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第二章 聖女編
第54話 魔獣迎撃戦2 ~聖女猛攻
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私とシオンは走って本陣に着いた。
さっきまでのだらけた雰囲気はなく、騎士の方々はピリピリしながら瘴気の山に向かって隊列を組み始めていた。
他の聖女の三人と従騎士の方々はすでに集まり、私たちを待っていた。
「す、すみません!」
前方から走ってきた偵察隊のひとなのか、騎士団長に報告している。
「魔獣総数、約三百」
みんなの表情がくもり、ミラさんがつぶやいた。
「去年が二百。ずいぶん、増えたなあ……」
偵察隊の人が報告を続ける。
「S級は……」
私を含めてみんながジッと注目した。
「S級は、確認できず!」
みんな、ホッとタメ息をついて、エリザさんがかけ声をかける。
「さあ、行きましょう」
三人は横に並んで瘴気の森の方に向かって歩き始めたので、私も着いていく。
従騎士の方々はやや後方から歩いてくる。
騎士団の隊列も追い越し、さらに前へと進んだところで、エリザさんが足を止めた。
「じゃあ、頼むわよ、ミラ、シルビア」
「おう、まかしとけ」
ミラさんとシルビアさんは足を止めずさらに前へと進んでいく。
「アンジェはここで、待ってなさい」
エリザさんにそう言われて、私とシオンは足を止めた。
まだ、かなり先に見える瘴気の霧の中にぼんやりと影が見え始めた。
数え切れないほどの大きな影が横に広がっている。
端から端までの長さは四、五百メートルはあるだろうか。
あの影が魔獣なんだ。
血が凍り付いたように体が冷たく感じられる。
横ではエリザさんが、片ひざをついたライルさんの鎧の肩についているイスに座り、ベルトのようなもので体を固定していた。
「安全ベルトは締めましょうね」
不思議そうに見る私にエリザさんが言った。
「アンジェは少し遅れて、騎士の皆さんと一緒にいらっしゃい。わたくしとライルであらかた狩っておくから」
ライルさんは立ち上がり、背中の大剣を右手で握り、正面に構えて両手で握りしめた。
「こっちはいいわよー」
エリザさんが前を行くシルビアさんとミラさんに叫んだ。
「りょうかーい!」
ミラさんは伸ばした右腕の手首を左手で握って脚を前後に開くと、衝撃に備えるように重心を低く構えた。
その後ろからザックさんが両手をミラさんの肩に添えて後ろから支える。
シルビアさんは背後のローランさんの方を向いた。
「ローラン」
ローランさんは無言で片ひざをつくと両手を重ねて手の平を上にして捧げるように前に突き出す。
シルビアさんはその上にトンと飛び乗り足を乗せた。
ローランさんは勢いを付けて立ち上がり、シルビアさんを思いっきり上空に放り投げた。
シルビアさんは立った姿勢のままで足の下に浮かんだ緑の魔方陣から風を出して地上から数メートル上に浮いた。
ミラさんは右手の平を霧の影の左端に向けて構えて詠唱を開始した。
「女神ルミナスの導きに我が魂呼応せん。この手に宿るは聖なる炎、燃え盛り地に映えさせ、灼熱の断罪を敵に刻め!」
右手の前方に大きな赤い魔法陣が浮かび上がる。
上空ではシルビアさんが詠唱を始めている。
「女神ルミナスの導きに我が魂呼応せん。この手に集うは風の剣、荒ぶる風に意志を宿し、天駆ける断刃となす」
影に沿うようにいくつもの緑の魔方陣が横に並んだ。
地上ではミラさんが魔法を発動させた。
「なぎはらえ、獄炎斬!」
魔方陣から真っ赤な炎が吹き出し、巨大な炎の柱のようにゴォーという音を出しながら前方の瘴気の中の魔獣の影に向かっていく。
ミラさんの体が炎の反動で後ろにずれていくのをザックさんが押し返している。
真っ直ぐ伸びていった炎の柱が瘴気を吹き飛ばし影に当たった。
ドーンと爆音が響いて爆煙が吹き上がり、その中からギャーとかギーとか魔獣の断末魔が響き渡った。
ミラさんは炎の柱をそのまま左から右へ、なぎはらうように動かしていくと爆煙と断末魔も右へ移動していく。
獄炎斬。
大聖女ルシアが敵が多数の戦闘で最も好んだ大魔法。
以前、ミラさんに教えてと頼んだが練習所では無理、いずれ実戦で見せてやる、と言われたがその意味がわかった。
爆煙の中から巨大なスズメバチやカマキリが、炎から逃げるように上に向かって飛んだ。
それらを待っていたかのように、シルビアさんが叫んだ。
「斬り裂け、烈風斬、連撃!」
