11 / 94
piece2 歪んだ友情
大切にしたいのは
しおりを挟む
「……悠里。アンタは優しい。それは、アンタのいいところ」
言葉を失くし、俯いた悠里を諭すように、彩奈がゆっくりと語りかける。
「でも、さすがに今回は、お人好しが過ぎる」
赤メガネの奥の強い目が、悠里を真っ直ぐに見つめた。
「アンタが大切にしたいのは誰? 守らなきゃいけないのは誰? シバさんだよね」
声を出したら涙まで零してしまいそうで、悠里はグッと唇を噛んだ。
彩奈は溜め息をついて、言った。
「アンタ、元カノと会いました、仲良くお喋りしましたって、シバさんに堂々と言える?」
悠里は小さく首を横に振る。
「なら、やっちゃダメなことって、わかるよね?」
悠里は、今度は首を縦に振った。
「……わかるよ。いざ目の前で、いびられてたら、助けたくなるわな」
クシャクシャと、彩奈の手が悠里の髪を撫でる。
彩奈の声からは、もう怒りの炎は消えていた。
「でも、今回はダメだ。シバさんとの恋愛と、元カノを助けるのは、両立できない」
悠里の胸に刻みつけるように、彩奈は言った。
その目は、深い憂いをたたえている。
「もう、元カノに関わっちゃダメ。でないと、余計なトラブルを抱え込むかも知れないよ?」
その声音からは、彩奈がいかに悠里を心配して怒ってくれているかが、伝わってきた。
悠里は涙を堪え、しっかりと頷く。
「うん。彩奈の言う通りだ。ごめん」
「……いや。私こそ、ごめん。強く言い過ぎた」
彩奈が心配そうに顔を覗き込んでくる。
泣いてはいけない。
彩奈が心を鬼にして、自分を思って、言ってくれたのだから。
悠里は首を横に振って、無理やりに微笑んでみせた。
「ううん……彩奈、ありがとう」
そっと、悠里は彼女に手を伸ばした。
「これからも、私が間違ったことしてたら、叱ってね」
「悠里……」
彩奈が、しっかりと悠里の手を両手で包み込む。
悠里以上に彩奈が、ホッとした顔をしているように見えた。
「……任せなさい! でも、怒った後はその倍、ちゃんと悠里を可愛がるからね」
「ふふっ」
ぶんぶんと繋いだ手を振って、2人はようやく笑顔に戻った。
けれど、もう火種は、蒔かれてしまった後だった。
「余計なトラブル」は、悠里を狙って芽吹き、葉を、茎を着実に伸ばし始めていた――
言葉を失くし、俯いた悠里を諭すように、彩奈がゆっくりと語りかける。
「でも、さすがに今回は、お人好しが過ぎる」
赤メガネの奥の強い目が、悠里を真っ直ぐに見つめた。
「アンタが大切にしたいのは誰? 守らなきゃいけないのは誰? シバさんだよね」
声を出したら涙まで零してしまいそうで、悠里はグッと唇を噛んだ。
彩奈は溜め息をついて、言った。
「アンタ、元カノと会いました、仲良くお喋りしましたって、シバさんに堂々と言える?」
悠里は小さく首を横に振る。
「なら、やっちゃダメなことって、わかるよね?」
悠里は、今度は首を縦に振った。
「……わかるよ。いざ目の前で、いびられてたら、助けたくなるわな」
クシャクシャと、彩奈の手が悠里の髪を撫でる。
彩奈の声からは、もう怒りの炎は消えていた。
「でも、今回はダメだ。シバさんとの恋愛と、元カノを助けるのは、両立できない」
悠里の胸に刻みつけるように、彩奈は言った。
その目は、深い憂いをたたえている。
「もう、元カノに関わっちゃダメ。でないと、余計なトラブルを抱え込むかも知れないよ?」
その声音からは、彩奈がいかに悠里を心配して怒ってくれているかが、伝わってきた。
悠里は涙を堪え、しっかりと頷く。
「うん。彩奈の言う通りだ。ごめん」
「……いや。私こそ、ごめん。強く言い過ぎた」
彩奈が心配そうに顔を覗き込んでくる。
泣いてはいけない。
彩奈が心を鬼にして、自分を思って、言ってくれたのだから。
悠里は首を横に振って、無理やりに微笑んでみせた。
「ううん……彩奈、ありがとう」
そっと、悠里は彼女に手を伸ばした。
「これからも、私が間違ったことしてたら、叱ってね」
「悠里……」
彩奈が、しっかりと悠里の手を両手で包み込む。
悠里以上に彩奈が、ホッとした顔をしているように見えた。
「……任せなさい! でも、怒った後はその倍、ちゃんと悠里を可愛がるからね」
「ふふっ」
ぶんぶんと繋いだ手を振って、2人はようやく笑顔に戻った。
けれど、もう火種は、蒔かれてしまった後だった。
「余計なトラブル」は、悠里を狙って芽吹き、葉を、茎を着実に伸ばし始めていた――
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
ずぶ濡れで帰ったら彼氏が浮気してました
宵闇 月
恋愛
突然の雨にずぶ濡れになって帰ったら彼氏が知らない女の子とお風呂に入ってました。
ーーそれではお幸せに。
以前書いていたお話です。
投稿するか悩んでそのままにしていたお話ですが、折角書いたのでやはり投稿しようかと…
十話完結で既に書き終えてます。
夫が私に魅了魔法をかけていたらしい
綺咲 潔
恋愛
公爵令嬢のエリーゼと公爵のラディリアスは2年前に結婚して以降、まるで絵に描いたように幸せな結婚生活を送っている。
そのはずなのだが……最近、何だかラディリアスの様子がおかしい。
気になったエリーゼがその原因を探ってみると、そこには女の影が――?
そんな折、エリーゼはラディリアスに呼び出され、思いもよらぬ告白をされる。
「君が僕を好いてくれているのは、魅了魔法の効果だ。つまり……本当の君は僕のことを好きじゃない」
私が夫を愛するこの気持ちは偽り?
それとも……。
*全17話で完結予定。
【完結】愛も信頼も壊れて消えた
miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」
王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。
無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。
だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。
婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。
私は彼の事が好きだった。
優しい人だと思っていた。
だけど───。
彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。
※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。
〖完結〗旦那様には出て行っていただきます。どうか平民の愛人とお幸せに·····
藍川みいな
恋愛
「セリアさん、単刀直入に言いますね。ルーカス様と別れてください。」
……これは一体、どういう事でしょう?
いきなり現れたルーカスの愛人に、別れて欲しいと言われたセリア。
ルーカスはセリアと結婚し、スペクター侯爵家に婿入りしたが、セリアとの結婚前から愛人がいて、その愛人と侯爵家を乗っ取るつもりだと愛人は話した……
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
全6話で完結になります。
逃した番は他国に嫁ぐ
基本二度寝
恋愛
「番が現れたら、婚約を解消してほしい」
婚約者との茶会。
和やかな会話が落ち着いた所で、改まって座を正した王太子ヴェロージオは婚約者の公爵令嬢グリシアにそう願った。
獣人の血が交じるこの国で、番というものの存在の大きさは誰しも理解している。
だから、グリシアも頷いた。
「はい。わかりました。お互いどちらかが番と出会えたら円満に婚約解消をしましょう!」
グリシアに答えに満足したはずなのだが、ヴェロージオの心に沸き上がる感情。
こちらの希望を受け入れられたはずのに…、何故か、もやっとした気持ちになった。
【完結】お飾りではなかった王妃の実力
鏑木 うりこ
恋愛
王妃アイリーンは国王エルファードに離婚を告げられる。
「お前のような醜い女はいらん!今すぐに出て行け!」
しかしアイリーンは追い出していい人物ではなかった。アイリーンが去った国と迎え入れた国の明暗。
完結致しました(2022/06/28完結表記)
GWだから見切り発車した作品ですが、完結まで辿り着きました。
★お礼★
たくさんのご感想、お気に入り登録、しおり等ありがとうございます!
中々、感想にお返事を書くことが出来なくてとても心苦しく思っています(;´Д`)全部読ませていただいており、とても嬉しいです!!内容に反映したりしなかったりあると思います。ありがとうございます~!
【完結】今夜さよならをします
たろ
恋愛
愛していた。でも愛されることはなかった。
あなたが好きなのは、守るのはリーリエ様。
だったら婚約解消いたしましょう。
シエルに頬を叩かれた時、わたしの恋心は消えた。
よくある婚約解消の話です。
そして新しい恋を見つける話。
なんだけど……あなたには最後しっかりとざまあくらわせてやります!!
★すみません。
長編へと変更させていただきます。
書いているとつい面白くて……長くなってしまいました。
いつも読んでいただきありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる