白猫様は悩める乙女の味方なり~こちら、しろねこ心療所~

恵喜 どうこ

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case7 河合めぐみ『ママの笑顔を取り戻せ』

第35話【計画実施】このたわけ者が!

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 時計の秒針の音がやけに大きく聞こえた。
  一秒、また一秒と刻む針を見ると、そわそわとして落ち着かなかった。
 もうすぐ夜の10時半を回る。
 パチンコの閉店時間だ。
 ぼちぼち夫が帰宅するだろう。

 真奈は隣の部屋ですでに眠っている。
 いつもは寝ることを怖がる彼女だが、今日は白猫さんが傍にいてくれたことで安心して眠ることができた。
 彼女が寝ることを恐れるのは夫のせいだ。
 夫は寝ている幼子の胸ぐらを掴んでたたき起こす。
 「俺より先に寝ているんじゃねえ」と怒鳴り散らして彼女の頬を思いっきりはたくのだ。
 それでも彼女は絶対に泣かない。
 小さな唇を力いっぱい噛んで泣き声を出すまいと必死に我慢するのだ。
 泣けば夫はもっと逆上する。
 もっと、もっと手を上げられる。
 夫をとめようとして彼女を庇う私への暴力を少しでも減らすために、彼女は小さな体で精一杯抵抗するのだ。

 大きなため息を吐く。
 心臓が痛い。
 万力でねじりつぶされるみたいな痛みに、思わず胸元のシャツを掴んだ。
 そのときだ。
 ふっと隣に気配を感じた。
 気配のほうへ視線を向けると、白猫さんが私の隣で姿勢を正して座っている。
 久能さんが言っていたが、この座り方はエジプト座りと呼ばれているらしい。
 スタンダードな座り方だけれど、いつでも動きだせるように警戒している姿でもあるのだと――

「心配してくれているのね。ありがとう」

 ほっそりとしているのにたくましい彼の背中に手を置く。
 触れられるのは好きではないのだと久能さんが言っていた。
 だけど許してくれるらしい。
 彼は一切こちらを見ない。
 ただ玄関のほうを見つめたまま、長いしっぽをゆったりと動かしている。
 やわらかな毛で覆われた彼の体から温かな熱が伝わってくる。
 胸の動悸が少し落ち着いた気がした。

 しかし、ホッとしたのも束の間のことだった。
 ガチャンッと乱暴に扉が開く音がして、すぐさま玄関へと目を走らせた。
 ドンドンッと床を激しく叩く音が聞こえた。
 夫の足音だ。
 どうやら今夜も機嫌は最悪のようだ。

 しぶしぶ立ちあがろうとする私は、しかし立ちあがることができなかった。
 白猫さんが小さな前足を私の太腿に乗せて制したからだ。
 やわらかい肉球の感触がするのに、足を太い杭で固定されるみたいな重さを感じた。
 ビクとも動かない。

 夫が部屋に入ってきた。
 面白くなさそうな険しい顔をしている。
 思ったような結果にならなかったのだろう。
 座ったまま、じっと見上げる私を彼は鼻先にしわを作って睨みつけた。

「飯の支度はどうした?」

 ダイニングテーブルにはおかずの乗った皿どころか、お茶碗も箸も用意されていない。
 食事の支度はしていないのだ。
 彼の分を用意しないでほしいというのが久能さんの指示だった。

「飯はどうしたって言ってんだろうがっ!」

 夫が激しい剣幕で私に向かってくる。
 目を逸らせない。
 白猫さんの足はまだ私の股の上にある。
 逃げることもできない。

 息が上がる。
 体に震えが走った。
 夫の怒りに震える手が眼前まで迫ってきている。

 夫の手が私の髪を掴もうとした瞬間、巨大な風船が割れるようなパアンッという派手な破裂音が響いた。
 鼓膜を破る勢いの音に思わず身をのけ反らせて耳を塞いで音の出処を探す。
 音を出していたのは白猫さんだった。
 彼の長い尾が床を思いきり打ったらしく、しっぽの先の床がべコリと沈んでいる。

