#秒恋4 恋の試練は元カノじゃなくて、元カノの親友だった件。

ReN

文字の大きさ
上 下
67 / 94
piece8 ずっと話したかった

教えてください

しおりを挟む
「……エリカさん」
悠里は、真っ直ぐにエリカを見上げた。
「……ん?」
エリカは悲しみに沈みながらも、口元に優しい笑みを浮かべ直し、悠里を見つめた。

悠里は胸を押さえ、問いかける。
「ひとつだけ、教えてください」
「うん……なあに?」

「エリカさんは、柴崎さんと、やり直したいと、思っていますか?」


悠里の言葉を聞いたエリカは、一瞬の沈黙の後、しっかりと首を横に振ってみせた。
「思ってないよ。思ってたら、こんなふうに悠里ちゃんと話さないよ」
エリカは悠里の目を見つめ、微笑んだ。

エリカの声音に嘘はないと感じ、悠里は無意識のうちに、ホッと大きく息をつく。
エリカ自身の口から、明確な否定の言葉を聞けたことは、大きな安心感をもたらした。


その様子に、エリカが微かに笑む。
「私の言葉を、信じてくれるんだね……私の友だちが、悠里ちゃんに、酷いこと言ったのに」

悠里は小さく頷き、答える。
「安藤さんの言葉には、はじめから違和感があったので……あの、廊下で偶然会ったときのエリカさんの雰囲気とか、ゴウ……柴崎さんから聞いた話とは、違っていたから」

「……そっか」
エリカが、笑みを大きくした。
「悠里ちゃんは頭が良くて、冷静に判断できる人なんだね。何より、優しい人だ……」
「いえ、そんな……」
「人間を、性善説で捉えるタイプでしょ」
エリカは悪戯っぽく微笑み、悠里の顔を覗き込んだ。

つられて悠里の口元にも笑みが浮かぶ。
「性善説かはわかりませんが……柴崎さんが、好きになってお付き合いしていたエリカさんが、悪い人なわけはないと、思っていました」
「あはは」

エリカが、照れたように笑いを深めた。
「そう言って貰えて嬉しいんだけど、ますます私は反省しなきゃ」

「……ふふ。でも、エリカさんとお話できて、ホッとしました」
悠里は、にっこりと微笑んでみせた。
そうして、丁寧に頭を下げる。
「ご心配をおかけして、すみませんでした。私、大丈夫ですから」

その瞬間、エリカの、キリッとした艶やかな瞳が、引き締まった。
「いや、大丈夫ではないでしょ」

瞳と同じ強い声音に、悠里は思わず動きを止める。
顔を上げると、エリカの真剣な瞳とぶつかった。
悠里は息を詰めて、その綺麗な目に見入ってしまう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

#秒恋7 それぞれの翌日――壊れた日常を取り戻すために

ReN
恋愛
#秒恋7 それぞれの翌日――壊れた日常を取り戻すために 悠里と剛士を襲った悲しい大事件の翌日と翌々日を描いた今作。 それぞれの家族や、剛士の部活、そして2人の親友を巻き込み、悲しみが膨れ上がっていきます。 壊れてしまった幸せな日常を、傷つき閉ざされてしまった悠里の心を、剛士は取り戻すことはできるのでしょうか。 過去に登場した悠里の弟や、これまで登場したことのなかった剛士の家族。 そして、剛士のバスケ部のメンバー。 何より、親友の彩奈と拓真。 周りの人々に助けられながら、壊れた日常を取り戻そうと足掻いていきます。 やはりあの日の大事件のショックは大きくて、簡単にハッピーエンドとはいかないようです…… それでも、2人がもう一度、手を取り合って、抱き合って。 心から笑い合える未来を掴むために、剛士くんも悠里ちゃんもがんばっていきます。 心の傷。トラウマ。 少しずつ、乗り越えていきます。 ぜひ見守ってあげてください!

【完結】貴方の後悔など、聞きたくありません。

なか
恋愛
学園に特待生として入学したリディアであったが、平民である彼女は貴族家の者には目障りだった。 追い出すようなイジメを受けていた彼女を救ってくれたのはグレアルフという伯爵家の青年。 優しく、明るいグレアルフは屈託のない笑顔でリディアと接する。 誰にも明かさずに会う内に恋仲となった二人であったが、 リディアは知ってしまう、グレアルフの本性を……。 全てを知り、死を考えた彼女であったが、 とある出会いにより自分の価値を知った時、再び立ち上がる事を選択する。 後悔の言葉など全て無視する決意と共に、生きていく。

白い結婚は無理でした(涙)

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。 明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。 白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。 現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。 どうぞよろしくお願いいたします。

危険な残業

詩織
恋愛
いつも残業の多い奈津美。そこにある人が現れいつもの残業でなくなる

#秒恋5 恋人同士まで、秒読みの、筈だった

ReN
恋愛
#秒恋シリーズ5作目 恋人同士まで、秒読み段階に入った、筈だった 元彼女の友だちによる妨害。 思わぬ出来事に暗雲が立ち込めるけれど、 互いに恋焦がれる気持ちは高まるばかり。 手を取り合って、どんな障害も乗り越えてみせる。 元彼女の友だちから受ける嫌がらせ、 親友との大喧嘩、 家族との繋がり、 そして、恋。 悠里と剛士の秒針は、ドキドキと思いを刻み続けます。

勘違い令嬢の心の声

にのまえ
恋愛
僕の婚約者 シンシアの心の声が聞こえた。 シア、それは君の勘違いだ。

#秒恋8 隔てられる2人〜友情か、恋か。仲間か、恋か〜

ReN
恋愛
剛士のことを好きだったカンナの逆恨みにより、ズタズタに傷つけられた悠里。 彼女の心の傷を癒すために、それぞれが自分にできることを模索する。 しかし、隔てられた悠里と剛士の距離は、縮まるどころか更に引き離されていく―― 友達か、恋か。 仲間か、恋か。 悠里と剛士は、大切な人の板挟みになり、苦しんでいく。 2人の恋は、このまま隔てられ、消えていく運命なのか。 それとももう一度、恋の糸を手繰り寄せることができるのか――

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

処理中です...