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piece6 密室の恐怖
終了の音
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そのとき、時間終了を告げるインターホンが鳴り響いた。
カンナ以外の全員が、この息苦しい空間から解放されるとホッとする。
勇誠学園の1人が立ち上がり、受話器を上げながら言った。
「あ、時間っすね! 今日はもう、帰りましょ。ね!」
そうしてカンナの返事を待たずに、インターホンに向かい、終了を告げた。
「……あー。オレたち、帰りますわ」
来たばかりの4人が、白けた顔をして立ち上がる。
「ちょ、ちょっとアンタたち、待ちなさいよ」
「……カンナ先輩さあ。わざわざ呼び出すんなら、きっちり準備しといてくださいよ」
慌てて静止の声を上げたカンナに向かい、彼らは面倒臭そうに答えた。
「女の子は嫌がってるし。他のオトコもいるし……つまんねーわ」
「そーだよ。マリ女の可愛いコを紹介するってのが、センパイの役目なんだからさあ。しっかりやれよ」
男子生徒たちの苛立ちを一身に浴び、カンナは口をつぐんだ。
ガチャリと乱暴にドアを開け、4人は出て行く。
「はあ。マジ時間のムダだったわ」
「オレらを嫌がらせの道具に使うなっつの。意味わかんねぇし」
「何様だよ、うぜえ」
カンナの方は向かず、カンナへの不満を口々に呟きながら。
そうしてドアを閉める間際に、適当な挨拶をカンナに放り投げた。
「あー、まあまた、可愛いコいたらよろしくお願いしますよー」
「次はもっと、ノリのいい子にしてね。泣かれるとか、マジ萎える」
カチャン、と乾いた音を立てて、ドアが閉まった。
カンナが舌打ちして、悠里を睨みつける。
「……アンタがメソメソするから、アイツらが怒ったんじゃん。謝れよ」
「い、いやいやいや。そうじゃないでしょ?」
堪りかねたのか、勇誠学園の1人が、悠里を庇うように前に出た。
「こんな……いきなり初対面の男に囲まれて、触られたり写真撮られたりしたら、そりゃ怖いですって」
「はあ? ちょっと肩や髪に触ってただけでしょ。何が怖いのよ。ただのスキンシップじゃん。大袈裟なのよコイツが」
カンナが悠里を指し、忌々しげに呟いた。
その指を勇誠の2人に滑らせ、続ける。
「アンタらだって、学祭のコイツの写真見て、騒いでたくせに。紹介してやるって言ったら、ノコノコついて来たくせに。偉そうに説教垂れてんじゃねえよ」
勇誠の1人は憮然とした表情になり、口をつぐんだ。
「……まあまあ。もうやめましょ、カンナ先輩も。ね?」
もう1人の生徒は、どうにか穏便に済ませようということなのか、苦笑いでカンナと自分の友人を宥める。
それまで沈黙していた共学校の2人が、顔を見合わせて財布を出した。
「……あー。じゃあオレたちも、帰りますね」
「はい、お金」
面倒ごとから早く抜け出したいという気持ちが、透けて見えた。
投げるようにして、テーブルに料金を置くと、そそくさと出て行く。
悠里の横を通り過ぎるとき、1人の生徒が、ぼそりと呟いた。
「……ゴメンね」
カンナ以外の全員が、この息苦しい空間から解放されるとホッとする。
勇誠学園の1人が立ち上がり、受話器を上げながら言った。
「あ、時間っすね! 今日はもう、帰りましょ。ね!」
そうしてカンナの返事を待たずに、インターホンに向かい、終了を告げた。
「……あー。オレたち、帰りますわ」
来たばかりの4人が、白けた顔をして立ち上がる。
「ちょ、ちょっとアンタたち、待ちなさいよ」
「……カンナ先輩さあ。わざわざ呼び出すんなら、きっちり準備しといてくださいよ」
慌てて静止の声を上げたカンナに向かい、彼らは面倒臭そうに答えた。
「女の子は嫌がってるし。他のオトコもいるし……つまんねーわ」
「そーだよ。マリ女の可愛いコを紹介するってのが、センパイの役目なんだからさあ。しっかりやれよ」
男子生徒たちの苛立ちを一身に浴び、カンナは口をつぐんだ。
ガチャリと乱暴にドアを開け、4人は出て行く。
「はあ。マジ時間のムダだったわ」
「オレらを嫌がらせの道具に使うなっつの。意味わかんねぇし」
「何様だよ、うぜえ」
カンナの方は向かず、カンナへの不満を口々に呟きながら。
そうしてドアを閉める間際に、適当な挨拶をカンナに放り投げた。
「あー、まあまた、可愛いコいたらよろしくお願いしますよー」
「次はもっと、ノリのいい子にしてね。泣かれるとか、マジ萎える」
カチャン、と乾いた音を立てて、ドアが閉まった。
カンナが舌打ちして、悠里を睨みつける。
「……アンタがメソメソするから、アイツらが怒ったんじゃん。謝れよ」
「い、いやいやいや。そうじゃないでしょ?」
堪りかねたのか、勇誠学園の1人が、悠里を庇うように前に出た。
「こんな……いきなり初対面の男に囲まれて、触られたり写真撮られたりしたら、そりゃ怖いですって」
「はあ? ちょっと肩や髪に触ってただけでしょ。何が怖いのよ。ただのスキンシップじゃん。大袈裟なのよコイツが」
カンナが悠里を指し、忌々しげに呟いた。
その指を勇誠の2人に滑らせ、続ける。
「アンタらだって、学祭のコイツの写真見て、騒いでたくせに。紹介してやるって言ったら、ノコノコついて来たくせに。偉そうに説教垂れてんじゃねえよ」
勇誠の1人は憮然とした表情になり、口をつぐんだ。
「……まあまあ。もうやめましょ、カンナ先輩も。ね?」
もう1人の生徒は、どうにか穏便に済ませようということなのか、苦笑いでカンナと自分の友人を宥める。
それまで沈黙していた共学校の2人が、顔を見合わせて財布を出した。
「……あー。じゃあオレたちも、帰りますね」
「はい、お金」
面倒ごとから早く抜け出したいという気持ちが、透けて見えた。
投げるようにして、テーブルに料金を置くと、そそくさと出て行く。
悠里の横を通り過ぎるとき、1人の生徒が、ぼそりと呟いた。
「……ゴメンね」
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