33 / 41
piece9 重ねる日常
暖かい思い出
しおりを挟む
はぁーっと、剛士が長い溜め息をつく。
「……カッコ悪、俺」
「カッコ悪くないよ」
恥じらいを振り払うように、くしゃくしゃと前髪を掻き上げた剛士に、悠里はにっこり微笑んだ。
悠里はまだ、練習試合の一度しか、彼のバスケ部に触れたことはない。
けれど、あのとき見たバスケ部は、仲間意識が高く、互いを助け合い、皆で戦うという意志が強いチームだった。
そのような部の雰囲気こそ、剛士が自分を投げ打って、守り抜いたものなのだと思う。
悠里は真っ直ぐに彼を見つめ、言った。
「ゴウさんは、カッコいいよ」
剛士は悠里の顔を見つめ返すと、ふっと緊張が解けたような優しい微笑を浮かべる。
「俺、こんな話をしたの、初めてだ」
切れ長の瞳は、先程までとは打って変わって、穏やかな光をたたえていた。
「拓真も、バスケ部のみんなも、俺を助けてくれた。俺1人じゃ駄目だったかも知れないけど、みんなのおかげで今があるんだ」
友だちや仲間への感謝を口にする剛士の姿に、胸が暖かくなる。
悠里は微笑んで頷いた。
「特に副キャプテンには、本当に、助けて貰ったよ」
懐かしむように、剛士は柔らかな笑みを浮かべる。
「拓真と同じで、俺が揶揄われたり、いろいろ言われたりしたとき、いつも庇ってくれた。励ましてくれた」
悲しみを吐き出したことで、暖かい思い出の方にも目を向けられるようになったのだろうか。
いつになく饒舌に、剛士は語り続ける。
「そいつな。俺がいないときに、みんなに演説してくれてたらしい。俺がバスケ部には必要だって、俺がキャプテンじゃないとイヤだ、だからみんな力を貸してやってくれ、俺にバスケを続けさせてやってくれ……って」
剛士に向けられた、仲間からの、ひたむきな感情。
微笑んだ悠里につられるように、剛士も顔をほころばせた。
「そこまで言われたら、弱音なんて吐いてられなかった。俺、がんばるしかなかったよ」
「そっか……素敵な人だね、副キャプテンさん」
直接会ったことのない人ではあるが、悠里は感謝せずにはいられなかった。
ふっと剛士は微笑む。
「お前も、見たことはあるヤツだぞ?」
「えっ?あ、練習試合のとき?」
「そう。副キャプテンはポイントガード」
「ポイント、ガード……」
「はは、わからないよな」
剛士は楽しそうに説明する。
「ポイントガードっていうのは、ゲームの司令塔だな。ウチは、副キャプテンがそのポジションで、仲間にフォーメーションとかの指示を出してる」
「うんうん」
「俺は、シューティングガード。簡単に言えば、点取り屋だな。スリーポイントとか、ドライブ……っていうんだけど、ドリブルで相手を抜いてゴールを狙いに行ったりする。それから、ポイントガードの補佐をするのも重要な役割だな」
「カッコいい!」
目を輝かせる悠里に、思わず剛士は笑った。
「そうだな。カッコいいポジションだよな」
言いながら、今度は照れ笑いを浮かべる。
「……ごめん。急にバスケの話をしだして」
悠里は微笑んだ。
「教えてくれて嬉しい!試合のときも、わかって見ていたら、もっと楽しく応援できたね」
「……うん」
剛士は照れ笑いをそのままに、悠里を見つめた。
「また、観に来てな」
「うん!」
嬉しくて、悠里は思わず繋いだ手をぶんぶんと振った。
弾かれたように、剛士が笑い出す。
「お前、本当に可愛いな」
悠里も声を立てて笑った。
「……カッコ悪、俺」
「カッコ悪くないよ」
恥じらいを振り払うように、くしゃくしゃと前髪を掻き上げた剛士に、悠里はにっこり微笑んだ。
悠里はまだ、練習試合の一度しか、彼のバスケ部に触れたことはない。
けれど、あのとき見たバスケ部は、仲間意識が高く、互いを助け合い、皆で戦うという意志が強いチームだった。
そのような部の雰囲気こそ、剛士が自分を投げ打って、守り抜いたものなのだと思う。
悠里は真っ直ぐに彼を見つめ、言った。
「ゴウさんは、カッコいいよ」
剛士は悠里の顔を見つめ返すと、ふっと緊張が解けたような優しい微笑を浮かべる。
「俺、こんな話をしたの、初めてだ」
切れ長の瞳は、先程までとは打って変わって、穏やかな光をたたえていた。
「拓真も、バスケ部のみんなも、俺を助けてくれた。俺1人じゃ駄目だったかも知れないけど、みんなのおかげで今があるんだ」
友だちや仲間への感謝を口にする剛士の姿に、胸が暖かくなる。
悠里は微笑んで頷いた。
「特に副キャプテンには、本当に、助けて貰ったよ」
懐かしむように、剛士は柔らかな笑みを浮かべる。
「拓真と同じで、俺が揶揄われたり、いろいろ言われたりしたとき、いつも庇ってくれた。励ましてくれた」
悲しみを吐き出したことで、暖かい思い出の方にも目を向けられるようになったのだろうか。
いつになく饒舌に、剛士は語り続ける。
「そいつな。俺がいないときに、みんなに演説してくれてたらしい。俺がバスケ部には必要だって、俺がキャプテンじゃないとイヤだ、だからみんな力を貸してやってくれ、俺にバスケを続けさせてやってくれ……って」
剛士に向けられた、仲間からの、ひたむきな感情。
微笑んだ悠里につられるように、剛士も顔をほころばせた。
「そこまで言われたら、弱音なんて吐いてられなかった。俺、がんばるしかなかったよ」
「そっか……素敵な人だね、副キャプテンさん」
直接会ったことのない人ではあるが、悠里は感謝せずにはいられなかった。
ふっと剛士は微笑む。
「お前も、見たことはあるヤツだぞ?」
「えっ?あ、練習試合のとき?」
「そう。副キャプテンはポイントガード」
「ポイント、ガード……」
「はは、わからないよな」
剛士は楽しそうに説明する。
「ポイントガードっていうのは、ゲームの司令塔だな。ウチは、副キャプテンがそのポジションで、仲間にフォーメーションとかの指示を出してる」
「うんうん」
「俺は、シューティングガード。簡単に言えば、点取り屋だな。スリーポイントとか、ドライブ……っていうんだけど、ドリブルで相手を抜いてゴールを狙いに行ったりする。それから、ポイントガードの補佐をするのも重要な役割だな」
「カッコいい!」
目を輝かせる悠里に、思わず剛士は笑った。
「そうだな。カッコいいポジションだよな」
言いながら、今度は照れ笑いを浮かべる。
「……ごめん。急にバスケの話をしだして」
悠里は微笑んだ。
「教えてくれて嬉しい!試合のときも、わかって見ていたら、もっと楽しく応援できたね」
「……うん」
剛士は照れ笑いをそのままに、悠里を見つめた。
「また、観に来てな」
「うん!」
嬉しくて、悠里は思わず繋いだ手をぶんぶんと振った。
弾かれたように、剛士が笑い出す。
「お前、本当に可愛いな」
悠里も声を立てて笑った。
0
あなたにおすすめの小説
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
~春の国~片足の不自由な王妃様
クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。
春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。
街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。
それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。
しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。
花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました
由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。
尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。
けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。
そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。
再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。
一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。
“尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。
静かに離婚しただけなのに、
なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。
【完結】冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない
くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、
軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。
言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。
――そして初めて、夫は気づく。
自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。
一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、
「必要とされる存在」として歩き始めていた。
去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。
これは、失ってから愛に気づいた男と、
二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。
――今さら、遅いのです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる