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piece6 親友たちへの告白
私のせいだ
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***
小1時間後、拓真と彩奈が公園に姿を見せた。
「2人とも、来てくれてありがとう」
彩奈は、剛士の言葉に軽く首を横に振ってみせた。
しかしその顔は、蒼白だ。
剛士の隣りには拓真、その横に彩奈が腰掛ける。
向かいに座る高木とエリカが、顔を見合わせ、そっと頷き合った。
「……三田エリカです」
「高木正信です」
2人は自己紹介をすると、拓真と彩奈に向かい、会釈する。
確認をするように、拓真が言った。
「ゴウの元カノさん。と、その彼氏さんですね。あ、ゴウの元先輩でもあるか」
全く棘がないとは言えないまでも、落ち着いた声音だった。
高木とエリカが頷いたのを見ると、拓真も自己紹介をする。
「オレは、ゴウの親友の酒井拓真です。で、こちらは、悠里ちゃんの親友の――」
拓真の視線に応え、彩奈が小さな声で言う。
「……石川彩奈です」
自己紹介を終え、拓真が剛士に向き直る。
「ゴウ。オレも彩奈ちゃんも、ある程度は覚悟してる……何があったか、教えて」
これから自分は、親友2人を――特に彩奈を、酷く悲しませる事実を説明せねばならない。
無意識のうちに、剛士は唇を引き結ぶ。
心臓が、嫌な音を立てて、胸の中で暴れていた。
苦しさと重圧に、潰されてしまいそうだった。
――しっかりしろ。
俺がちゃんとしなきゃ、悠里を助けられない。
剛士は、小さな深呼吸をする。
そうして、できるだけ声が乱れないように、ゆっくりと話し始めた。
「……修了式の日、俺と悠里は、お互いに学校が終わったら連絡取り合って、待ち合わせる予定だった」
拓真、そして彩奈が、剛士を見つめて頷く。
剛士は息苦しさを堪えながら、端的に言った。
「でも悠里は、学校を出る前に、安藤カンナに捕まった」
「……え?」
彩奈が目を見開き、ビクリと身体を震わせる。
「なんで……」
――どうして。どうやって。
なんで、アイツが。
幾つもの疑問と衝撃が駆け巡り、彩奈は頭を働かせることができない。
「学校? なんで……なんで?」
働かない頭に反し、彼女の心臓は敏感に反応し、激しく暴れ出した。
彩奈は、苦しげに目を伏せる剛士の顔を、まじまじと見つめる。
エリカが、剛士に目配せをして許可を取る。
そうして彩奈に向かい、静かな声で状況を補足した。
「悠里ちゃんに接触したのは、バスケ部1年生の2人なの。この2人は、カンナと親しくしてたみたい」
彩奈には、その2人に全く心当たりがないのだろう。
赤メガネの奥の瞳を不安に揺らめかせ、エリカに向かって首を傾げる。
エリカは、頼りなく瞬く彼女の視線を受け止めながら、説明を続けた。
「その子たちが、『荷物を運ぶのを手伝って欲しい』って声を掛けて、悠里ちゃんを騙して……カンナがいるバスケ部の準備室に、連れて行ったの」
彩奈が小さく息を飲んだのが、場にいる皆に伝わった。
彼女の顔が青ざめ、身体が小刻みに震えだす。
剛士が、声を掛けようとしたそのとき、彩奈が涙声で呟いた。
「……私のせいだ」
剛士が、大きく首を横に振る。
「彩奈。違う」
「私が、先に学校出ちゃったから。悠里を1人にしたから」
「彩奈、違うよ」
しかし彩奈は、かぶりを振って剛士の言葉を否定する。
「私がちゃんと、悠里が学校出るまで一緒にいれば。悠里は連れて行かれたりしなかった」
「彩奈」
いつも明るく、力強く輝いている彼女の瞳から、冷たい涙が零れた。
「私が、ちゃんとしなかったから、こんなことになったんだ。学校の中で悠里を守れるのは、私だけだったのに」
「彩奈」
剛士は必死の思いで、彼女に声を掛け続ける。
「お前は何も悪くない。悪いのは俺だよ」
わかっていた。
この件を打ち明ければ、彩奈はきっと、自分を責めてしまうと。
彩奈を傷つけると知りながら、それでも、彼女の力を借りなければ悠里を救う手立てもない。
――悪いのは、無力な俺だ……
赤いメガネを取り、止めどなく溢れる涙を拭う彩奈の姿に、剛士の胸は締め付けられる。
「彩奈……ごめん……」
「……うん。彩奈ちゃん。独りで背負わないで」
彩奈の隣りに座っていた拓真が、そっと彼女の背をさする。
「それを言うなら修了式後、2人でデートしなって提案したオレだって悪い。悠里ちゃんを1人にするキッカケを作ってしまったのは、オレだよ。彩奈ちゃんは悪くない」
