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piece8 ずっと話したかった
邪魔をしたくない
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「私、去年の秋に、イタズラ電話とか変な手紙とか、ストーカーみたいなことをされて」
「……うん」
2人は手すりに背を預け、どちらからともなく、並んで腰を下ろす。
「柴崎さんとは、その頃に偶然知り合って。登下校を一緒にしてくれたり、すごくお世話になったんです」
「そうだったんだ……」
悠里の話に、エリカは感心したように何度か頷く。
「悠里ちゃんはバスケ部じゃないし、ご……柴崎くんは、あまり女の子を寄せ付けないはずなのに。2人がどんなふうに知り合って仲良くなったのかなって、不思議だったんだ」
そんな始まりだったんだね、とエリカは微笑んだ。
その笑顔の暖かさにホッとし、悠里は少しだけ饒舌になる。
「そのストーカーは、実は勇誠の生徒で」
「えっ、そうだったの?」
「はい……それで、バスケ部の練習試合を観に行ったときに、私……捕まっちゃって」
「ええ!?」
エリカが心配そうに顔をしかめる。
「大丈夫だったの?」
「はい……」
気恥ずかしさに、悠里は俯いた。
「あ、あの……ゴ、柴崎さんが、助けてくれたんです」
「そっかあ……はあ、良かった……」
まるで、つい今しがた起こった事件であるかのような臨場感で、エリカがホッと息をついた。
「……でも、私のせいで、柴崎さんに練習試合を抜けさせてしまって」
悠里は、きゅっと手を握りしめる。
「登下校も、本当は、部活を早退してくれていたんです。でも柴崎さんは、私に黙ってくれてて」
「……うん」
「だから私、」
悠里は決意を胸に、言った。
「もう絶対に、柴崎さんの部活の邪魔をしたくないんです」
剛士は、自分の心を殺してでも、バスケ部に尽くす人だと知っている。
エリカと別れたときも、自分の傷は一切顧みず、バスケ部の立て直しに尽力した。
バスケ部を、何よりも大切にしている人。
先輩から託された部を、仲間や後輩のいる部を、何としても守る人。
後輩のために勉強会を開いて、バスケ以外の面でも、献身的に部員を支える人。
そんな剛士を、応援したい。
ひたむきな剛士を、支えられる存在になりたい。
剛士の負担になど、絶対になりたくない――
「……うん」
2人は手すりに背を預け、どちらからともなく、並んで腰を下ろす。
「柴崎さんとは、その頃に偶然知り合って。登下校を一緒にしてくれたり、すごくお世話になったんです」
「そうだったんだ……」
悠里の話に、エリカは感心したように何度か頷く。
「悠里ちゃんはバスケ部じゃないし、ご……柴崎くんは、あまり女の子を寄せ付けないはずなのに。2人がどんなふうに知り合って仲良くなったのかなって、不思議だったんだ」
そんな始まりだったんだね、とエリカは微笑んだ。
その笑顔の暖かさにホッとし、悠里は少しだけ饒舌になる。
「そのストーカーは、実は勇誠の生徒で」
「えっ、そうだったの?」
「はい……それで、バスケ部の練習試合を観に行ったときに、私……捕まっちゃって」
「ええ!?」
エリカが心配そうに顔をしかめる。
「大丈夫だったの?」
「はい……」
気恥ずかしさに、悠里は俯いた。
「あ、あの……ゴ、柴崎さんが、助けてくれたんです」
「そっかあ……はあ、良かった……」
まるで、つい今しがた起こった事件であるかのような臨場感で、エリカがホッと息をついた。
「……でも、私のせいで、柴崎さんに練習試合を抜けさせてしまって」
悠里は、きゅっと手を握りしめる。
「登下校も、本当は、部活を早退してくれていたんです。でも柴崎さんは、私に黙ってくれてて」
「……うん」
「だから私、」
悠里は決意を胸に、言った。
「もう絶対に、柴崎さんの部活の邪魔をしたくないんです」
剛士は、自分の心を殺してでも、バスケ部に尽くす人だと知っている。
エリカと別れたときも、自分の傷は一切顧みず、バスケ部の立て直しに尽力した。
バスケ部を、何よりも大切にしている人。
先輩から託された部を、仲間や後輩のいる部を、何としても守る人。
後輩のために勉強会を開いて、バスケ以外の面でも、献身的に部員を支える人。
そんな剛士を、応援したい。
ひたむきな剛士を、支えられる存在になりたい。
剛士の負担になど、絶対になりたくない――
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