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piece6 親友たちへの告白
彩奈からの電話
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『……あ、シバさん。お疲れさまです。ごめんなさい、急に電話して』
彩奈から電話が来るなど、日常では殆どない。
基本的に彩奈は、拓真の方に連絡をするから――
『すいません。部活中じゃありませんでした?』
「うん。大丈夫だよ」
電話の向こうから聴こえる彩奈の声が、緊張と不安に強張っているのがわかった。
剛士は、悪い予感が正しいことを確信する。
『……シバさん。昨日とか今日、悠里と連絡取りましたか?』
剛士が質問の意図を考える前に、彩奈が不安を訴えてきた。
『悠里のスマホ、電源が入ってないっぽいんです』
「……え?」
メッセージが来ない、電話に出ないどころではない。
電源自体が、入っていない。
予想を超えた言葉に、剛士は掠れた声を上げた。
彩奈が、やや早口で説明してくる。
『私、修了式の次の日の夜かな、悠里にメッセージしたんですよ。でも、その日には連絡なくて。そん時は、もう寝てたかなと思って気にしなかったんですけど』
剛士が相槌を打つ間すら与えず、彩奈は話し続ける。
『でも、今日になっても返事来なくて。悠里がメッセージ返してくれないなんて初めてだから、心配になっちゃって。私、電話したんです。そしたら、何回かけても圏外で……』
彩奈が、縋るように問うてくる。
『シバさんが連絡取れてたら、心配ないかなと思ったんですけど……やっぱり、取ってないですか……?』
剛士は、ぎり、と歯を食い縛った。
メッセージの返信が無いことを憂うばかりで、手をこまねいていた自分に怒りを覚える。
悠里が、スマートフォンの電源を切っている。
全ての連絡を、拒絶している。
自分が思っているよりもずっと、彼女の心理状況は良くないのだと思った。
もう、一刻の猶予もない。
剛士は、スマートフォンを口元から離し、深呼吸をした。
「……彩奈」
できるだけ、彩奈の心を刺激しないように。
剛士は、ゆっくりと語りかける。
「俺、彩奈に話さないといけないことがある。いまから拓真とも、話をするつもりだった」
電話の向こうで、彩奈が息を飲むのがわかった。
剛士は、静かに問いかける。
「これから、会えないか?」
彩奈が、微かに震える声で答えた。
『……やっぱり、悠里に何かあったんですね』
勘のいい彩奈のことだ。
彼女なりに予期するところがあったからこそ、剛士に連絡してきたのだろう。
「……本当に、ごめん」
剛士は、率直に言った。
「彩奈。力を貸して欲しい。拓真にも連絡を取るから、一緒に、あのバスケゴールがある公園に、来て欲しい」
彩奈が、グッと息を詰め、スマートフォンを握りしめているのが伝わってくる。
『……わかりました』
小さな声ではあるが、しっかりと彩奈は答えてくれた。
これ以上を、いまの彩奈に話すのは酷だろう。
剛士は、いったん電話を切ることを選んだ。
「ありがとう。気をつけて来てな」
剛士は、彼女との電話を終えた後、すぐに拓真に電話をする。
呼び出し音が、鳴るか鳴らないかという素早さで、拓真の声が現れる。
『待ってたぞ、ゴウ』
「うん。ごめんな……これから、あのバスケゴールの公園で、会いたい」
『オッケ。すぐ行くわ』
「実はいま、彩奈からも連絡貰って。一緒に、話を聞いて貰うことにした」
『わかった。じゃあオレから彩奈ちゃんに連絡して、待ち合わせするよ』
「ありがとう。助かる」
いつもながら拓真は、一を聞いて十をわかってくれる。
彼の存在は本当に、心強い。
拓真には、更に踏み込んで事情を説明する。
「いまここには、俺の元カノと、その彼氏もいる」
拓真が状況を把握し、素早く考えを巡らせたのがわかった。
『――ってことは、やっぱり、安藤カンナ絡みか』
「……うん」
拓真が、悲しげに問う。
『……悠里ちゃんは、大丈夫か?』
その問いには、剛士は答えられなかった。
拓真が、優しい声音で、うん、と応じた。
『急いで行く。待ってろよ、ゴウ』
剛士を心配してくれる優しい気配に、胸が詰まりそうになる。
「……うん」
辛うじて、剛士は返事をした。
親友の声を聴いて、改めて剛士は、自分がどんなに拓真の存在に助けられているかを知る。
電話を切った後も、剛士は少しの間、スマートフォンに残る親友の余韻を手放せなかった。
彩奈から電話が来るなど、日常では殆どない。
基本的に彩奈は、拓真の方に連絡をするから――
『すいません。部活中じゃありませんでした?』
「うん。大丈夫だよ」
電話の向こうから聴こえる彩奈の声が、緊張と不安に強張っているのがわかった。
剛士は、悪い予感が正しいことを確信する。
『……シバさん。昨日とか今日、悠里と連絡取りましたか?』
剛士が質問の意図を考える前に、彩奈が不安を訴えてきた。
『悠里のスマホ、電源が入ってないっぽいんです』
「……え?」
メッセージが来ない、電話に出ないどころではない。
電源自体が、入っていない。
予想を超えた言葉に、剛士は掠れた声を上げた。
彩奈が、やや早口で説明してくる。
『私、修了式の次の日の夜かな、悠里にメッセージしたんですよ。でも、その日には連絡なくて。そん時は、もう寝てたかなと思って気にしなかったんですけど』
剛士が相槌を打つ間すら与えず、彩奈は話し続ける。
『でも、今日になっても返事来なくて。悠里がメッセージ返してくれないなんて初めてだから、心配になっちゃって。私、電話したんです。そしたら、何回かけても圏外で……』
彩奈が、縋るように問うてくる。
『シバさんが連絡取れてたら、心配ないかなと思ったんですけど……やっぱり、取ってないですか……?』
剛士は、ぎり、と歯を食い縛った。
メッセージの返信が無いことを憂うばかりで、手をこまねいていた自分に怒りを覚える。
悠里が、スマートフォンの電源を切っている。
全ての連絡を、拒絶している。
自分が思っているよりもずっと、彼女の心理状況は良くないのだと思った。
もう、一刻の猶予もない。
剛士は、スマートフォンを口元から離し、深呼吸をした。
「……彩奈」
できるだけ、彩奈の心を刺激しないように。
剛士は、ゆっくりと語りかける。
「俺、彩奈に話さないといけないことがある。いまから拓真とも、話をするつもりだった」
電話の向こうで、彩奈が息を飲むのがわかった。
剛士は、静かに問いかける。
「これから、会えないか?」
彩奈が、微かに震える声で答えた。
『……やっぱり、悠里に何かあったんですね』
勘のいい彩奈のことだ。
彼女なりに予期するところがあったからこそ、剛士に連絡してきたのだろう。
「……本当に、ごめん」
剛士は、率直に言った。
「彩奈。力を貸して欲しい。拓真にも連絡を取るから、一緒に、あのバスケゴールがある公園に、来て欲しい」
彩奈が、グッと息を詰め、スマートフォンを握りしめているのが伝わってくる。
『……わかりました』
小さな声ではあるが、しっかりと彩奈は答えてくれた。
これ以上を、いまの彩奈に話すのは酷だろう。
剛士は、いったん電話を切ることを選んだ。
「ありがとう。気をつけて来てな」
剛士は、彼女との電話を終えた後、すぐに拓真に電話をする。
呼び出し音が、鳴るか鳴らないかという素早さで、拓真の声が現れる。
『待ってたぞ、ゴウ』
「うん。ごめんな……これから、あのバスケゴールの公園で、会いたい」
『オッケ。すぐ行くわ』
「実はいま、彩奈からも連絡貰って。一緒に、話を聞いて貰うことにした」
『わかった。じゃあオレから彩奈ちゃんに連絡して、待ち合わせするよ』
「ありがとう。助かる」
いつもながら拓真は、一を聞いて十をわかってくれる。
彼の存在は本当に、心強い。
拓真には、更に踏み込んで事情を説明する。
「いまここには、俺の元カノと、その彼氏もいる」
拓真が状況を把握し、素早く考えを巡らせたのがわかった。
『――ってことは、やっぱり、安藤カンナ絡みか』
「……うん」
拓真が、悲しげに問う。
『……悠里ちゃんは、大丈夫か?』
その問いには、剛士は答えられなかった。
拓真が、優しい声音で、うん、と応じた。
『急いで行く。待ってろよ、ゴウ』
剛士を心配してくれる優しい気配に、胸が詰まりそうになる。
「……うん」
辛うじて、剛士は返事をした。
親友の声を聴いて、改めて剛士は、自分がどんなに拓真の存在に助けられているかを知る。
電話を切った後も、剛士は少しの間、スマートフォンに残る親友の余韻を手放せなかった。
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