彩奈は泣きながらも、拓真の言葉に首を強く横に振った。
小1時間後、拓真と彩奈が公園に姿を見せた。
「2人とも、来てくれてありがとう」
彩奈は、剛士の言葉に軽く首を横に振ってみせた。
しかしその顔は、蒼白だ。
剛士の隣りには拓真、その横に彩奈が腰掛ける。
向かいに座る高木とエリカが、顔を見合わせ、そっと頷き合った。
「……三田エリカです」
「高木正信です」
2人は自己紹介をすると、拓真と彩奈に向かい、会釈する。
確認をするように、拓真が言った。
「ゴウの元カノさん。と、その彼氏さんですね。あ、ゴウの元先輩でもあるか」
全く棘がないとは言えないまでも、落ち着いた声音だった。
高木とエリカが頷いたのを見ると、拓真も自己紹介をする。
「オレは、ゴウの親友の酒井拓真です。で、こちらは、悠里ちゃんの親友の――」
拓真の視線に応え、彩奈が小さな声で言う。
「……石川彩奈です」
自己紹介を終え、拓真が剛士に向き直る。
「ゴウ。オレも彩奈ちゃんも、ある程度は覚悟してる……何があったか、教えて」
これから自分は、親友2人を――特に彩奈を、酷く悲しませる事実を説明せねばならない。
無意識のうちに、剛士は唇を引き結ぶ。
心臓が、嫌な音を立てて、胸の中で暴れていた。
苦しさと重圧に、潰されてしまいそうだった。
――しっかりしろ。
俺がちゃんとしなきゃ、悠里を助けられない。
剛士は、小さな深呼吸をする。
そうして、できるだけ声が乱れないように、ゆっくりと話し始めた。
「……修了式の日、俺と悠里は、お互いに学校が終わったら連絡取り合って、待ち合わせる予定だった」
拓真、そして彩奈が、剛士を見つめて頷く。
剛士は息苦しさを堪えながら、端的に言った。
「でも悠里は、学校を出る前に、安藤カンナに捕まった」
「……え?」
彩奈が目を見開き、ビクリと身体を震わせる。
「なんで……」
――どうして。どうやって。
なんで、アイツが。
幾つもの疑問と衝撃が駆け巡り、彩奈は頭を働かせることができない。
「学校? なんで……なんで?」
働かない頭に反し、彼女の心臓は敏感に反応し、激しく暴れ出した。
彩奈は、苦しげに目を伏せる剛士の顔を、まじまじと見つめる。
エリカが、剛士に目配せをして許可を取る。
そうして彩奈に向かい、静かな声で状況を補足した。
「悠里ちゃんに接触したのは、バスケ部1年生の2人なの。この2人は、カンナと親しくしてたみたい」
彩奈には、その2人に全く心当たりがないのだろう。
赤メガネの奥の瞳を不安に揺らめかせ、エリカに向かって首を傾げる。
エリカは、頼りなく瞬く彼女の視線を受け止めながら、説明を続けた。
「その子たちが、『荷物を運ぶのを手伝って欲しい』って声を掛けて、悠里ちゃんを騙して……カンナがいるバスケ部の準備室に、連れて行ったの」
彩奈が小さく息を飲んだのが、場にいる皆に伝わった。
彼女の顔が青ざめ、身体が小刻みに震えだす。
剛士が、声を掛けようとしたそのとき、彩奈が涙声で呟いた。
「……私のせいだ」
剛士が、大きく首を横に振る。
「彩奈。違う」
「私が、先に学校出ちゃったから。悠里を1人にしたから」
「彩奈、違うよ」
しかし彩奈は、かぶりを振って剛士の言葉を否定する。
「私がちゃんと、悠里が学校出るまで一緒にいれば。悠里は連れて行かれたりしなかった」
「彩奈」
いつも明るく、力強く輝いている彼女の瞳から、冷たい涙が零れた。
「私が、ちゃんとしなかったから、こんなことになったんだ。学校の中で悠里を守れるのは、私だけだったのに」
「彩奈」
剛士は必死の思いで、彼女に声を掛け続ける。
「お前は何も悪くない。悪いのは俺だよ」
わかっていた。
この件を打ち明ければ、彩奈はきっと、自分を責めてしまうと。
彩奈を傷つけると知りながら、それでも、彼女の力を借りなければ悠里を救う手立てもない。
――悪いのは、無力な俺だ……
赤いメガネを取り、止めどなく溢れる涙を拭う彩奈の姿に、剛士の胸は締め付けられる。
「彩奈……ごめん……」
「……うん。彩奈ちゃん。独りで背負わないで」
彩奈の隣りに座っていた拓真が、そっと彼女の背をさする。
「それを言うなら修了式後、2人でデートしなって提案したオレだって悪い。悠里ちゃんを1人にするキッカケを作ってしまったのは、オレだよ。彩奈ちゃんは悪くない」
彩奈は泣きながらも、拓真の言葉に首を強く横に振った。
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