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piece3 明確な悪意
スープとおにぎり
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いつの間にか、寝入ってしまっていた。
時計は22時を指している。
小さく鳴ったお腹の音を聞き、悠里は苦笑した。
こんな気持ちを抱えていても、お腹は空くものだ。
鏡で顔を確認すると、瞼が少し腫れぼったい。
明日のために、冷やしておこう。
そのついでに、何か夜食でも作ろう。
悠里は部屋を出て、1階のリビングダイニングに降りて行った。
良い匂いがする。
悠里はそっと、リビングのドアを開けた。
「悠里! もう起きて大丈夫なの?」
キッチンには母がいて、彼女を見ると大きな目を丸くした。
「お母さん!お帰りなさい」
「ただいま。お腹、少しは良くなった?」
気遣わしげに、悠里の顔を見つめる。
「帰ってから一度、部屋を覗いたんだけどね。よく眠ってるようだったから、声は掛けなかったの」
「う、うん……ごめんね」
嘘をついてしまった胸が、チリチリと痛んだ。
悠里は俯いて、小さな声で謝る。
母は優しく微笑んだ。
「何言ってるの。いつも本当にありがとう。無理しないでね」
「うん……」
しょんぼりとしている娘を見て、母は明るい声で尋ねる。
「お腹、空いてない?いまちょうど、悠里に夜食作ってたところ 」
母の笑顔に誘われるように、悠里は、パッと顔を輝かせた。
「うん!食べたい」
「よし、座ってなさい。すぐできるから」
母は、にっこりと微笑み、夜食作りを再開した。
たくさんの野菜を柔らかく煮込んだスープと、彩りの良い小さなおにぎり。
食欲をそそる匂いと湯気を立てて、コトン、と悠里の前に置かれる。
「美味しそう!」
悠里は嬉しそうに顔をほころばせる。
「ふふ、いっぱい召し上がれ!」
母は、にっこり笑うと、悠里の前の席に腰掛けた。
母の作るご飯は、身体だけではなく、悠里の心も温めてくれた。
スープを飲み干し、悠里はニコニコ笑う。
「美味しい!」
「おかわりする?」
「する!」
母がスープのおかわりをよそってくれる間に、悠里はおにぎりを頬張る。
枝豆と炒り卵、そしてシャケが混ぜられた、彩り豊かなおにぎり。
遠足の日も運動会の日も。
事あるごとに、作って作って、と、せがんでいた。
悠里の子どもの頃からの大好物。
「……ふふ」
まさか今夜、食べられるとは思わなかった。
スープを入れた器を悠里に差し出し、母は優しく笑った。
「……悠里。今日は、何かあった?」
悠里は母の顔を見つめる。
悠里の悲しい気持ちを見透かし、手を差し伸べてくれる、優しい母の瞳。
仮病を使って誤魔化しても、母にはお見通し。
少し恥ずかしく、けれど、ホッとする自分もいた。
「……うん。学校で、ちょっと」
悠里は素直に頷いた。
それから母に向かって、にっこり笑って見せる。
「でも、お母さんのごはん食べたら、元気出たよ」
「本当? 良かった」
母と娘は、よく似たお互いの顔を見合わせ、笑った。
「大丈夫?」
「うん!」
笑顔の悠里を、母は優しい眼差しで見つめる。
「無理はしちゃダメよ?」
「ふふ、うん。気をつける」
悠里はもう一度、にっこりと大きく微笑んだ。
時計は22時を指している。
小さく鳴ったお腹の音を聞き、悠里は苦笑した。
こんな気持ちを抱えていても、お腹は空くものだ。
鏡で顔を確認すると、瞼が少し腫れぼったい。
明日のために、冷やしておこう。
そのついでに、何か夜食でも作ろう。
悠里は部屋を出て、1階のリビングダイニングに降りて行った。
良い匂いがする。
悠里はそっと、リビングのドアを開けた。
「悠里! もう起きて大丈夫なの?」
キッチンには母がいて、彼女を見ると大きな目を丸くした。
「お母さん!お帰りなさい」
「ただいま。お腹、少しは良くなった?」
気遣わしげに、悠里の顔を見つめる。
「帰ってから一度、部屋を覗いたんだけどね。よく眠ってるようだったから、声は掛けなかったの」
「う、うん……ごめんね」
嘘をついてしまった胸が、チリチリと痛んだ。
悠里は俯いて、小さな声で謝る。
母は優しく微笑んだ。
「何言ってるの。いつも本当にありがとう。無理しないでね」
「うん……」
しょんぼりとしている娘を見て、母は明るい声で尋ねる。
「お腹、空いてない?いまちょうど、悠里に夜食作ってたところ 」
母の笑顔に誘われるように、悠里は、パッと顔を輝かせた。
「うん!食べたい」
「よし、座ってなさい。すぐできるから」
母は、にっこりと微笑み、夜食作りを再開した。
たくさんの野菜を柔らかく煮込んだスープと、彩りの良い小さなおにぎり。
食欲をそそる匂いと湯気を立てて、コトン、と悠里の前に置かれる。
「美味しそう!」
悠里は嬉しそうに顔をほころばせる。
「ふふ、いっぱい召し上がれ!」
母は、にっこり笑うと、悠里の前の席に腰掛けた。
母の作るご飯は、身体だけではなく、悠里の心も温めてくれた。
スープを飲み干し、悠里はニコニコ笑う。
「美味しい!」
「おかわりする?」
「する!」
母がスープのおかわりをよそってくれる間に、悠里はおにぎりを頬張る。
枝豆と炒り卵、そしてシャケが混ぜられた、彩り豊かなおにぎり。
遠足の日も運動会の日も。
事あるごとに、作って作って、と、せがんでいた。
悠里の子どもの頃からの大好物。
「……ふふ」
まさか今夜、食べられるとは思わなかった。
スープを入れた器を悠里に差し出し、母は優しく笑った。
「……悠里。今日は、何かあった?」
悠里は母の顔を見つめる。
悠里の悲しい気持ちを見透かし、手を差し伸べてくれる、優しい母の瞳。
仮病を使って誤魔化しても、母にはお見通し。
少し恥ずかしく、けれど、ホッとする自分もいた。
「……うん。学校で、ちょっと」
悠里は素直に頷いた。
それから母に向かって、にっこり笑って見せる。
「でも、お母さんのごはん食べたら、元気出たよ」
「本当? 良かった」
母と娘は、よく似たお互いの顔を見合わせ、笑った。
「大丈夫?」
「うん!」
笑顔の悠里を、母は優しい眼差しで見つめる。
「無理はしちゃダメよ?」
「ふふ、うん。気をつける」
悠里はもう一度、にっこりと大きく微笑んだ。
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