並べられていた緑の魔方陣から放たれた巨大な風の刃が爆煙から飛び出した魔獣たちを次々に切断していく。
騎士の方々からも驚きの声が聞こえてくるが、聞き覚えのある声があった。
「いやー、ギリギリ間に合った。相変わらず、ミラの獄炎斬はすごいねえ。本家の大聖女ルシアのとは違ってるんだけどね」
振り返ると魔法研究所長のユリウスがいて私と目が合った。
「やあ、アンジェ。今のでわかったかい?」
わかった、そして覚えた。
ユリウスから教わっていたが、どうしても再現できなかった。
今ならできる。
だけど、今はそれどころじゃない。
前方の戦いに意識を戻す。
ミラさんの放つ炎の柱が瘴気の影の右端まで届いたが、そのとたん、炎は短くなっていき、そして消えた。
ミラさんは力尽きたようにペタンと地面に座り込んでしまった。
すぐにザックさんが横抱きのお姫様だっこで抱えて後方に走って行く。
「はーい、ミラ様、打ち止め。下がりまーす」
マナを使い切ったんだ。
これでミラさんは当分、戻ってこれない。
収まりつつある爆煙から、黒焦げで原型をとどめていない魔獣の死体を乗り越えて、炎に耐えられた魔獣が姿を現した。
カラや硬い皮におおわれた虫型のA級が多く、その後ろには炎を逃れたB級、軟体動物のようなC級が続く。
半数近くは焼き払われたように見えるが、まだかなり残っている。
上空へ逃れようとする魔獣は、シルビアさんがことごとく切り裂いて打ち落としていく。
「いくわよ、ライル!」
横から聞こえたエリザさんの声の方を見ると、両手の手の平を自分とライルさんに向けて、詠唱を始めている。
「女神ルミナスの導きに我が魂呼応せん。光の加護を我らの肉体に宿らしめ、その輝きを高まる力とせよ」
手の平からの光が大きくなっていく。
「高まれ、光華昇力!」
ライルさんとエリザさんの体が金色の光に包まれた。
人体強化魔法! エリザさんは直接、魔獣と戦うつもりなんだ。
そして、大剣に手を触れると、大剣が黄金のように輝き始める。
これは武器の強化魔法。
ライルさんがエリザさんを肩に乗せたまま人ではあり得ない速さで走り出し、すぐに爆煙から出てきた巨大なムカデのそばにたどり着いた。
振り上げられた光る大剣が頭を切り落とす。そしてすぐに、次の標的へと素早く移動していく。
これが、光の聖女の戦い方だ。
光魔法は治癒、回復、防御のイメージがあったがこんな戦い方があるとは思わなかった。
以前、従騎士を選ぶときライルさんは戦い方に合わせて魔法研究所が選んだと聞いたことを思い出した。
きっと魔法研究所が考えた戦い方なんだ。
エリザさんに人体強化魔法を教えて欲しいと頼んだことがあったが『炎、水、風を持つアンジェがあえて危険な接近戦を選ぶ必要はありません』とやんわりと断られたことを思い出した。
今、強化魔法も覚えた。
「我々も行くぞー!」
背後の騎士の方々も、かけ声とともに剣をかざしつつ前に走り始め、私とシオンを追い抜いていった。
前方にはムカデと背後に隠れるようにナメクジが何匹かいる。
「アンジェー、さっさと行けー! お前はA級だけ殺りゃーいんだからなあー! 騎士のおっさんたちをまもってやれー」
ザックさんに支えられながら立っているミラさんに後ろからゲキを飛ばされた。
「アンジェ様、行きましょう!」
そう言うシオンにうなずいて返事をして、一緒に走って行く。
前方で、体半分を立ち上がらせるムカデの胴に騎士が斬りつけたが、剣がカン!と外皮に跳ね返された。
牙を開いた口が上から騎士に襲いかかった。
私は立ち止まり、狙いを定めて右手をかざす。
「つらぬけ、流水槍!」
発射された水の槍はムカデ型の口に突き刺さり、頭を貫いて後ろに突き抜けた
よし、当たった!
「A級は私がやりますので、みなさまはB級とC級を!」
騎士の人たちにそう叫んで体の向きを変え、こちらに向かってくるムカデの頭に向かって流水槍を撃った。
スカッ!
あっ、外れた。というより外された。
命中する寸前でムカデ型は頭を右にずらしてかわした。
「さっきのように相手の動きを予測して!」
背後で別のムカデと戦っているシオンが叫んだ。
さっきは騎士を襲っていたので動く方向がなんとなくわかったが、今はどっちにいくのかわからない。
今度は左右両手で二発立て続けに発射した。
スカッ、スカッ。
頭は右に左に流水槍をかわし、逆に口を開いて私に向かってくる。
早く、聖光障球を!
と思いながらも体が恐怖に凍り付いて反応ができない。
牙の生えた開いた口が私の目前に迫ってきた。
死ぬ!
生まれて初めて死を意識した。
さっきまでのだらけた雰囲気はなく、騎士の方々はピリピリしながら瘴気の山に向かって隊列を組み始めていた。
他の聖女の三人と従騎士の方々はすでに集まり、私たちを待っていた。
「す、すみません!」
前方から走ってきた偵察隊のひとなのか、騎士団長に報告している。
「魔獣総数、約三百」
みんなの表情がくもり、ミラさんがつぶやいた。
「去年が二百。ずいぶん、増えたなあ……」
偵察隊の人が報告を続ける。
「S級は……」
私を含めてみんながジッと注目した。
「S級は、確認できず!」
みんな、ホッとタメ息をついて、エリザさんがかけ声をかける。
「さあ、行きましょう」
三人は横に並んで瘴気の森の方に向かって歩き始めたので、私も着いていく。
従騎士の方々はやや後方から歩いてくる。
騎士団の隊列も追い越し、さらに前へと進んだところで、エリザさんが足を止めた。
「じゃあ、頼むわよ、ミラ、シルビア」
「おう、まかしとけ」
ミラさんとシルビアさんは足を止めずさらに前へと進んでいく。
「アンジェはここで、待ってなさい」
エリザさんにそう言われて、私とシオンは足を止めた。
まだ、かなり先に見える瘴気の霧の中にぼんやりと影が見え始めた。
数え切れないほどの大きな影が横に広がっている。
端から端までの長さは四、五百メートルはあるだろうか。
あの影が魔獣なんだ。
血が凍り付いたように体が冷たく感じられる。
横ではエリザさんが、片ひざをついたライルさんの鎧の肩についているイスに座り、ベルトのようなもので体を固定していた。
「安全ベルトは締めましょうね」
不思議そうに見る私にエリザさんが言った。
「アンジェは少し遅れて、騎士の皆さんと一緒にいらっしゃい。わたくしとライルであらかた狩っておくから」
ライルさんは立ち上がり、背中の大剣を右手で握り、正面に構えて両手で握りしめた。
「こっちはいいわよー」
エリザさんが前を行くシルビアさんとミラさんに叫んだ。
「りょうかーい!」
ミラさんは伸ばした右腕の手首を左手で握って脚を前後に開くと、衝撃に備えるように重心を低く構えた。
その後ろからザックさんが両手をミラさんの肩に添えて後ろから支える。
シルビアさんは背後のローランさんの方を向いた。
「ローラン」
ローランさんは無言で片ひざをつくと両手を重ねて手の平を上にして捧げるように前に突き出す。
シルビアさんはその上にトンと飛び乗り足を乗せた。
ローランさんは勢いを付けて立ち上がり、シルビアさんを思いっきり上空に放り投げた。
シルビアさんは立った姿勢のままで足の下に浮かんだ緑の魔方陣から風を出して地上から数メートル上に浮いた。
ミラさんは右手の平を霧の影の左端に向けて構えて詠唱を開始した。
「女神ルミナスの導きに我が魂呼応せん。この手に宿るは聖なる炎、燃え盛り地に映えさせ、灼熱の断罪を敵に刻め!」
右手の前方に大きな赤い魔法陣が浮かび上がる。
上空ではシルビアさんが詠唱を始めている。
「女神ルミナスの導きに我が魂呼応せん。この手に集うは風の剣、荒ぶる風に意志を宿し、天駆ける断刃となす」
影に沿うようにいくつもの緑の魔方陣が横に並んだ。
地上ではミラさんが魔法を発動させた。
「なぎはらえ、獄炎斬!」
魔方陣から真っ赤な炎が吹き出し、巨大な炎の柱のようにゴォーという音を出しながら前方の瘴気の中の魔獣の影に向かっていく。
ミラさんの体が炎の反動で後ろにずれていくのをザックさんが押し返している。
真っ直ぐ伸びていった炎の柱が瘴気を吹き飛ばし影に当たった。
ドーンと爆音が響いて爆煙が吹き上がり、その中からギャーとかギーとか魔獣の断末魔が響き渡った。
ミラさんは炎の柱をそのまま左から右へ、なぎはらうように動かしていくと爆煙と断末魔も右へ移動していく。
獄炎斬。
大聖女ルシアが敵が多数の戦闘で最も好んだ大魔法。
以前、ミラさんに教えてと頼んだが練習所では無理、いずれ実戦で見せてやる、と言われたがその意味がわかった。
爆煙の中から巨大なスズメバチやカマキリが、炎から逃げるように上に向かって飛んだ。
それらを待っていたかのように、シルビアさんが叫んだ。
「斬り裂け、烈風斬、連撃!」
並べられていた緑の魔方陣から放たれた巨大な風の刃が爆煙から飛び出した魔獣たちを次々に切断していく。
騎士の方々からも驚きの声が聞こえてくるが、聞き覚えのある声があった。
