エロゲの悪役に転生したけど、破滅するのは嫌なので全力で勇者を遂行します!!

ボッさん

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第7話

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 この世界に転生してから、五回目の誕生日を迎えた朝。

 今日は母さんの実家で俺の誕生日パーティを催すとのことで。
 いつもより少し慌ただしい。

 昼頃には家を出るため、朝のうちにやることを済ませておくとのこと。

 そんなわけで家事の手伝いをしていると、家の扉が軽い音を立てた。


「ヴァイアス。悪いんだけど、出てきてもらえないかしら?」

「うん。分かったよ」

 
 普段であれば父さんもいるはずだが。
 あいにくと今は留守である。

 食器洗いを母さんに任せて玄関へ。 
 そうして再度ノックされた扉に返事をしつつ扉を開いた。


「……む? おぉっ! 君が噂のコレット様のご子息かっ!」


 玄関前にいたのは一人の大男だった。
 頭を除いた全てを覆いつくす鎧と、その上からでも分かる筋骨隆々な肉体。
 ノコギリ刃の様に見える巨大な大剣を背負ったその姿は、威圧感が凄まじい。

 不思議と恐怖を覚えないのは、彼が人のよさそうな笑みを浮かべているからか。
 それとも俺が彼を一方的に知っているからか。

 そんな男の第一声を聞いたのだろう。
 台所にいた母さんが少し慌てた様子でやって来た。

 
「クロヴァルっ!? もう来たの!?」

「お久しぶりです、コレット様! いやはや、少々張り切りすぎましてな!」


 『がっはっはっ!』と豪快に笑う彼の名はクロヴァル・ストーンハート。
 王国軍に属する最強の部隊『竜騎士団』を率いる騎士団団長である。

 竜騎士団は文字通り竜に跨り戦場を翔る騎士団だ。

 普段は王都の周りを滑空し警護の任に就いているが。
 有事の際はその力を遺憾なく発揮。

 魔王軍だろうと臆せず戦いを挑む、そんな頼りがいのある集団である。

 ちなみに入団の条件はたった一つ。
 『圧倒的な強さ』とのことで。

 目の前のクロヴァルを相手に力を示す。
 たったそれだけで入団可能だったりする。


(まぁ、この人に認められるだけの強さを見せるのが難しいんだけどな)


 クロヴィルには『人類最強の剣士』なる異名が付いている。
 実際、入団試験時に戦闘可能な彼の強さはチート級だ。

 魔術が効かない。
 常にHPが回復し続ける。
 大剣を一撃でも浴びるとこちらのHPがごっそり減らされる。
 などなどだ。

 
(周回データでも倒すのが難しい最強のキャラだったな……)


 ちなみに実力が認められると、めでたく騎士団に入団する。
 結果、移動手段に竜が追加。
 海や毒沼地といった、進行不可能な場所を空から横断可能になるのだ。

 それ以外には、騎士団の依頼で小遣い稼ぎが出来るくらいだったか。

 物語上入団は必須だが、それ以降は影が薄い。
 そんな印象が俺の中ではある。


「あの、クロヴァルさん……は、何故ここに?」

「あぁ、ごめんね。彼にはわたしたちの送り迎えに来てもらったの」

「――えぇっ!?」


 竜騎士団の団長直々に送迎って……。
 確かに勇者の護衛と考えれば妥当かもしれないが。
 やりすぎなのではないかと思ってしまう。

 それに先程から気になるのはクロヴァルの母さんへの態度。

 名前の後に『様』をつけたりしてるし。
 知己の間柄にしたって、騎士団長に様付けされる母さんって何者なんだ?


「本当ならお昼ごろに迎えに来てもらうはずだったんだけど……」

「申し訳ありませぬっ!」


 母さんの呆れ顔に対して、クロヴァルは豪快に笑い飛ばす。
 反省はしてるが後悔はしていないとみた。

 母さんも彼の反応には慣れた様子で、すでに苦笑を浮かべていた。


「まぁ、いいわ。とりあえず上がって?」

「はっ! それでは失礼いたしますっ!」

「ええどうぞ。――あっ、ヴァイアス。悪いんだけど、お水用意してもらえる?」

「う、うん……」


 相変わらず二人の関係――というか、主に母さんの謎が増える一方だ。
 もしかして、母さんって良いところのお嬢様だったんだろうか?

 勇者の母親だし。魔導学園の才女だし。
 可能性は大いにあるだろう。

 そんなことを考えながら、俺はコップを取りに台所へ向かうのだった。
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