんや母さんには感謝しかないな……)
強い体に生んでくれたこともそうだが。
ここまで鍛えてくれたことに、両親には感謝しかない。
おかげで無事に聖剣を手にすることが出来たんだから。
「それにしても、それが聖剣……。持ってみて、何か感じるかい?」
「何か……。――えっと、重いかな……?」
「いや、そういう意味ではないのだが……」
「あぁ、うん。分かってる。……でも、俺には大きすぎてさ」
引き抜いた聖剣の大きさは約1メートルといったところ。
俺よりも頭一つ分くらいは大きい。
本来は大人が振り回すようにできているわけだし。
五歳児の俺には大きすぎる。
いくら木刀を毎日振り回しているとしても、これはちょっと厳しい気がする。
この際、しばらくはアストレアに預けておこうか……。
などと考えていると、突然聖剣が輝き始める。
『マ、マスターっ!? まさか、早々にわたしはお払い箱なのですか!?』
「……っ!?」
聞こえてきたのは、聖剣を引き抜く時にも耳にした幻聴。
さっきよりもよく聞こえてくるその声に、思わずアストレアを見据えた。
「わ、わたしではないぞっ!?」
だが、その彼女は首を横に振って自分ではないとアピール。
どうやら彼女にも先程の声は聞こえたらしい。
「じゃあ、まさか……」
「そのようだな……」
と、呟きながら二人で聖剣を凝視。
すると、『その通りです!』と言わんばかりに独りでに動き出し。
俺の手から離れたかと思うと、地面に剣先を向けて浮遊し始めた。
その光景に二人して唖然としていると、今度は聖剣が輝きだした。
「……っ!? な、なにが起きてるんだよ……!?」
「分からない。こんなこと女神様の予言には何も……!?」
眩い輝きに思わず目を瞑る。
閃光手榴弾を浴びるとこんな感じなのだろうか。
そんなことを考えながら耐えていると、突然輝きが消え失せたかと思えば。
「マスターっ!」
という声と共に、俺の体はポヨンっと柔らかな何かに包まれた。
布のような物越しに感じるソレは、温かくて、大きくて、柔らかい。
さっきの輝きで視力が麻痺していてよく見えないが。
頭上からしきりに聞こえる『マスター』と俺を呼ぶ声と。
後頭部に感じる手のような感触に、嫌でも俺は現状を察した。
(これ、胸だ……!)
理解すると同時に視線を上に向けてみる。
最初はぼやけて見えにくかったが、間違いなく女性の顔である。
そうしてジッと見ていると、やがて麻痺していた視力が回復してきて。
彼女の凄まじく整った顔の全体が見えるようになってきた。
聖剣の刀身の様に輝く長い銀髪。
こちらを見据える空色の瞳からは、小さな涙が滲んでいる。
そんな彼女は俺を真っすぐに見つめながら、再度『マスター』と呼んだ。
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