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Lesson 27 報復
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私の考えが甘かったと、思い知らされたのは翌日のことだ。
男子と女子と別々の体育の時間、男子はグラウンドでサッカー、女子は体育館でバスケだった。
運動が物凄く苦手というわけじゃない。
だからバスケだって、そんなにへたくそな部類でもない。
だけど私は狙われていた。
ボールを持てば、わざと体当たりされたり、ゴール前でのディフェンスでは、それこそ無理やりゴールを決めらて、見事に吹っ飛ばされたりした。
見上げたそこにいつもあったのは、バスケ部の女子たちの面々だった。
千波が心配して駆けよって来ると、私の耳にこう告げた。
「あの子、松永にずっと片思いしてたんだって」
松永とは同じ中学で、ずっとずっと松永が好きだったのだと、こそりと千波は告げた。
松永と付き合う前からなんとなく敵意のようなものを感じたことはあった。
今回は容赦なかった。
むきだしの敵意。
それを体全部で知った。
松永の見ていないところで、これが女子なんだなと思い知らされた。
でも、仕方ない。
自分が悪いんだもの。
葵が好きなのに、それに向き合わないで松永に逃げ込んだ自分がまいた種。
これくらいは仕方ない。
きっと彼女は本当に松永のことが好きなんだ。
私が葵を好きなように、彼女は松永が好きなんだよね。
仲間を巻き込んで……という部分は賛成できないけれど、それはすごくよくわかる。
彼女をそうさせたのも、ちゃらんぽらんな私のせいだもの。
そう思ったら怒る気持ちにはなれなかった。
彼女たちの攻撃はやむことはなく、ボールを持たない時でさえ走れば転ばされた。
私にボールを回さないようにしてくれるチームメイトたち。
だけど……
「きゃっ!」
そのとき、何が起こったのか。
一瞬わからなかった。
ゆっくりと後ろ向きに自分の体が倒れて行く。
とっさに頭を庇うけれど、それでも庇いきれなくて床に打ちつけられる。
その瞬間、激しい痛みと揺れを感じ……視界が真っ白に染まった。
「陽菜子!」
千波の声が遠くでぼんやりと聞こえてきたのを最後に、私は意識を手離した。
なんでこんなことになったのかな?
『あなたが悪いのよ、全部』
空耳かもしれない。
でも意識を手離す直前にそんな声と松永を好きだという彼女の冷たい視線を感じたような気がたしかにしていた。
男子と女子と別々の体育の時間、男子はグラウンドでサッカー、女子は体育館でバスケだった。
運動が物凄く苦手というわけじゃない。
だからバスケだって、そんなにへたくそな部類でもない。
だけど私は狙われていた。
ボールを持てば、わざと体当たりされたり、ゴール前でのディフェンスでは、それこそ無理やりゴールを決めらて、見事に吹っ飛ばされたりした。
見上げたそこにいつもあったのは、バスケ部の女子たちの面々だった。
千波が心配して駆けよって来ると、私の耳にこう告げた。
「あの子、松永にずっと片思いしてたんだって」
松永とは同じ中学で、ずっとずっと松永が好きだったのだと、こそりと千波は告げた。
松永と付き合う前からなんとなく敵意のようなものを感じたことはあった。
今回は容赦なかった。
むきだしの敵意。
それを体全部で知った。
松永の見ていないところで、これが女子なんだなと思い知らされた。
でも、仕方ない。
自分が悪いんだもの。
葵が好きなのに、それに向き合わないで松永に逃げ込んだ自分がまいた種。
これくらいは仕方ない。
きっと彼女は本当に松永のことが好きなんだ。
私が葵を好きなように、彼女は松永が好きなんだよね。
仲間を巻き込んで……という部分は賛成できないけれど、それはすごくよくわかる。
彼女をそうさせたのも、ちゃらんぽらんな私のせいだもの。
そう思ったら怒る気持ちにはなれなかった。
彼女たちの攻撃はやむことはなく、ボールを持たない時でさえ走れば転ばされた。
私にボールを回さないようにしてくれるチームメイトたち。
だけど……
「きゃっ!」
そのとき、何が起こったのか。
一瞬わからなかった。
ゆっくりと後ろ向きに自分の体が倒れて行く。
とっさに頭を庇うけれど、それでも庇いきれなくて床に打ちつけられる。
その瞬間、激しい痛みと揺れを感じ……視界が真っ白に染まった。
「陽菜子!」
千波の声が遠くでぼんやりと聞こえてきたのを最後に、私は意識を手離した。
なんでこんなことになったのかな?
『あなたが悪いのよ、全部』
空耳かもしれない。
でも意識を手離す直前にそんな声と松永を好きだという彼女の冷たい視線を感じたような気がたしかにしていた。
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