5 / 57
第4話
しおりを挟む
四歳にもなると、一日の行動がパターン化してきた。
日が昇り始めた頃に起床。
庭に出て朝日を浴びながら朝一番の魔術をぶっ放す。
近所迷惑にならない程度に、朝一番の魔法ブッパするのは意外と気分がいい。
「うしっ! 今日はあんまり疲れないな!」
まず一つに自分が成長出来ていると実感できるのが大きい。
日を追うごとに、魔法を放った後の気だるさが減っていく。
つまりは魔力量の絶対値が増えているとみていい。
それが顕著に表れてくるから飽きもなければ苦痛もないのだ。
「体調も完璧! 今日も一日頑張るぞー!」
そしてもう一つはその日の体調確認だ。
魔術というのは非常に繊細なもので。
少しでも体に異変があると発動後の魔術に異変が見られる。
威力が減る。範囲が狭まる。発動しないなど。
微熱でも体調を崩すとデバフがかかるらしい。
おそらく怪我などからくる体力の低下でも同じ効果が起きるだろう。
これはゲームでは見られない状態だが。
この世界に生きていると実感するので、これはこれで悪くない。
そう思うようにしている。
さて、そんな日課の魔術ブッバな早朝を終えたら朝食の後に剣術訓練だ。
「そこっ!」
「残念、外れだよ」
「んぎゃっ!?」
木刀片手に父さんに肉薄。
カコンっ、カコンっと父さんの攻撃を得物で弾きながら隙を見ての攻撃。
だったんだが、呆気なく避けられ脳天に木刀を落とされる。
脳を中心にジワリと響く痛みが走り、思わず木刀を落として頭を押さえた。
あ、若干たんこぶ出来てるかも……。
「いてて……。結構いい線言ってると思ったんだけどなぁ……」
「そうだね。でも、まだまだかな?」
全然余裕そうな父親との間に実力の差を感じる。
こうして父さんに剣術の指南をお願いして半年くらいが経ったか。
それだけの時間があれども、一度として木刀を浴びせられた記憶が無い。
俺と木刀を交える父さんはいつも余裕綽々で笑みを絶やさない。
それが我が子に剣を教えることが出来る嬉しさからなのか。
それとも見たままにただ余裕があるだけなのか。
その真意のほどは読み取れない。
けど、いつかその顔に驚愕の表情を浮かばせてやる。
そう息巻いて、日々の剣術指南を頑張っている次第だ。
「鏡月流だったかな? 凄いね。全然攻めきれないや」
「この流派の神髄は守りにあるからね」
この世界の剣術には大きく分けて三つの流派が存在する。
『鏡月流』とはその中の一つで。
強固な守りで敵の攻撃をしのぎながら、一瞬の隙を突いて一撃を叩きつける。
カウンター重視の流派らしい。
他の流派に比べて派手ではないが、代わりに堅実で優雅。
流派を極めた人は、多勢を相手に一撃も攻撃を受けずに勝利した。
なんて話もあるらしい。
守りに重きを置いているだけあってその防御は強固だ。
並大抵の猛攻では態勢を崩すこともできない。
そうして痺れを切らして大振りで剣を振るった瞬間に、意識を刈り取られる。
ならばと警戒して攻め込めなくても、木刀を弾かれ隙を突かれる。
もうどうすりゃいいのさ。
そんな場面をこの半年くらいで何度経験してきたことか。
「……もう少し加減してくれたっていいんだよ?」
「それじゃあ修練にならないからね。僕だって本当は嫌なんだよ?」
そりゃそうだ。
息子の頭を木刀で殴打して楽しむDV親父なら俺だって頼んだりしない。
むしろ原作のヴァイアスの親父として相応しいと軽蔑してただろう。
「これも全ては息子が将来苦労しないため。『愛の鞭』ってとこかな?」
「それは分かるんだけど。こうも厳しいと、父さんのこと嫌いになるかもよ?」
「――僕としても息子に嫌われるのは困るけどね……。けど、たったそれだけで息子が死ぬ可能性を少しでも減らせるというのなら安いものだよ」
だが、実際の父はこれだ。
悪役の父親とは思えないほどに優しく厳しい人。
そんな人だからこそ、俺は尊敬してるし師事を仰いでいるんだ。
「――そんなこと言われたら、頑張らないわけにはいかないじゃないか!」
「うん。期待してるよ? ヴァイアス」
木刀を構えなおして父さんと距離を取る。
そうして始まった修練は、母さんの昼食を告げる声が聞こえるまで続いた。
日が昇り始めた頃に起床。