「いやー、ギリギリ間に合った。相変わらず、ミラの獄炎斬はすごいねえ。本家の大聖女ルシアのとは違ってるんだけどね」
振り返ると魔法研究所長のユリウスがいて私と目が合った。
「やあ、アンジェ。今のでわかったかい?」
わかった、そして覚えた。
ユリウスから教わっていたが、どうしても再現できなかった。
今ならできる。
だけど、今はそれどころじゃない。
前方の戦いに意識を戻す。
ミラさんの放つ炎の柱が瘴気の影の右端まで届いたが、そのとたん、炎は短くなっていき、そして消えた。
ミラさんは力尽きたようにペタンと地面に座り込んでしまった。
すぐにザックさんが横抱きのお姫様だっこで抱えて後方に走って行く。
「はーい、ミラ様、打ち止め。下がりまーす」
マナを使い切ったんだ。
これでミラさんは当分、戻ってこれない。
収まりつつある爆煙から、黒焦げで原型をとどめていない魔獣の死体を乗り越えて、炎に耐えられた魔獣が姿を現した。
カラや硬い皮におおわれた虫型のA級が多く、その後ろには炎を逃れたB級、軟体動物のようなC級が続く。
半数近くは焼き払われたように見えるが、まだかなり残っている。
上空へ逃れようとする魔獣は、シルビアさんがことごとく切り裂いて打ち落としていく。
「いくわよ、ライル!」
横から聞こえたエリザさんの声の方を見ると、両手の手の平を自分とライルさんに向けて、詠唱を始めている。
「女神ルミナスの導きに我が魂呼応せん。光の加護を我らの肉体に宿らしめ、その輝きを高まる力とせよ」
手の平からの光が大きくなっていく。
「高まれ、光華昇力!」
ライルさんとエリザさんの体が金色の光に包まれた。
人体強化魔法! エリザさんは直接、魔獣と戦うつもりなんだ。
そして、大剣に手を触れると、大剣が黄金のように輝き始める。
これは武器の強化魔法。
ライルさんがエリザさんを肩に乗せたまま人ではあり得ない速さで走り出し、すぐに爆煙から出てきた巨大なムカデのそばにたどり着いた。
振り上げられた光る大剣が頭を切り落とす。そしてすぐに、次の標的へと素早く移動していく。
これが、光の聖女の戦い方だ。
光魔法は治癒、回復、防御のイメージがあったがこんな戦い方があるとは思わなかった。
以前、従騎士を選ぶときライルさんは戦い方に合わせて魔法研究所が選んだと聞いたことを思い出した。
きっと魔法研究所が考えた戦い方なんだ。
エリザさんに人体強化魔法を教えて欲しいと頼んだことがあったが『炎、水、風を持つアンジェがあえて危険な接近戦を選ぶ必要はありません』とやんわりと断られたことを思い出した。
今、強化魔法も覚えた。
「我々も行くぞー!」
背後の騎士の方々も、かけ声とともに剣をかざしつつ前に走り始め、私とシオンを追い抜いていった。
前方にはムカデと背後に隠れるようにナメクジが何匹かいる。
「アンジェー、さっさと行けー! お前はA級だけ殺りゃーいんだからなあー! 騎士のおっさんたちをまもってやれー」
ザックさんに支えられながら立っているミラさんに後ろからゲキを飛ばされた。
「アンジェ様、行きましょう!」
そう言うシオンにうなずいて返事をして、一緒に走って行く。
前方で、体半分を立ち上がらせるムカデの胴に騎士が斬りつけたが、剣がカン!と外皮に跳ね返された。
牙を開いた口が上から騎士に襲いかかった。
私は立ち止まり、狙いを定めて右手をかざす。
「つらぬけ、流水槍!」
発射された水の槍はムカデ型の口に突き刺さり、頭を貫いて後ろに突き抜けた
よし、当たった!
「A級は私がやりますので、みなさまはB級とC級を!」
騎士の人たちにそう叫んで体の向きを変え、こちらに向かってくるムカデの頭に向かって流水槍を撃った。
スカッ!
あっ、外れた。というより外された。
命中する寸前でムカデ型は頭を右にずらしてかわした。
「さっきのように相手の動きを予測して!」
背後で別のムカデと戦っているシオンが叫んだ。
さっきは騎士を襲っていたので動く方向がなんとなくわかったが、今はどっちにいくのかわからない。
今度は左右両手で二発立て続けに発射した。
スカッ、スカッ。
頭は右に左に流水槍をかわし、逆に口を開いて私に向かってくる。
早く、聖光障球を!
と思いながらも体が恐怖に凍り付いて反応ができない。
牙の生えた開いた口が私の目前に迫ってきた。
死ぬ!
生まれて初めて死を意識した。
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