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piece2 歪んだ友情

大切にしたいのは

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「……悠里。アンタは優しい。それは、アンタのいいところ」
言葉を失くし、俯いた悠里を諭すように、彩奈がゆっくりと語りかける。

「でも、さすがに今回は、お人好しが過ぎる」
赤メガネの奥の強い目が、悠里を真っ直ぐに見つめた。

「アンタが大切にしたいのは誰? 守らなきゃいけないのは誰? シバさんだよね」


声を出したら涙まで零してしまいそうで、悠里はグッと唇を噛んだ。
彩奈は溜め息をついて、言った。

「アンタ、元カノと会いました、仲良くお喋りしましたって、シバさんに堂々と言える?」
悠里は小さく首を横に振る。
「なら、やっちゃダメなことって、わかるよね?」
悠里は、今度は首を縦に振った。


「……わかるよ。いざ目の前で、いびられてたら、助けたくなるわな」
クシャクシャと、彩奈の手が悠里の髪を撫でる。

彩奈の声からは、もう怒りの炎は消えていた。
「でも、今回はダメだ。シバさんとの恋愛と、元カノを助けるのは、両立できない」
悠里の胸に刻みつけるように、彩奈は言った。

その目は、深い憂いをたたえている。
「もう、元カノに関わっちゃダメ。でないと、余計なトラブルを抱え込むかも知れないよ?」

その声音からは、彩奈がいかに悠里を心配して怒ってくれているかが、伝わってきた。


悠里は涙を堪え、しっかりと頷く。
「うん。彩奈の言う通りだ。ごめん」

「……いや。私こそ、ごめん。強く言い過ぎた」
彩奈が心配そうに顔を覗き込んでくる。


泣いてはいけない。
彩奈が心を鬼にして、自分を思って、言ってくれたのだから。

悠里は首を横に振って、無理やりに微笑んでみせた。
「ううん……彩奈、ありがとう」

そっと、悠里は彼女に手を伸ばした。
「これからも、私が間違ったことしてたら、叱ってね」
「悠里……」

彩奈が、しっかりと悠里の手を両手で包み込む。
悠里以上に彩奈が、ホッとした顔をしているように見えた。

「……任せなさい! でも、怒った後はその倍、ちゃんと悠里を可愛がるからね」
「ふふっ」

ぶんぶんと繋いだ手を振って、2人はようやく笑顔に戻った。


けれど、もう火種は、蒔かれてしまった後だった。
「余計なトラブル」は、悠里を狙って芽吹き、葉を、茎を着実に伸ばし始めていた――
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