 急いで夫を見ると、予想もしていなかった音に不意を突かれた夫は腰が抜けたのか、床に座りこんでしまっている。
 しかしすぐに我に返って立ちあがって「驚かせやがって!」と白猫さんへ怒りを露わにした。

「たかだか猫の分際で!」

 夫が顔を真っ赤にさせて白猫さんのお腹目掛けて足を大きく振りかぶった。

「やめてえっ!」

 声の限りに叫んで私は白猫さんの上に覆いかぶさろうとした。
 けれど、白猫さんはするっと私の体からすり抜けた。
 そのまま夫の足目掛けて高くジャンプする。
 長いしっぽをつるのように彼の足首に巻きつけ、ふわっと軽やかに着地する。
 夫のつま先が私の鼻先を掠める次の瞬間、ダーンッとものすごい音とともに彼は仰向けに倒れた。
 いや、ちがう。
 白猫さんによって倒されたのだ。

 強く腰を床に打ちつけた夫の口から苦い呻き声がもれていた。
 するとしろねこさんは巻きつけていたしっぽをしゅるっとほどくと、トトトトッと玄関に向かって走った。

「待てっ!」

 夫が打ち付けた腰を抑えながら白猫さんを追った。
 白猫さんは夫に背を向けたまま玄関を見上げている。
 無防備な彼の首根っこを夫が掴んで持ち上げる。

「このクソ猫っ! おまえにはしつけが必要だな」

 鼻息を荒くして夫が白猫さんをにらみつけたが、猫のほうはまったく動じていない。
 冷静な目で見つめ返し、じっとしている。
 夫に首根っこを掴まれているせいで身動きがとれないからだろうか。

 ――いいえ、そんなはずはない。なにか考えがあるに違いない。

 だって彼はただの猫じゃない。
 とても賢い猫なんだから――

 夫が白猫さんを思いっきり床にたたきつけた。
 小さな体が床で大きく跳ねる。
 彼は目をつぶったまま、そのまま動かない。
 そんな彼の腹めがけて夫が何度も、何度も蹴りを入れる。

「やめてぇっ!」

 夫に駆け寄って、蹴っている足にしがみつく。
 そんな私を振り払うように夫は足を振りかぶると、また猫の体を蹴った。

「四つ足風情が人間様に立てつくのが悪いんだよ! 邪魔するな!」

 夫がオラオラッと声を荒げた。
 その口元には笑みさえも浮かんでいる。
 白猫はなされるがままの状態で動かない。
 たたきつけられたときに意識を失ってしまったのだろうか。
 だから久能さんに言ったのに……

 ピンポーンという呼び鈴が鳴ったのは夫が再び白猫さんをもちあげたときだった。

「ん?」

 夫が振り返って扉の向こうを確認する。

「なんで……警察が?」

 ハッとして私は息を飲んだ。
 夫が私を見た。
 血走った眼が怒りに満ちている。
 またピンポーンと呼び鈴が鳴り、続いて「すみません」と扉を二回、三回たたく音が響いた。

「河合さ~ん。いらっしゃいますよねえ。ちょっと開けてもらっていいですかあ?」

 犬飼駐在さんの声だ。
 夫がチッと舌打ちした。 

「おいっ、めぐみ。この猫隠せ」

 夫が白猫さんをごみのように投げてよこした。
 これ以上、彼を傷つけるわけにはいかない。
 私は必死で力の抜けた重たい白猫の体を受け止めた。
 涙が止まらない。
 どうしたらいいのかわからない。
 私たちのせいで罪もない命を危険に晒すことになるなんて――
 せめて真奈の隣に寝かせようと彼を連れて真奈の部屋に入ったときだった。
 夫が玄関を開けたらしく「どうかしましたか?」という余所行きの声が聞こえた。

「すみません。こちらで保護していただいた白猫を預かりに来まして」
「白猫? うちでは保護してませんけど?」
「そうですか? 昼間にお邪魔したときはいたんですけどねえ」
「あっ、そういえば逃げてしまったと妻が言ってました。そういうわけで申し訳ありませんが、うちには猫はいませんので」
「そうですか」
「じゃあ、これで」

 ――このままじゃ犬飼さんが帰っちゃう! この子を渡さなくちゃ!

 体が恐怖で震えるけれど、ここで彼を帰してしまったら、もう二度と助けは来ない。
 そのあとはきっとまた暴力の嵐だ。
 立ち向かわなければ、私と真奈に未来はない。
 もちろん、関係のないこの白猫さんの命だって助けられない!

「ま、待ってください!」

 真奈の部屋から飛び出して、玄関に向かう。
 夫が驚いて「めぐみっ!」と声を荒げた。

「白猫さんならここにいます! 夫が……夫が猫さんにひどい暴力を……!」
「めぐみっ! おまえ、俺を裏切るのかッ!」
「お願いです! 助けてください! この猫さんだけでも……!」

 喉の限りに叫んだ。
 すると犬飼さんはふうっと深く息を吐きだすと「ああ」とつぶやいた。

「なんてことをしてくれたんだ、おまえはよお。うちの大事な神様にそんなことされたら、俺の立場ってのがないじゃねえか」
「は? 神様? 何言ってるんだ?」

 夫がバカにするように犬飼さんを見た。
 犬飼さんは懐からたばこを一本取り出してくわえると静かに火をつけた。
 大きく吸い込んで、たばこをくわえたまま煙を吐き出す。
 柴犬似の優しい駐在さんの顔は今、見る影もなく険しいものへと化している。

「犬飼和親かずちか。主を守る狛犬一族としての使命、果たさせていただく」

 ギンっと彼が目を見開くと、その周りに太い血管が幾筋も浮き立った。
 顔を伏せた彼が「うううううっ」と低いうなり声をあげる。
 異変を察した夫が急いで扉を閉めようとしたが、それはかなわなかった。
 犬飼さんの大きな手が扉を抑え込んだのだ。
 その手はぷっくりと大きくむくんだかと思うと、黒い毛がぶわっと一気に生えて獣の手へと変化した。

「うわっ!」

 夫が尻もちをつく。
 大柄な犬飼さんの体はさらに隆起して一回り大きくなった。
 メキメキという音とともに、扉が思いっきりはがされ、吹き飛ばされる。
 顔をあげた犬飼さんに私は息を吸うのも忘れそうになった。
 人でない。
 狼の顔をした彼が真っ赤な目で夫を見下ろしていた。

「ば、化け物!」

 夫が引きつった叫び声をあげた。
 それを聞くと獣の姿に変化した犬飼さんは口にしていたたばこをペッと外に吐き出した。

「このたわけ者が! 化け物はおまえのほうだろうが!」

 空気がビリビリと震えたのではないかと思うほどの強い恫喝が飛んだ。
 夫の喉から声にならない「ひぃっ」という空気がもれた。
 呼吸は浅く、両目がおろおろと左右に揺れている。
 びくびくとつま先も震えている。
 恐怖に引きつった顔で見上げている。

 そんな夫の胸ぐらをむんずと犬飼さんは掴んだ。
 片手で楽々と夫を持ち上げる。
 夫の足が床から離れてブラブラと宙に浮いた。

「おまえ、こうやって奥さんや娘さん、それにうちの大事な神様のことを掴んだだろう?」

 夫の顔を伺うように右へ左へ首を揺らして犬飼さんは尋ねた。
 夫は答えない。
 ただ血走った眼で彼を見つめ返している。

「なあ? この後あんたはあの子たちになにをしたのか。それはちゃんと覚えてるな?」

 質問をする犬飼さんの大きな口から鋭くとがった歯が見えた。
 長い鼻にはいくつもの深いしわが刻まれている。
 犬が怒りをあらわにする表情そのままの顔に、夫が大きく目を見開いた。
 
「た……たすけてくれ……もうしない。絶対にしないから!」
「罪を犯した人間はみな一様にそう言うんだな、これが」

 犬飼さんはふるふると首を左右に振った。
 
「お、俺は違う! ほかのやつと……違うから! た……のむ!」
「気持ちはわかった。だったら余計に痛みは知っておくべきだ。今後のために……」

 そう冷たく言い放った彼は無防備に開いたお腹に向かって勢いよく拳を突いた。
 潰れた夫の悲鳴が上がる。
 喉元を締め上げられているせいで思いっきり声があげられなかったからだ。
 夫がじたばたと苦しそうにもがく。
 そんな夫のお腹に容赦なくもう一度拳が入った。

「なっ? 思っていたよりもずっと痛いだろう? だけど、あんたの奥さんや娘さんはもっと痛かったんだ」

 犬飼さんが胸ぐらを掴んでいた手をパッと離す。
 夫は尻から床に落ちた。
 再び鈍い叫び声が上がる。
 しかしその口はすぐさま犬飼さんの大きな手で塞がれた。
 長い爪が彼の頬の肉に食い込んで、ぷつりっと皮膚が裂けた。
 赤い血が爪先を濡らす。

「怖いだろう? あんたはこういうことを繰り返してきたんだ。知らない人間からじゃなく、最も愛する人間にこんなことをされてきたんだ。その罪の重さがあんたは本当にわかってるのか?」

 心が寒くなるくらいの冷たい声だった。
 ブルッと私は体を震わせた。
 空気が冷たい。
 真冬の空の下に薄着で立っているみたいだ。

「なあに安心しろ。俺は主に比べりゃ優しいもんだ。殺しまではやらない。一応、警察という立場だからな」

 夫は必死に首を振る。
 両足を必死に動かして、身をよじろうとした。
 しかし顔を掴まれたままの彼の体はどうやっても逃れることはできないようだった。

「罪はきっちり法の下で払おうぜ? それがあんたに許された最後の慈悲だ。なあ、猫神?」

 そう言うと、犬飼さんはこちらを見た。
 私の腕の中で動かなかった白猫さんが彼の呼びかけに反応するようにむくりと起き上がった。
 なにごともなかったかのように軽やかに床に飛び降りると、その場に静かに腰を下ろした彼は「ウナア」と同調するような声をあげた。

「やり方が甘いって言いなさんな。先生にもくれぐれもやりすぎないように釘刺されてるんすから。それにこれ以上やったら俺、警察官クビになっちまいますよ?」
「う……ううっ」

 夫の顔は涙でぐしゃぐしゃになっていた。
 恐怖で引きつった顔からは血の気が失せ、必死に抵抗していた体からは完全に力が抜けきっていた。
 だらんとぶら下がった手が床に落ちている。

「それじゃ幼児虐待の罪で逮捕させてもらうからな」

 念を押すように尋ねた犬飼さんに夫はコクコクと素早く首を縦に振った。

「しっかり罪を償わなかったら、今度はもっと怖い方があんたの命を取りに来る。覚悟はいいな?」
 
 夫があうあうと苦しそうに目を泳がせて喘いだ。
 犬飼さんは一旦大きく目を伏せてから夫を放すと、手錠を取り出して夫の腕にはめた。
 力なくうなだれる夫を立たせた彼の姿はシュウッと白い煙を上げて、元の人間の犬飼さんの姿に戻っていった。

「河合さん」
「は、はい!」

 正座の姿勢になる。

「そこにいる猫神からの言葉を伝えます」
「はい!」
「おまえ、もう少し自信を持っていいぞ。まだまだ若いんだ。やり直しはいくらでもできる」
「え?」
「こんな男に縛られず、自由に生きろ――だと」
「でも、犬飼さん。私……」

 すると犬飼さんは苦笑した。

「とにかく真奈ちゃんと一緒ならなんだってできるだろう? 死ぬ気で生きろ。それが恩返しだと思ってなと言ってますよ。俺もそう思います」
「は、はいっ! 本当にありがとうございました!」

「それじゃあ」と犬飼さんが夫を引き連れて部屋を出て行った。
 そのあとに続いて白猫さんがトトトッと走っていく。
 扉の前でいったん足をとめた彼が振り返り、こちらを見る。
 彼がゆっくりと目を伏せた。
「達者でやれよ」と言っているみたいに――

「はい!」

 私の返事を聞いた彼がサアッと風のように部屋を出て行った。
 静けさが戻ってきて、私はゆっくりと立ち上がった。
 隣の部屋では何事もなかったかのようにぐっすり眠る真奈の姿がある。
 寝ているはずの彼女が口元をゆるませた。
 
「ねこちゃん、ありがとう」

 そんな真奈の寝言が聞こえたような気がした。





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