#秒恋4 恋の試練は元カノじゃなくて、元カノの親友だった件。

ReN

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piece5 悠里の戦い

踏み躙られる思い出

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投げつけられる言葉ひとつひとつが、思いもよらぬことばかり。

眩暈がする。
こんなに、悪く受け取られるようなことを、自分はしただろうか。
自分はただ、クラスのみんなで取り組んだ喫茶店のために、がんばっただけなのに…… 

悠里は思わず、涙ぐんだ。

「はは、図星ぃ?」
悠里の瞳が潤んだのを認め、カンナが馬鹿にしたように指をさす。
「学祭で、派手な袴着て悪目立ちするとか。マジでやること最低だよね、ビッチの悠里ちゃん」

悠里は、グッと唇を噛む。


学祭の楽しかった思い出が、彼女の胸の中を駆け巡った。

大正浪漫風の喫茶店をやろうと、クラスで話し合った出し物。
料理部のメンバーが作ってくれた和スイーツ。
茶道部員が点ててくれたお茶。
コーヒーもあったらいいよね、と、わざわざ家からコーヒーメーカーを持参してくれたクラスメイト。

そして受付の悠里たちや、ウェイトレス担当の皆が纏った袴。
それは、呉服屋を営むクラスメイトの祖母の全面協力により実現した装いだった。

華やかで愛らしい着物と袴の一式を貸し出してくれ、更には当日の着付けをしてくれた。
着付けをされたときに感じた、凛とした佇まい。
大切に、大切に着なければ、と背筋の伸びる思いがした。


『まあ、皆さん、なんて可愛らしいの』
皆の着付けが終わった後、嬉しそうに微笑んでくれたクラスメイトの祖母と、呉服屋の店員の優しさ。

当日、喫茶店に来てくれたお客さんや、遊びに来てくれた先生、みんなが喜んでくれた。
自分も受付として精一杯、呼び込みもしたし、笑顔で振る舞った。

みんなのがんばりや、協力してくれた人たちのおかげで、大正浪漫風喫茶店は、学祭で表彰もされた。

とても楽しく、大切な思い出だった。


それをどうしてカンナに、ここまで侮辱されなければならないのだろう。
自分だけではない、クラスの皆のことまで馬鹿にされた気がした。
努力や思い出を、踏み躙られた気がした。


悠里は顔を上げ、真っ直ぐにカンナを見つめる。
「私は、クラスの催し物を成功させるために、自分にできることをがんばっただけです」

カンナの挑発には乗らない。
争うだけ無駄な相手だ。
同じ舞台に立つことはしたくない。


――強くならなくちゃ。
この人の言うことに、反応を見せちゃ駄目。

悠里は無理やりに微笑みを浮かべ、会釈してみせた。
「失礼します」
相手にしないのが一番だと、悠里は踵を返そうとする。


「……待ちなよ」
強い力で腕を掴まれた。
悠里の腕を捻るようにして、カンナは無理やり自分に引き寄せる。

痛みに顔をしかめ、悠里はカンナを見上げる。
カンナの涼やかな瞳が、苛立ちに染まっていた。
「話は終わってないんだよ。クソビッチが」

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