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第4話

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 四歳にもなると、一日の行動がパターン化してきた。

 日が昇り始めた頃に起床。
 庭に出て朝日を浴びながら朝一番の魔術をぶっ放す。
 近所迷惑にならない程度に、朝一番の魔法ブッパするのは意外と気分がいい。


「うしっ! 今日はあんまり疲れないな!」

 
 まず一つに自分が成長出来ていると実感できるのが大きい。
 日を追うごとに、魔法を放った後の気だるさが減っていく。
 つまりは魔力量の絶対値が増えているとみていい。

 それが顕著に表れてくるから飽きもなければ苦痛もないのだ。


「体調も完璧! 今日も一日頑張るぞー!」


 そしてもう一つはその日の体調確認だ。
 魔術というのは非常に繊細なもので。
 少しでも体に異変があると発動後の魔術に異変が見られる。

 威力が減る。範囲が狭まる。発動しないなど。
 微熱でも体調を崩すとデバフがかかるらしい。
 おそらく怪我などからくる体力の低下でも同じ効果が起きるだろう。

 これはゲームでは見られない状態だが。
 この世界に生きていると実感するので、これはこれで悪くない。
 そう思うようにしている。

 さて、そんな日課の魔術ブッバな早朝を終えたら朝食の後に剣術訓練だ。


「そこっ!」

「残念、外れだよ」

「んぎゃっ!?」


 木刀片手に父さんに肉薄。
 カコンっ、カコンっと父さんの攻撃を得物で弾きながら隙を見ての攻撃。
 だったんだが、呆気なく避けられ脳天に木刀を落とされる。

 脳を中心にジワリと響く痛みが走り、思わず木刀を落として頭を押さえた。
 あ、若干たんこぶ出来てるかも……。


「いてて……。結構いい線言ってると思ったんだけどなぁ……」

「そうだね。でも、まだまだかな?」


 全然余裕そうな父親との間に実力の差を感じる。

 こうして父さんに剣術の指南をお願いして半年くらいが経ったか。
 それだけの時間があれども、一度として木刀を浴びせられた記憶が無い。

 俺と木刀を交える父さんはいつも余裕綽々で笑みを絶やさない。
 それが我が子に剣を教えることが出来る嬉しさからなのか。
 それとも見たままにただ余裕があるだけなのか。

 その真意のほどは読み取れない。
 けど、いつかその顔に驚愕の表情を浮かばせてやる。
 そう息巻いて、日々の剣術指南を頑張っている次第だ。


「鏡月流だったかな? 凄いね。全然攻めきれないや」

「この流派の神髄は守りにあるからね」


 この世界の剣術には大きく分けて三つの流派が存在する。

 『鏡月流』とはその中の一つで。
 強固な守りで敵の攻撃をしのぎながら、一瞬の隙を突いて一撃を叩きつける。
 カウンター重視の流派らしい。

 他の流派に比べて派手ではないが、代わりに堅実で優雅。
 流派を極めた人は、多勢を相手に一撃も攻撃を受けずに勝利した。
 なんて話もあるらしい。

 守りに重きを置いているだけあってその防御は強固だ。
 並大抵の猛攻では態勢を崩すこともできない。
 そうして痺れを切らして大振りで剣を振るった瞬間に、意識を刈り取られる。

 ならばと警戒して攻め込めなくても、木刀を弾かれ隙を突かれる。
 もうどうすりゃいいのさ。
 
 そんな場面をこの半年くらいで何度経験してきたことか。


「……もう少し加減してくれたっていいんだよ?」

「それじゃあ修練にならないからね。僕だって本当は嫌なんだよ?」


 そりゃそうだ。
 息子の頭を木刀で殴打して楽しむDV親父なら俺だって頼んだりしない。
 むしろ原作のヴァイアスの親父として相応しいと軽蔑してただろう。


「これも全ては息子が将来苦労しないため。『愛の鞭』ってとこかな?」

「それは分かるんだけど。こうも厳しいと、父さんのこと嫌いになるかもよ?」

「――僕としても息子に嫌われるのは困るけどね……。けど、たったそれだけで息子が死ぬ可能性を少しでも減らせるというのなら安いものだよ」


 だが、実際の父はこれだ。
 悪役の父親とは思えないほどに優しく厳しい人。
 そんな人だからこそ、俺は尊敬してるし師事を仰いでいるんだ。

 
「――そんなこと言われたら、頑張らないわけにはいかないじゃないか!」

「うん。期待してるよ? ヴァイアス」


 木刀を構えなおして父さんと距離を取る。
 そうして始まった修練は、母さんの昼食を告げる声が聞こえるまで続いた。
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