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piece8 ずっと話したかった
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「……エリカさん」
悠里は、真っ直ぐにエリカを見上げた。
「……ん?」
エリカは悲しみに沈みながらも、口元に優しい笑みを浮かべ直し、悠里を見つめた。
悠里は胸を押さえ、問いかける。
「ひとつだけ、教えてください」
「うん……なあに?」
「エリカさんは、柴崎さんと、やり直したいと、思っていますか?」
悠里の言葉を聞いたエリカは、一瞬の沈黙の後、しっかりと首を横に振ってみせた。
「思ってないよ。思ってたら、こんなふうに悠里ちゃんと話さないよ」
エリカは悠里の目を見つめ、微笑んだ。
エリカの声音に嘘はないと感じ、悠里は無意識のうちに、ホッと大きく息をつく。
エリカ自身の口から、明確な否定の言葉を聞けたことは、大きな安心感をもたらした。
その様子に、エリカが微かに笑む。
「私の言葉を、信じてくれるんだね……私の友だちが、悠里ちゃんに、酷いこと言ったのに」
悠里は小さく頷き、答える。
「安藤さんの言葉には、はじめから違和感があったので……あの、廊下で偶然会ったときのエリカさんの雰囲気とか、ゴウ……柴崎さんから聞いた話とは、違っていたから」
「……そっか」
エリカが、笑みを大きくした。
「悠里ちゃんは頭が良くて、冷静に判断できる人なんだね。何より、優しい人だ……」
「いえ、そんな……」
「人間を、性善説で捉えるタイプでしょ」
エリカは悪戯っぽく微笑み、悠里の顔を覗き込んだ。
つられて悠里の口元にも笑みが浮かぶ。
「性善説かはわかりませんが……柴崎さんが、好きになってお付き合いしていたエリカさんが、悪い人なわけはないと、思っていました」
「あはは」
エリカが、照れたように笑いを深めた。
「そう言って貰えて嬉しいんだけど、ますます私は反省しなきゃ」
「……ふふ。でも、エリカさんとお話できて、ホッとしました」
悠里は、にっこりと微笑んでみせた。
そうして、丁寧に頭を下げる。
「ご心配をおかけして、すみませんでした。私、大丈夫ですから」
その瞬間、エリカの、キリッとした艶やかな瞳が、引き締まった。
「いや、大丈夫ではないでしょ」
瞳と同じ強い声音に、悠里は思わず動きを止める。
顔を上げると、エリカの真剣な瞳とぶつかった。
悠里は息を詰めて、その綺麗な目に見入ってしまう。
悠里は、真っ直ぐにエリカを見上げた。
「……ん?」
エリカは悲しみに沈みながらも、口元に優しい笑みを浮かべ直し、悠里を見つめた。
悠里は胸を押さえ、問いかける。
「ひとつだけ、教えてください」
「うん……なあに?」
「エリカさんは、柴崎さんと、やり直したいと、思っていますか?」
悠里の言葉を聞いたエリカは、一瞬の沈黙の後、しっかりと首を横に振ってみせた。
「思ってないよ。思ってたら、こんなふうに悠里ちゃんと話さないよ」
エリカは悠里の目を見つめ、微笑んだ。
エリカの声音に嘘はないと感じ、悠里は無意識のうちに、ホッと大きく息をつく。
エリカ自身の口から、明確な否定の言葉を聞けたことは、大きな安心感をもたらした。
その様子に、エリカが微かに笑む。
「私の言葉を、信じてくれるんだね……私の友だちが、悠里ちゃんに、酷いこと言ったのに」
悠里は小さく頷き、答える。
「安藤さんの言葉には、はじめから違和感があったので……あの、廊下で偶然会ったときのエリカさんの雰囲気とか、ゴウ……柴崎さんから聞いた話とは、違っていたから」
「……そっか」
エリカが、笑みを大きくした。
「悠里ちゃんは頭が良くて、冷静に判断できる人なんだね。何より、優しい人だ……」
「いえ、そんな……」
「人間を、性善説で捉えるタイプでしょ」
エリカは悪戯っぽく微笑み、悠里の顔を覗き込んだ。
つられて悠里の口元にも笑みが浮かぶ。
「性善説かはわかりませんが……柴崎さんが、好きになってお付き合いしていたエリカさんが、悪い人なわけはないと、思っていました」
「あはは」
エリカが、照れたように笑いを深めた。
「そう言って貰えて嬉しいんだけど、ますます私は反省しなきゃ」
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そうして、丁寧に頭を下げる。
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その瞬間、エリカの、キリッとした艶やかな瞳が、引き締まった。
「いや、大丈夫ではないでしょ」
瞳と同じ強い声音に、悠里は思わず動きを止める。
顔を上げると、エリカの真剣な瞳とぶつかった。
悠里は息を詰めて、その綺麗な目に見入ってしまう。
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