庭に出て朝日を浴びながら朝一番の魔術をぶっ放す。
近所迷惑にならない程度に、朝一番の魔法ブッパするのは意外と気分がいい。
「うしっ! 今日はあんまり疲れないな!」
まず一つに自分が成長出来ていると実感できるのが大きい。
日を追うごとに、魔法を放った後の気だるさが減っていく。
つまりは魔力量の絶対値が増えているとみていい。
それが顕著に表れてくるから飽きもなければ苦痛もないのだ。
「体調も完璧! 今日も一日頑張るぞー!」
そしてもう一つはその日の体調確認だ。
魔術というのは非常に繊細なもので。
少しでも体に異変があると発動後の魔術に異変が見られる。
威力が減る。範囲が狭まる。発動しないなど。
微熱でも体調を崩すとデバフがかかるらしい。
おそらく怪我などからくる体力の低下でも同じ効果が起きるだろう。
これはゲームでは見られない状態だが。
この世界に生きていると実感するので、これはこれで悪くない。
そう思うようにしている。
さて、そんな日課の魔術ブッバな早朝を終えたら朝食の後に剣術訓練だ。
「そこっ!」
「残念、外れだよ」
「んぎゃっ!?」
木刀片手に父さんに肉薄。
カコンっ、カコンっと父さんの攻撃を得物で弾きながら隙を見ての攻撃。
だったんだが、呆気なく避けられ脳天に木刀を落とされる。
脳を中心にジワリと響く痛みが走り、思わず木刀を落として頭を押さえた。
あ、若干たんこぶ出来てるかも……。
「いてて……。結構いい線言ってると思ったんだけどなぁ……」
「そうだね。でも、まだまだかな?」
全然余裕そうな父親との間に実力の差を感じる。
こうして父さんに剣術の指南をお願いして半年くらいが経ったか。
それだけの時間があれども、一度として木刀を浴びせられた記憶が無い。
俺と木刀を交える父さんはいつも余裕綽々で笑みを絶やさない。
それが我が子に剣を教えることが出来る嬉しさからなのか。
それとも見たままにただ余裕があるだけなのか。
その真意のほどは読み取れない。
けど、いつかその顔に驚愕の表情を浮かばせてやる。
そう息巻いて、日々の剣術指南を頑張っている次第だ。
「鏡月流だったかな? 凄いね。全然攻めきれないや」
「この流派の神髄は守りにあるからね」
この世界の剣術には大きく分けて三つの流派が存在する。
『鏡月流』とはその中の一つで。
強固な守りで敵の攻撃をしのぎながら、一瞬の隙を突いて一撃を叩きつける。
カウンター重視の流派らしい。
他の流派に比べて派手ではないが、代わりに堅実で優雅。
流派を極めた人は、多勢を相手に一撃も攻撃を受けずに勝利した。
なんて話もあるらしい。
守りに重きを置いているだけあってその防御は強固だ。
並大抵の猛攻では態勢を崩すこともできない。
そうして痺れを切らして大振りで剣を振るった瞬間に、意識を刈り取られる。
ならばと警戒して攻め込めなくても、木刀を弾かれ隙を突かれる。
もうどうすりゃいいのさ。
そんな場面をこの半年くらいで何度経験してきたことか。
「……もう少し加減してくれたっていいんだよ?」
「それじゃあ修練にならないからね。僕だって本当は嫌なんだよ?」
そりゃそうだ。
息子の頭を木刀で殴打して楽しむDV親父なら俺だって頼んだりしない。
むしろ原作のヴァイアスの親父として相応しいと軽蔑してただろう。
「これも全ては息子が将来苦労しないため。『愛の鞭』ってとこかな?」
「それは分かるんだけど。こうも厳しいと、父さんのこと嫌いになるかもよ?」
「――僕としても息子に嫌われるのは困るけどね……。けど、たったそれだけで息子が死ぬ可能性を少しでも減らせるというのなら安いものだよ」
だが、実際の父はこれだ。
悪役の父親とは思えないほどに優しく厳しい人。
そんな人だからこそ、俺は尊敬してるし師事を仰いでいるんだ。
「――そんなこと言われたら、頑張らないわけにはいかないじゃないか!」
「うん。期待してるよ? ヴァイアス」
木刀を構えなおして父さんと距離を取る。
そうして始まった修練は、母さんの昼食を告げる声が聞こえるまで続いた。
175
お気に入りに追加
422
あなたにおすすめの小説
鬼畜なエロゲ世界にモブ転生!?このままだと鬱ENDらしいので、ヒロイン全員寝取ってハピエン目指します!
ぽんぽこ@書籍発売中!!
ファンタジー
「助けて、このままじゃヒロインに殺される……!!」
気が付いたら俺はエロゲーム世界のモブキャラになっていた。
しかしこのエロゲー、ただヒロインを攻略してエッチなことを楽しむヌルいゲームではない。
主人公の死=世界の崩壊を迎える『ハイスクール・クライシス』というクソゲーだったのだ。
ついでに俺がなっちまったのは、どのルートを選んでも暗殺者であるヒロインたちに殺されるモブキャラクター。このままではゲームオーバーを迎えるのは確定事項。
「俺は諦めねぇぞ……トワりんとのハッピーエンドを見付けるまでは……!!」
モブヒロインの家庭科教師に恋した俺は、彼女との幸せな結末を迎えるルートを探すため、エロゲー特有のアイテムを片手に理不尽な『ハイクラ』世界の攻略をすることにした。
だが、最初のイベントで本来のエロゲー主人公がとんでもないことに……!?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
英雄に幼馴染を寝取られたが、物語の完璧美少女メインヒロインに溺愛されてしまった自称脇役の青年の恋愛事情
灰色の鼠
ファンタジー
・他サイト総合日間ランキング1位!
・総合週間ランキング1位!
・ラブコメ日間ランキング1位!
・ラブコメ週間ランキング1位!
・ラブコメ月間ランキング1位獲得!
魔王を討ちとったハーレム主人公のような英雄リュートに結婚を誓い合った幼馴染を奪い取られてしまった脇役ヘリオス。
幼いころから何かの主人公になりたいと願っていたが、どんなに努力をしても自分は舞台上で活躍するような英雄にはなれないことを認め、絶望する。
そんな彼のことを、主人公リュートと結ばれなければならない物語のメインヒロインが異様なまでに執着するようになり、いつしか溺愛されてしまう。
これは脇役モブと、美少女メインヒロインを中心に起きる様々なトラブルを描いたラブコメである———
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
異世界に行ったら才能に満ち溢れていました
みずうし
ファンタジー
銀行に勤めるそこそこ頭はイイところ以外に取り柄のない23歳青山 零 は突如、自称神からの死亡宣言を受けた。そして気がついたら異世界。
異世界ではまるで別人のような体になった零だが、その体には類い稀なる才能が隠されていて....
異世界でチート能力貰えるそうなので、のんびり牧場生活(+α)でも楽しみます
ユーリ
ファンタジー
仕事帰り。毎日のように続く多忙ぶりにフラフラしていたら突然訪れる衝撃。
何が起こったのか分からないうちに意識を失くし、聞き覚えのない声に起こされた。
生命を司るという女神に、自分が死んだことを聞かされ、別の世界での過ごし方を聞かれ、それに答える
そして気がつけば、広大な牧場を経営していた
※不定期更新。1話ずつ完成したら更新して行きます。
7/5誤字脱字確認中。気づいた箇所あればお知らせください。
5/11 お気に入り登録100人!ありがとうございます!
8/1 お気に入り登録200人!ありがとうございます!
せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
異世界でトラック運送屋を始めました! ◆お手紙ひとつからベヒーモスまで、なんでもどこにでも安全に運びます! 多分!◆
八神 凪
ファンタジー
日野 玖虎(ひの ひさとら)は長距離トラック運転手で生計を立てる26歳。
そんな彼の学生時代は荒れており、父の居ない家庭でテンプレのように母親に苦労ばかりかけていたことがあった。
しかし母親が心労と働きづめで倒れてからは真面目になり、高校に通いながらバイトをして家計を助けると誓う。
高校を卒業後は母に償いをするため、自分に出来ることと言えば族時代にならした運転くらいだと長距離トラック運転手として仕事に励む。
確実かつ時間通りに荷物を届け、ミスをしない奇跡の配達員として異名を馳せるようになり、かつての荒れていた玖虎はもうどこにも居なかった。
だがある日、彼が夜の町を走っていると若者が飛び出してきたのだ。
まずいと思いブレーキを踏むが間に合わず、トラックは若者を跳ね飛ばす。
――はずだったが、気づけば見知らぬ森に囲まれた場所に、居た。
先ほどまで住宅街を走っていたはずなのにと困惑する中、備え付けのカーナビが光り出して画面にはとてつもない美人が映し出される。
そして女性は信じられないことを口にする。
ここはあなたの居た世界ではない、と――
かくして、異世界への扉を叩く羽目になった玖虎は気を取り直して異世界で生きていくことを決意。
そして今日も彼はトラックのアクセルを踏むのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる